第08話:初心者講習(座学)

 リーフィンドに入って3日目からは、冒険者ギルドでの講習を受ける予定だ。ギルドから紹介を受けて特価で泊まらせてもらっている青葉館Leafs Innで嘲笑を済ませた僕達は、宿と隣接している冒険者ギルドに向かう。


「いらっしゃいませ。ギルド講習会への参加ですよね?」

 僕達が冒険者ギルドに入るとすぐに、僕とルーミィを覚えてくれていた受付嬢のアイリスさんが声をかけてくれる


「はい。今日から宜しくお願いします」

「はい、こちらこそ宜しくお願いしますね。冒険者ギルドの内容説明は私が行いますので」

 ニッコリと笑顔を浮かべるアイリスさんに、僕が少し赤面して目をそらすと、僕の手を握っていたルーミィの手の力が強くなる。


「それでは講習会に参加されるミスティさんとルーミィさんは奥の小部屋に入っていてください」

 僕達はアイリスさんの案内通りに小部屋の前に行くと、扉の前にぶら下がっていた黒板に『ギルド講習会座学』と書いてあったので、僕達はそのまま中に入っていく。

 どうやら自分たちが一番乗りだったようで、部屋には誰も居ない。2名が並んで座れる机が2列3組と教壇がある小さな部屋だった。

 僕達は奥の列の前から2番目の席に二人で座る。


「楽しみだね。ミスティおにーちゃん!」

 いつものようにニコニコしながらルーミィが上目使いに、僕を見てくる。まぁ僕のほうが背が高いので、いつも上目使いになるんだけどね。


 僕は誰に嘲られるわけでも、妨害を受けるでもない生活に安堵しながらも、これからどうやって生きていこうかと悩んでいる。今日からの講習が、その未来を掴むための、何かの切っ掛けになれば嬉しい。

 それにルーミィを危険な目に合わせたくないし、ひもじい思いもさせたくない。聞くところによると冒険者とは依頼をこなして報酬を受ける何でも屋みたいなものらしいから、ちょっと危険な森の中での採取など僕達にあった仕事で、誰かの役に立ちながら、自分たちの生計を立てていきたいと考えている。


「おー!ここかー!」

「ちょ、ちょっとライ!待ちなさい」

「ライ、待ってよー」

 騒々しく3人の男女が講習室に入ってくる。見た所、僕とルーミィの間の年頃のようだ。


「お、誰かいるぜ。こんちは!俺はライ、猟犬族だ!」

 意思の強そうな目と、垂れた耳、鋭い犬歯をもち、白をベースに黄色い毛並みが特徴の男の子が、僕達を見つけるなり明るく自己紹介してくる。


「あんたってば、ホント考えなしよね。騒々しくてごめんなさい。私も猟犬族でチェリーって言います。一緒にギルド講習を受けると思うので、宜しくお願いします」

 白をベースにしてさくらんぼのような赤い毛並みをした女の子が丁寧に挨拶する。


「ぼ、僕はデデン。ドワーフです」

 最後に講習室に入ってきた、背が低くてずんぐりむっくりした男の子も続けて自己紹介する。


「あぁ、自己紹介ありがとう。僕は森の氏族ドルイドのエルフでミスティって言います」

「私も同じく森の氏族ドルイドのエルフでルーミィです。宜しくお願いします」

 僕達も釣られて自己紹介する。


「ミスティにルーミィか!よろしくな!ってかミスティ、強そうだな!後で俺と勝負だっ!」

「えぇ?ま、まぁ機会があったらね」

 僕をビシっと指差しながら宣言するライ。中々元気で勝ち気な男の子だ。


「おーし、そろったなー。みんな席につけー」

 のんびりした感じでギルド長であるランドさんが入ってくる。慌ててライ達も、手前の列に座る。


「今回は3組6人か、中々集まったな」

 ランドさんが部屋を見渡しながら言う。あれ?僕達2人とライ達3人の2組5人じゃ?と思って、後ろを振り替えると、僕達の席の一番うしろに、水色の髪をした女性エルフが、気だるそうな目をしながら座っていた。


