#04
「ほら、次!」
「なんだよ、制御装置が反応しないからって、ぞんざいに扱いやがって」
「でも、成瀬はくやしいと」
「そりゃあ、なあ……」
「まあ、これだけ人がいても、これまでふたりしか反応がなかったんだ、よほど希少なんだろうね」
都庁関係者とライブ会場にいた観客を含む判定チェックは、数時間に及んだ。未反応だった者はすぐに帰宅するよう促されたが、会場の隅にいた私たちの順番が回ってきた頃には、既にほとんどが帰宅していた。そして、井上くんが言ったように、これまでふたりしか『選ばれなかった』ようだ。
「次は……君だ」
「あの、どうしてもやらないといけませんか?」
「拒否権はない。もし拒むなら、我らふたりががりで装置を接続する」
「……わかりました」
ぽーん
「ほう、レベル3か。掘り出し物だな」
「えっ……」
みこちんが判定チェックに引っかかってしまったらしい。彼らの言う『レベル』は5段階あるらしく、これまで反応があったふたりがどちらもレベル1だったことを考えると、確かに『千人に一人の逸材』と言えるだろう。私の親友であるみこちんを物扱いするのは気に食わないけど!
などと頭の中で叫んでいたら、私の番が回ってきた。まあ、みこちんの隣にいたからね。
「ほら、次だ」
「あの、この装置って、どこかにつながっているんですか?」
「俺が乗っていた機体に繋がっている。まあ、実際に機体を動かすには、さっきのレベル3の者であっても、相当の訓練が必要だがな」
「そうですか……」
「ちなみに、俺はレベル4だ。数日で乗りこなせたがな」
そんなドヤ顔を見せるパイロットのひとり。まさしく『選ばれた者』としての優越感がそこにある。なんとなく、アクセスランキングサイトの結果に一喜一憂していたVTuberのひとりを思い出す。今は関係ないか。
そして、私は装置の感応パネルに手を置く。
ぴーっ
「……エラーだと?」
「どういうことだ? こんな反応、マニュアルにもなかったぞ?」
「想定外の検知があった場合の表示しかしないな。おい、一度手を離せ」
「はーい」
すっ
「……無反応に戻ったな。よし、もう一度感応パネルに手を置け」
「はいはい」
ぱっ
ぽーん
「なんだ、レベル1か。なんだったんだ、さっきの誤動作は。だがしかし、お前も『同調者』のようだな。もういいぞ、手を離して……」
そんなわけにいくか。
ぴーっ
「なんだ、またエラーか……なにっ!?」
キュイーーーン
「俺のフェザーズが、勝手に……!?」
ドスン、ドスン
人型兵器……フェザーズの脚がゆっくり動き、判定装置につながっていたケーブルを引きちぎると、舞台の方に向かって歩き出した。目標は、ライブ主催者が設置した、ネット接続のための機器類。うん、さっきの感応パネル経由で
ガクンッ
ガチャッ、ガチャ
ピロロロロロ
「ほいほーい」
『カスミ、「フェザーズ」のメインシステムから全てのデータを抜き出せたよ』
「解析はすぐにできる?」
『もう少し……完了。一応、フェザーズは独自に無線ネット接続できる機能があるようだ』
「カバー率は?」
『
「それでもいいわ。やっちゃって」
『了解』
ガクンッ
ドシャッ
ウィーーーン
「うわああああ!?」
ドサッ
銃を構えていたフェザーズの機体が急に屈み、胸のハッチが開く。中に乗っていたパイロットのシートベルトも外れ、地面に放り出された格好だ。
「くそっ、俺のフェザーズっ、動けっ」
3機目は、パイロットが制御装置で動かそうとしても、うんともすんとも言わない。パイロットが乗っていない機体は、ハルトが全てロックしたようだ。
いやあ、『やっちゃって』だけで私の望み通りのことをしてくれるなんて、やっぱりハルトって最高! 今度、新曲をもうひとつ考えるとしよう。カッコいい振付に合うヒートアップするやつ!
「今だ、捕まえろ!」
どだだだだ
「は、離せ! 俺たちを、何だと思って……」
「大人しくしろ! テロ容疑の現行犯で逮捕する!」
少し離れたところで推移を見守っていた機動隊が、パイロット3人を捕縛する。どうやら、フェザーズのもつ銃を戦車の砲身と仮定して、付かず離れずの場所に配置されていたらしい。他の制圧場所も同じだったのかな? まあ、フェザーズが無力化されれば、その場にいた一般人だけでも取り押さえられそうだけど。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます