第一章 吸血鬼【バンパイア】


「あーあ。どうしよう…この荷物。」


ベンチの上に、山積みにされた荷物を見て、困ったように、息をついた光龍は、ベンチの横に立っている桜の木から、声を掛けられ、見上げた。


「仕様のない奴だな。」


その声に、光龍は、ホッとしたように、笑みを浮かべた。


「影龍、いたのか?」


光龍が声を掛けると、木の上から、人影が下りてきて、光龍の前に立った。


長い黒髪を乱した、その顔は、光龍と同じだった。だが、黒い服に身を包んだ、その姿は、光龍よりも落ち着いている。影龍は、黙ったまま、ベンチの上の荷物を半分以上持つと、再び、サッと、木の上に飛んだ。


「買い物も良いが、また、仕事が入ったようだ。急いで、屋敷に戻ってこい。」


そこまで言うと、影龍は、風のように、そこを去って行った。光龍は、残った荷物を持つと、今までと違う顔つきで、屋敷へと、駆けて行く。

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