「え?いつの間に?」

「そこのー、犬君が自己紹介している時にー、こっそりー」

 僕が吃驚して思わず口走った言葉に反応して、妙に間延びした声で返してくれる。面倒くさそうな眼差しと口調の割に、律儀な対応だ。


「エリー、ちゃんと来たか」

「ん。ニート満喫してたけどー、仕方ないから来てあげたー、ぶい」

 エリーと呼ばれた女性が、人差し指と中指の2本を立てながら、誇らしげにランドさんに見せつける。


「威張ることじゃぁないんだがな……」

 ランドさんはそんなエリーさんに溜息をつきながら頭をボリボリ掻くが、すぐに気を取り直して説明を始める。


「あー、知っているとは思うが、俺がリーフィンド冒険者ギルドのギルドマスターのランドだ。土の氏族ノーグの戦士で冒険者をやってた。よろしく頼む」

 ランドさんが教壇に立って自己紹介をする。


「土の氏族?」

「おっと、知らないやつもいたか。丘陵地帯に好んで住む、土弄りが好きな氏族でな。大柄で頑丈な身体と、比較的器用な手先が特徴で、農夫や鉱夫になる奴らが多い氏族だ。大体温厚な奴が多いんだが、俺はちょっと周りと違って荒くれ者でなぁ、村から追い出されて町に出て冒険者になったって訳だ。それで仲間と日銭を稼いでいる内に、そこそこのランクに至ったことが評価されて、こうして冒険者ギルドのギルドマスターをやらせてもらうことになったのさ」

 僕が無知で聞いてしまったのを、迷惑にも思わずに答えてくれるランドさん。大柄で筋骨隆々っぽかったのは、生まれのせいだったのか。


「こうしてギルド講習会を開くのはアイリスのアイデアでな。最近若手の冒険者が最初の討伐依頼で無理をして、帰らぬ人になる事が多くて、まず基礎知識をきちんと身につけさせた方が良いとの考えだ。完全にギルドの持ち出しでやっているんだが、若手がきちんと大成してくれれば、こちらに入る実入りもデカいんで無償開催している」

 なるほど、ただで教えてくれるのは何でだろうと考えていたんだけど、ギルド側にもメリットがあるという事で納得した。


「という訳で、ギルド講習会を無償で受けると、半年はこのギルドでみっちりと依頼をこなしてもらう。だが拘束されたくない場合は、金貨1枚を払えば、即自由に行動してもらっても構わない」

 急ぎではないとはいえ、目的のある旅になるので、長い拘束は困るところだが、ちゃんと救済処置もあると知って安心する。

 目標は金貨2枚を貯めて、早々に自由になる事だね。


「冒険者っていうのは、いわゆる何でも屋だ。だが一応の規則はある。悪人以外の殺傷の禁止や、侵入不可地域への侵入とかな。そこら辺はこの冒険者ギルドガイドに記載してあるから、きっちり読むように」

 ランドさんは教団に置いてある真新しい小冊子を持ち上げて指差す。


「とにかくこれから2週間。冒険者の基礎を叩きこむから、しっかりと学び、自らの力にして欲しい。では、後はアイリスちゃん頼むわ」

 最後に入ってきた扉の方を見ながら言うと、ため息をつきながら受付嬢のアイリスさんが入ってくる。


「ちゃん付けは止めて下さいって言っているのに」

「うはははは。わりぃわりぃ」

 口を尖らせて抗議するアイリスさんに、頭をボリボリ掻きながら、全く反省の色が見えない謝罪をするランドさん。


「もう、いいですっ!」

 そんなランドさんを見てアイリスさんが強めに発言すると、ランドさんは逃げるように講習室を出て行った。


「さて、改めて今日は。皆さん。私が冒険者ギルドの基礎を教えるアイリスと言います。少しの間ですけど、宜しくお願いしますね」

 それからアイリスさんの丁寧でわかりやすい冒険者としての在り方や、依頼の受け方、素材の売り方、町の中の施設、周辺地域の説明、狩場の説明など、この町で冒険者としてやっていくための必要な知識を、2日かけて沢山教えてくれた。


