第一章 吸血鬼【バンパイア】


影龍は、黙って話を聞いていたが、光龍の言葉に、顔を上げ、眉を寄せた。夕霧は、心配そうな影龍の様子に、フッと微笑むと、光龍を見て、こう言った。


「一人で平気か?誰かさんが心配して、見ているぞ。」


それを聞いて、光龍がチラリと見ると、影龍は、プイッと顔を背け、うつ向いた。光龍は、キュッと下唇を噛み締めると、強い口調で言った。


「心配は、無用です。僕だって、一人でやれます!」


「そうか……。」


夕霧は、呟き、再び瞳を閉じると、声を落として言う。


「十分、気をつけろよ。」


「はい。」


一礼すると、光龍は、立ち上がり、そこを去って行った。光龍が去った後、影龍は、夕霧の側へ寄り、頭数を下げた。


「お願いでございます。私にも、この仕事を手伝わせて下さい。」


震える瞳で見つめる影龍をしばらく見つめていたが、夕霧は、口許に笑みを浮かべた。


「なぁー、影龍…。お前が光龍を思う気持ちも、分からないでもないが、今のままでは、いつまで経っても、光龍は、一人前にはなれないぞ。それに…いつまでも、ガキ扱いしていると、光龍に失礼だ。」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る