4.ステータス低いんです
「あたしは勇者だから特典もあるし、女神だっていろいろできるんでしょ?」
「えぇ、もちろん。ただし、私たちは善属性ですので、悪意のない人間には弱いのです」
「つまりこの子を鍛えろと」
猫を掴むように襟を持ち上げられ、華麗に宙に浮く。
「しーちゃんさん、頑張ってね」
おじさんにほっぺキスされても嬉しくないし、いきなりモンスターの中に放り込まれても、というかゴブリンだし! 私の貞操がなくなる危機!
「おーやってるやってる」
「元人間の女の子だというのに可哀想に」
「話聞いたけど、スイレンが仕組んだんでしょ」
「可愛くて手放したくなかったものですから」
「その可愛い子、目血走らせてゴブリンぶった切っているし。うわぁ、あそこまでえげつないことは同人誌でも規制されちゃうわね」
あの二人に対するストレスをぶつけていたら、いつの間にかレベルがアップしていた。
「よかったわー。しーちゃんさんが敵に回っていたらと思うと、想像しただけで失禁しそう」
「女神もトイレいくんですか」
「秘密♪」
「……今更なんですが、勇者様は女性でいいんですよね?」
どんな化粧を施しても性別を隠せなさそうながたい。
「そうよ。立派なじぇーけーだから」
緊急時代に推しのことしか考えていないもんな、立派すぎてはっ倒したい。
「通常の攻略だと、次の町に行ってからゴブリン退治のクエストが追加されるんですけど、今完了してしまいましたね」
つまらなそうに消えていくゴブリンの残骸を女神がつつくと、一瞬でゴブリンが消し飛んだ。私いらなかったのでは? こいつ魔王さえ倒せるんじゃないの?
「うーん。ゴブリン×美少女って今までスルーしていたけど、好きになる人の気持ち分かるかも」
分かんねぇよ! 人が死ぬ気で戦っていたのに、どんな妄想してんだよ、この腐女子。
「ゴブリン×勇者様でいいじゃないですか。どうぞ楽しんできてください」
「イケメンにはイケメンじゃないとダメに決まっているでしょ?」
私が頭おかしいこと言ったみたいな空気出すのやめてもらえます?
「しーちゃん、そろそろ」
おもむろにゴブリンを抹消し終えた女神が、手組の裏が見えるように腕を差し出してきた。
「なんでしょう。リストカットのご所望でしょうか」
「違います! トマトジュースのお時間ですよ」
「いらない」
「どうしてですか? 死にますよ」
このバグが起きている世界で死ぬとどうなるのか。
「しーちゃんに死なれると困るんですよ。ほら」
私のミスリルソードで手首を切る。
「リストカットじゃん!」
仕方なく手首に口をつけると、専門は男×男と宣言していた勇者が背後で興奮して早口になる。
「これは血で繋がる一蓮托生の関係で、まるで某漫画で出てきた関係。女神様のことを嫌と言いつつも、その血を飲まなければ生き残れないなんて……。はぁぁ、あたしも魔王様の眷属になって「血が欲しいのか? 跪け」とか言われて、踏まれながら、」
「ご馳走様です。次、行きましょう」
体力も回復するし、一時的にステータスも上昇するからとても便利なのだが、やはりトマトジュースの味はしない。当面の目標は、この女神を利用しつつ、勇者は顔パス要素とし、なんとか生き残って呪われた血を解呪しよう。
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