 僕とルーミィ、猟犬族のチェリー、ドワーフのデデンは真面目に講習を受けていたが、ライとエリーは二日間共、スヤスヤと寝ていた。

 アイリスさんが額に青筋を立ててヒクヒクと口の端を引きつらせて我慢していたけど、余りの態度を見かねたアイリスさんがエリーに質問する。


「エ、エリーさん。リーフェンドの北東に広がるロレントの森に関する特徴を答えて下さい」

「ん。近場は人通りも多く、木の生え方も疎らなため危険度の少ない森。回復ポーションに使える薬草や、マナポーションに使えるキノコ類が採れる。あと料理に使える各種ハーブ類。でも奥になると鬱蒼としていて、熊・虎・蛇などの獰猛な動物がいるので気を付ける。また奥には湖があっていい景色だけど、巨大な水蛇が生息すると言われているので注意」

「そ……その通りです」

「ぶい」

 エリーさんは眠そうな瞳で指を二本立てて誇らしげに鼻を鳴らす。


「ぐぅ……」

 そうしてまたスヤスヤと寝てしまった。


「で、では、ライ君!リーフェンドの北側で最も近い村は?」

「ぐぅ……」

「ライ、ライ!アイリスさんが当ててるよ!」

「んが……?」

 続いてアイリスさんがライ君に当てるが、爆睡しているライ君は気が付かない。となりのチェリーさんがゆすって起こすと、眠そうに瞼をこすりながら起きる。


「何ですか?」

 全く悪びれもせずにアイリスさんに問うライ君。これは大物だなぁ。


「リーフェンドの北側で一番近い村の名前だって」

「あ……あぁ、フォレルの村だろ?」

「それは東の村よ……」

「あっれー?そうだったっけか?」

 チェリーさんがフォローするが、全く見当違いの答えを言うライ君に、思わず溜め息を吐くのだった。


 3日目は、魔法使いの人が講師だった。


「やぁ、先日ぶりだね。今日は僕が講師をさせてもらうよ。僕はカイ、魔術師をしている」

 そういってカイさんがフードを外すと、綺麗な水色の髪とエルフ独特の鋭い葉のような耳が見える。

「そこのエリーの兄で同じ水の氏族フロウスのエルフだよ。でも魔術と言うものに興味を持ってしまって、精霊術士ではなく魔術師をやっている」

「そういう道も選べるんだ……」

「あぁ、君は森の氏族ドルイドだったけ。森の氏族は、木々のように雨の恵み、大地の恵み、森の共存を大事に、動かずその場でありとあらゆるものを受け入れていくという教義だから、移動や変化を嫌う。だからとても閉鎖的になりやすい。その点、水の氏族は、移ろい揺蕩たゆたい、水のように流れに任せて留まりもすれば流れもするという自由が教義だから、比較的緩いんだよね」

 僕はカイさんの説明を聞いてなるほどなと思った。確かに僕の村は定められた職業以外に着くことを快く思っていなかったし、僕がニクスと知ると、凄く排他的になっていた。長老は格式や教義というのを必要以上に順守していて、村長さんはそんな教義に少し疑問を抱いているようだった。


「そんな僕が教えるのは魔術になる。一応精霊魔術も使えるから、その二つの違いを学んでもらう事にしようかと思っている。敵は強力な魔術を使ってくることもある。だから魔術を使えなくても、魔術がどういうものかを知っておくことは大事なんだ」

 そう言ってカイさんが説明を始める。


「ちなみに魔法と魔術の違いだけど、魔法を体系化して集めたものの総称を魔術と定義してる。精霊魔法を使う人を精霊魔術師。魔法を使う人を魔術師と言う。魔法使いと呼ぶ人もいるけど、正確には魔術師だね」

 カイさんが明朗に説明してくれる。穏やかではっきりとした口調なので、とても聞きやすい。


「では、精霊魔法と魔法の違いを説明しようか。ルーミィさん。精霊魔法はどうやって使うんですか?」

「えっと、精霊さんにお願いすると火の玉を出したり、明かりをつけたり、傷を治したりしてくれます」

 カイさんがルーミィを当てると、ルーミィは立ち上がってしっかりと答える。


「そうですね。精霊魔法は神羅万象に存在する精霊と交信する事によって発動します。その為には精霊にわかる言葉でお願いする必要がありますし、その場に精霊が居なければ魔法は発動しません。そしてその場にいて、交信が行えて、契約している場合に魔力を対価として現象を発生させます」

