#03
その後に分割画面で次々と映し出されたのは、各国主要都市の様子だった。日本については、東京を始めとした5都市。東京については更に複数の箇所が映し出され、そのひとつがここ、ライブ会場の舞台となっていた都庁前だった。
『我らは、侵略者などではない。大人しく従えば、何も危害は加えない。だが……抵抗する者には、容赦しない』
そうして語られたのは、『ヒューム』と名乗った組織の成り立ちだった。最初は、某国にて極秘に立ち上げられた超近代兵器の研究開発組織だった。人型の巨大機械の実用化は、軍用のみならず民用としても有用性・汎用性が語られていたが、巨大ゆえに重力下では自重で崩れ落ちること、複雑な制御機構は人が簡単には『運転』できないことが問題となっていた。
『……しかし、我らはその両方を解決する方法を見い出した。パイロットの「精神感応」に基づく、不断の制御を行う技術である』
その言葉を聞いた私は、思わず叫んでしまった。
「はあ!?」
「な、なに、霞、突然」
「え? あ、や、その、最近読んだ古いラノベで、出てきた用語だったから」
「つまり?」
「精神感応……テレパシーで機械を動かすってことだよ」
「SFかよ!」
正確には、脳細胞で発生する微弱な電流を測定しながら逐次解析し、思考に含まれる強い『意図』をリアルタイムで抽出して様々な制御を行うものである。……などと言ったら、私がそっち方面の知識や技術に詳しいことがバレてしまうので、ラノベをダシにしてごまかす。いや、それよりも!
『精神感応』技術って、そんなだいそれたものだったの!? それって、私がハルトを開発する過程で
ピロロロロロ
通話の呼出音にはっとした私は、スマートフォンを取り出して画面を見る。かけてきたのは……ハルト?
「私よ。どうしたの?」
『気づいているだろう? あの人型兵器が、君の技術を応用したものだって』
「いや、アレって、少し知識があれば誰でも作れるものなんじゃないの?」
『そうでもないみたいだよ。なにしろ……僕には、あの兵器から発生する精神パターンに同調できるから』
「……は?」
いくら原理が同じだとしても、何から何まで同じ製品が生まれるわけではない。電波で通信していることだけ同じでも、全く異なる仕様で開発された通信機同士が通信できないことと同じだ。
それと、だ。
「兵器から発生する精神パターン、って言ったわよね? どうやって検知したの?」
『それも不思議なんだ。なにしろ、結晶体を用いた精神感応センサーが、ダミーのはずのカメラにも組み込まれていたんだから』
「……は?」
ええい、何度呆ければいいのだ! えーと、ダミーのカメラを用意したのは主催者側だけど、そのカメラはもともと……。
「配信サイトの運営会社!? まさか、最初から『ヒューム』に加担していて……!」
「わっ!? 霞、どうしたの? 誰かとスマホで話していたと思ったら、急に大声上げて」
「あっ……ううん、なんでもない」
「おい、大人しくしてろよ。なんか、勝手に逃げ出したら捕縛するとか言ってるぞ」
その後の中継演説で、『フェザーズ』と呼ばれる人型兵器を開発したこと、そのフェザーズの精神感応による制御装置は『選ばれた者』にしか使えないこと、その選ばれた者による人類全体の統合を使命として、密かに軍産複合体を取り込みながら組織が拡大したこと……などが語られた。
パリパリの選民意識に基づくものだが、要は、精神感応の制御装置との相性ではないだろうか? 組織自ら生み出したはずものを、そんな神器のようにみなすなんて……これはもしかすると、ハルトの言うとおり……。
『では、これより、各制圧ポイントにて「選抜」のデモンストレーションを行う。栄えある「
これって、あれだよね。『フェザーズ』のパイロットを手っ取り早く確保するためだよね。まあ、これだけ派手にやれば『優遇された』と思う人が出ても不思議じゃないけど。
なにしろ。
「うおおおお、アレに乗れるのか!」
「成瀬、まだ何もやってないだろう?」
「いや、俺にはわかる! ロボットに乗れと俺の魂が叫んでいる!」
「成瀬くん……」
成瀬くんというアホが調子ぶっこいているくらいだから。しかし、いきなり兵器で制圧してきた者に『選ばれた』? 私はごめんこうむる。こうむるが……どうしたものか。もし、私が開発した技術が配信サイト経由か何かで『未知の力』として流れた結果、こうなったのなら……罪悪感ハンパない。むう……。
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