第一章 吸血鬼【バンパイア】


 荷物を庭の植木の陰に隠し、裏庭から、こっそり、縁側へ四つん這いになって上がってきた光龍は、居間の障子をそっと、静かに開けた。中には、もう、みんな集まっており、上座に座った白狐の方を向き、話をしていた。


『まずい…。』


小さく舌打ちをした光龍は、白狐の声に、ビクリと、身体を震わせた。


「光龍さん。今、お帰りかえ?随分と、早いねぇー。みんな、待ちくたびれましたよ。」


皮肉たっぷりに言う白狐に、ヘヘヘと笑い、頭を掻く光龍。


「すみません。つい、夢中になって、遅れてしまいました。」


白狐は、クスクスと笑い、黙って頷いたが、その隣に座っていた夕霧は、不機嫌そうに、見つめている。光龍は、少し、反省した顔をすると、みんなの後ろに隠れるように座った。白狐は、コホンと咳払いをすると、みんな方を向いて、話しを続けた。


「先程も、お話ししましたが…。最近、妙な事件が起こっているようで…全く、彼らのイタズラにも、困ったものですね。」


白く輝く白髪をサッと、後ろにはね、白狐は、フッと笑みを浮かべる。


「若い男の血を吸い、仲間を増やしているってのは、確かなのかい?」


冬夜が尋ねると、夕霧が静かに応えた。


「被害者の男が満月の夜になると、必ず、姿を消している。青白い顔色をした奴が、満月の夜になると、すっかり、顔色がよくなり、活発になるそうだ。そして、再び、顔色が悪くなり、部屋に閉じ籠もり、日の光りを浴びないらしい。」

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