 カイさんがみんなを見渡しながら説明する。僕とルーミィにはなじみのある考え方だけど、ライやチェリーには今一わからないようだった。しかし、カイさんはそのまま進める。


「そして魔法ですが、これは正確なイメージを作り、力ある文節ワードを正しい言葉スペルと体内に巡回させた魔力で具現化して発生させます。その為、精霊魔法のように、精霊がその場にいなくても魔法を発動させることができます。しかし、消費する魔力は多く、効果は小さくなります。万能性がある分、特化した力は精霊魔法にかなわないという事です」

 カイさんが再度みんなを見渡す。先程に加えて、僕達もわからないという顔をしているので、すこし苦笑いをして言葉を続ける。


「簡単に言うと、精霊魔法の方が強くていっぱい撃てる。その代わり、精霊が側にいないと使えないし、色々な事が出来ないって事です」

 簡単な言葉に変えて説明してくれたので、非常にわかりやすい。


 その後は、どんな魔法があるのか、その魔法を使われた際に注意しなくてはならないことなどを1日中講習を受けたのだった。


 そして4日目は野宿の仕方や登攀、怪我をした時の応急手当などの野外活動の基礎や、危険感知のコツを学び、5日目には周辺でよくみられる危険な獣や虫、亜人種といった生物クリーチャーの戦い方や生態系、素材になる部位を教えてもらい、6日目には色々な生物クリーチャーの解体方法を学んだ。


「みんな一週間ご苦労だった。明日は一日休みだから、ゆっくりするのも良し、復習するも良しだ。明後日からは戦闘や魔法の実技訓練と、野外活動の訓練を行うので、武器防具を持ってくるように」

「終わったー。かなり濃い1週間だったぜ」

「アンタ、ほとんど寝てたじゃない」

「いやーチェリーがわかれば大丈夫かなって」

「アンタは、本当にダメダメね」

 最終日の最後にランドさんが講習室にやってきて、来週の予定を伝えてくれる。そしてライ君を嗜めるチェリーさん。溜息をつきながらも、そんなライ君をフォローするのが嬉しいみたいだ。


「おにーちゃん。凄くいっぱい教えてもらえたね」

「うん。本当に僕は知らない事ばかりだって痛感したよ。でも、運よく講習に参加できたのは良かった。いきなり何も学ばずに聖都ユグドラシルを目指していたら、大変な目にあっていたと思う」

「ルーミィも知らないことばっかりだったよ。でも色々な事をわかりやすく教えてもらえて、とっても楽しかったよー」

「ん。知識は大事。でも危険を回避するために自宅警備はもっと大事」

 僕とルーミィが感想を言い合っていると、後ろからエリーさんが気怠そうに引き籠りの重要性を強くアピールしてくる。


ガツンッ!


「自宅警備なんていらん。ちゃんと働け」

「いーたーいー。暴力反対。暴力はなにも生み出さないー」

「引き籠りも何も生み出さん。ちゃんと来週も来いよ」

「ワタシ今週チャントキタ。ワタシエライ。来週ハ、ゴ褒美ニ引キ籠ル」

「何で急にカタコトになるんだ。それにダメだぞ。来週はチームで行動するから、休むと迷惑が掛かる。お前はミスティとルーミィと同じ班だから、ちゃんと来いよ」

「えー、動くの辛いー」

 そんなエリーさんに拳骨を落としたのはランドさん。嫌そうにそっぽを向きながらエリーさんが答えるけど、許してはもらえなさそうだ。それと来週はエリーさんと一緒に実習になるらしい。


