第一章 吸血鬼【バンパイア】


「しかし……。」


あまりに、光龍のことを心配する影龍に、冬夜が少し怒ったように言った。


「いい加減にしろよ!あんたがいつまでも、そんな風だから、光龍は、好き勝手にやるんじゃないか!」


「冬夜!」


荒々しく言う冬夜に、夕霧は、怒鳴った。影龍は、唇を噛み締めると、ダッと、そこを飛び出して行った。冬夜は、チッと舌打ちすると、影龍の後を追って行った。



屋敷を飛び出して行こうとした影龍は、散歩から帰ってきた白狐と、勢いよく、ぶつかってしまい、二人とも、地面へ倒れてしまった。驚いた白狐は、目をパチクリさせながら、地面に伏している影龍を見つめた。


「どうしたのです?そんなに慌てて…。」


そう言った白狐は、肩を小刻みに震わせている影龍に、眉を寄せ、乱れた髪をかきあげた。その時、後を追ってきた冬夜が二人の所に来て、倒れている影龍を抱き起こした。影龍は、腕や足を擦りむいており、冬夜は、抱き上げると、屋敷の中へと、駆けて行った。それを見て、白狐は、フゥーッと息をつき、立ち上がり、着物の砂を叩く。


「何とまぁー、騒々しいこと…。冬夜の奴、怪我をしたのは、影龍だけではないぞえ。」


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