#08
「ちょーっと待ったー! 俺にも、もう一度判定チェックやらせてくれ!」
「成瀬くん!?」
「あー、サボりだー。いーけないんだー」
「HRが終わったから、探しに来てみただけだよ。まあ、廊下でしばらくこっそり話を聞いていたけど」
「えー、井上くんまで?」
お約束に更に輪をかけたように、実験室に入ってきたふたり。って、どう考えても追い出されるよね?
「ああ、報告は聞いているわ。あの日、一緒にいた子たちね。……そうね、もう一度、やってもらおうかしら」
「森坂少佐!? そのような対応は業務命令には……!」
「機密事項は何もないわ。それに、あなたは技術士官として気にならないの?」
「それは……確かに」
追い出されなかったよ!? よっぽど、切羽詰まってるのかなあ。
「それじゃあ、成瀬くんだったかしら? お願い」
「よっしゃー!」
勢いよく感応パネルに手を置く成瀬くん。面倒なことになるから、また無反応になってほしいなあ。
ぽーん
「レベル1、ね。驚いたわ……!」
「いえええええええええええい!!」
ダメだった。うん、まあ、確かに、あの時より更にテンション高くてマックスって感じだし。でも、マックスでレベル1かあ。あのアルゴリズムで効率化しても、せいぜいレベル3止まりじゃないかな。
「じゃあ、ついでに僕も。あの時は結局、判定チェックを受けなかったからね」
「そうだったの? ……もし、君まで反応があったら、何かの仮説が立てられそうね」
「と、いいますと?」
「……『同調』は、伝染する」
「ウイルスみたいですね……」
「実際、
「そうなんだー。やっぱり、みこちんは私の心の友だよ!」
「って、なんでぐりぐりするのー」
あ、しまった。つい。
「えーと、パネルに手を置いていいですか?」
「あら、ごめんなさい。ええ、お願い」
すっ
ぽーん
「……レベル4!?」
「あれ、びっくり」
「びっくりしてるように見えないぞ? っていうか、すげえなお前!」
「これは……仮説どころの話じゃないわね」
「少佐、すぐに本部に連絡してきます!」
「お願い。ただし、秘匿回線でね」
「了解!」
ガラッ
たったったったっ
……うーん、予想以上に面倒なことになってきた。えーとえーと、これからどうすればいいかな……?
「最後になったけど、御子神さん、あなたも再確認をお願い」
「はーい」
とりあえず、いつものノリで答えたけど……頭の中では、あれこれ考えまくっている。打算ともいう。
……よし。
すっ
ぽーん
「レベル1のまま、ね。それでも興味深いけど」
「えっと、井上がレベル4で、田町がレベル3からレベル1、俺と御子神がレベル1か。感染元は実は井上ってか?」
「その言い方はヒドいなあ」
ごめんなさい、それを狙って『レベル1』となるよう、精神感応の度合いを
「僕は、御子神さんや田町さんが軍に連れていかれるのは嫌だなあって思っただけなんだけどね」
「俺はいいのかよ!?」
「君は嬉しいんだろ?」
「おうとも!」
成瀬くんはアレだな、脳を取り出して『フェザーズ』に組み込んでしまえばいいんじゃないかな。そうすれば、みこちんも心置きなく彼氏彼女の関係を解消してくれるよ。みこちんは成瀬くんにはもったいないし!
「残念だけど、接収した『フェザーズ』に乗せることはないわ。まだまだ未知の多い『敵側の兵器』なのだから」
「へぶっ」
「でも、研究解析には付き合ってもらうわ。あなた達の保護者にも説明して、納得してもらう必要があるけど」
「俺、親と縁を切る覚悟があります! だってこれ、戦争だから。悲しいけど」
成瀬くんはもう『ヒューム』の手先として逮捕しちゃおうよ。平和のために。
しかし……ふむ。緊迫した情勢の割には、
「森坂少佐! 本部は、少佐の判断で対応せよとのことです!」
「わかったわ。……どこで『ハルト』が聞いているかわからないから、強引な対応は禁止と厳命されているけど……なかなかやりにくいわね」
「せめて、素性が判明していれば良いのですが……。いつどこからまた、あの時のように接収した『フェザーズ』を制御されてしまうかと思うと……」
あれ、私のせい?
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