5.魔王の配下に襲われた村
「どうやら魔物に占拠され、逃げ遅れた人間たちは奴隷として働かされているみたいです」
少し離れたところから、明らかにやばそうな村を千里眼で覗いた女神。
「倒しに行きましょうか」
「世界征服したいんじゃないんですか? もう堕とされている村なら放っておけばいいんじゃ」
「イケメンがいるかもしれないでしょ!」
「外野は黙っていてもらえます?」
「いい? 私は世界を滅ぼしたいのです。そしてこの私が上に立ちます。つまり、魔王軍も人間もなんだって関係ないのです。弱っているなら好都合。抹殺します」
魔王顔負けの悪役ですが、勇者様は止めてくださりますか。
「イケメンだけは見逃してちょうだい。ハーレム作るから」
馬鹿なのか。馬鹿なのだろう。
止める言葉を最後まで聞くことなく、一応善属性を持つ二人は、その勇者と女神というステータスを最大限に活かしつつ、チートのごとく魔王の配下や魔物を殲滅した。本当私っていらないな。この短期間にどれだけ存在意義を問うたことか。
「さぁ、しーちゃんの出番ですよ」
「殲滅したじゃん。私の出番あります?」
「人間が残っているでしょう」
そしてイケメンを探して勇者は一時的に姿を消した。
「その筋肉いいですね。どうか、この馬小屋であたしを」「うわぁぁぁああ!!!」
なんて会話聞こえてたりしないから。
「人間をどうしろって?」
「私たちが魔物を倒したように、救われたとか喜んでいる人間たちを倒してきてください」
魔物の返り血を浴びた女神って、ただの邪神ではないか。
「力が足りないようなら、私の血をもう少し飲んでいただいても」
「それはいらない」
……どうにかして生き残った人たちは、年齢・性別問わずに抱き合って喜んでいる。
「人間だって、魔物ってだけで相手を殺してきたんですよ? 人間だって、盗みもするし殺しもしますよ」
一理ある。私はあの小さな世界から、この世界に出て大した時間は過ごしていないが、毎度勇者は家を荒らすし、今パーティーにいるオネエ勇者はイケメンの尻を追いかけているだけだし……。人間が信仰するはずの女神は、世界を滅ぼそうとしている。
もしかして、もしかしなくても、この世は結構クズばかりなのでは。
「よし、片づけよう」
そうして私のスキルには、暗殺が加わり、国の南側の地域では魔王軍以上にやばい輩が沸いていると噂が流れた。
……村人CでしかないNPCは、未だに魔法攻撃をも使えず、剣を振り回すだけだが。
「いっぱいやりましたね。次は弱っていない人間も多いかもしれませんから、ちゃんとレベルアップをして、作戦を立てていきましょう」
「全然イケメンいなかったんですけどぉ。でも次は王国軍の駐在所があるのよね? 騎士様ならイケメンいるわよね!」
次で私たちはお縄になるのかもしれない。
その時は、二人の肩書を利用させてもらおう。
村人C、闇落ちした女神とオネエ勇者と世界を滅ぼすことになりました 汐 ユウ @u_ushio
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