「まぁこの二人なら、ちょっと安心かもー。ランドのように筋肉マッチョの暑苦しいのは嫌いだしー、おにーのように頭でっかちも面倒くさいー」

 ランドさんとカイさんに対して痛烈な皮肉をのんびりとした口調で言うエリーさん。何かに組めない感じなんだよな、この人。


「っていう事で。私エリー、今後ともヨロシク」

「あ、はい。改めまして僕はミスティ、彼女はルーミィです。宜しくお願いします」

「ワタシが動かなくていいようにヨロシク」

 エリーさんが僕達に気怠そうな目を向けて言うので、僕も頭を下げてお願いする。そして碌でもないセリフが当たり前のように飛んでくる。


「それじゃぁ解散。休み中、できれば冒険者ギルドのハンドブックは見直しておけよ」

 ランドさんがそう締めくくり、初心者講習会の1週目は終了するのだった。


 そして荷物をまとめて講習室を出ると、酒場はいつもの喧騒に包まれていた。


「ぐわっはっはっは。今日も坊主じゃぁぁぁぁぁ!!」

「おいおい、ゴラン。そんな毎日坊主じゃ食っていけねぇだろ」

「ぐはははは。違いねぇ!!」

 いつものようにゴランさんがエールをグビグビ飲み干しながら大笑いしている。そして呆れた顔をしながら、ウルグさんも隣でエールを飲んでいる。


「お、もやし小僧じゃねぇか!こっちこい!」

 僕に気が付いたゴランさんが手招きをする。一週間前の二日酔いが頭をよぎるが、無視するのも失礼なので、とりあえずゴランさんの卓に向かう。何か気に入られたみたいなんだよなぁ。


「おぉ、もやし小僧!とりあえず座って一杯じゃ。そっちのお嬢ちゃんは、果実水じゃな」

 給仕さんを呼んで手早く注文すると、すでに鼻の頭を真っ赤にしたゴランさんが上機嫌で話しかけてくる。


「初心者講習はどうじゃった?」

「はい。とても勉強になりました」

「そうかそうか!じゃが、実践してみない事には理解したとは言えん!だが知識がないのはいかんから、ちゃんと知識を知恵に変えるんじゃぞ!」

「飲んだくれのゴランが言っても信用がないと思うんだが……」

 ゴランさんのありがたい忠告を聞いている僕の横で、呆れ顔をするウルグさん。ウルグさんは強面こわもてで所見の人はとても緊張しちゃうんだけど、本当は凄く優しい人なんだよな。

 そうしていると給仕の人がエールと果実水を持ってきてくれる。


「おーし、じゃぁもやし小僧のリーフィンド祝一週間記念に乾杯じゃぁぁぁぁぁ!!」

「乾杯!」

 ゴランさんの音頭で、ウルグさんとゴランさん、僕とルーミィが乾杯する。ゴランさんなりに僕達を祝福してくれようとしているようで嬉しい。まだ名前は憶えてもらってないけど。


「もう一週間か。あっという間だったな」

 ウルグさんが、少し遠い目をしながらぼそっと呟き、僕達を見てニヤリと笑う。でも、獲物を見つけた野獣のような笑い方で、ちょっと怖いんだよね。


「ウルグー、来週の仕事決めてきたわよー」

「お?ミスティとルーミィじゃねーか」

「ゴランさんも一緒ですか」

 手に持った紙をヒラヒラさせながらウルティナさんがやってくる。ウルフェさんとロルフさんも一緒だ。


「あらあら、じゃぁ丁度いいわね。来週の仕事だけど初心者講習の実技の支援と護衛よ」

 仕事の内容を話すウルティナさんが僕達にウィンクする。そんな女性らしい態度にちょっとドキドキしてしまう。


「ミスティとルーミィが参加しているのを知ってたからなー。給金はあんま高くないけど、一人前になるのを手伝ってやりたいからなー」

 ウルフェさんが頭の後ろで手を組んでニヤリと笑いながら言う。


「いつもお世話になっているギルドへの恩返しにも丁度いいですしね。それに少しゆっくりとした仕事で中休みしたかったところです」

 ロルフさんも笑顔を浮かべながら、ウルフェさんに続く。


「そういえば、枠がもうちょっと余ってたから、ゴランもやったら?どうせ飲んでるだけでしょ?」

「おぉう!もやし小僧を鍛えて、そのあとランドと仕事明けの一杯を飲む仕事か!いいのぅ!じゃぁ手続きしてくるわい!!」

 ウルティナさんの提案に嬉々とするゴランさん。すぐに席を立つと冒険者ギルドのカウンターに向かって行く。

 僕も知り合いの人が教えてくれる方が安心なので、願ったり叶ったりだ。


 無事ゴランさんの手続きも済んだようで、僕達はそのまま宴会に突入し、僕は再び二日酔いの苦しみを味わうのだった。

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