第一章 吸血鬼【バンパイア】


「いいえ、全然。借金と言っても、身内からですし、買い物さえ出来れば、僕は、幸せなんです。」


「…ったく!呆れちまうなぁ、あんたには。」


冬夜は、腕を組むと、強い口調で、そう言った。光龍は、ギュッと荷物を抱き締めると、愛おしそうに頬擦りをした。


「別に、いいでしょ。あなたに、迷惑をかけているわけじゃない。それにねぇ…お金は、生きてるうちに使わないと、意味がないんですよ。」


「はいはい。好きにしろよ。」


半分、もう、どうでもいいような口調で、冬夜は、言った。心の中では、光龍と兄弟である影龍が哀れだった。


双子だというのに、影龍は、おとなしい性格で、光龍の言いなりになっていた。借金も、多分、影龍からに決まっている。だから、あんな風に、落ち着いていられるのだ。何だか、腹立たしい気持ちになり、冬夜は、立ち上がり、煙草を投げ捨て、靴の先で、強く捻り潰した。


「俺、用を思い出したから、先に帰るぜ。」


「えっ!?ちょ…ちょっと、待って。荷物を少し、持っていって下さいよ!」


光龍は、慌てて、そう言ったが、冬夜は、聞こえないふりをして、サッサと行ってしまった。呆然と、そこに立ち尽くした光龍は、大きく息をつき、肩を落とした。

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