第一章 吸血鬼【バンパイア】


『最近、満月の夜になると、10代の若い男性が行方不明になり、その一週間後には、何事もなかったかのように、戻ってくるという奇妙な事件が起こっている。若い男性だけを狙った、誘拐事件だと捜査を続けているが、戻ってきた男性を調べたところ、大量の血液を抜き取られていることが判明した。誘拐した犯人は、身代金を要求しない代わりに、被害者の血液を抜くというのだ。尚、誘拐され、血液を抜かれた男性は、その後、満月の夜になると、姿を消し、また再び、元の場所へ、戻ってきている。彼らがいったい、何の為に姿を消し、何をしているのかは、全て不明である。そして、何故、満月の夜なのか…謎は、深まるばかりである。』


しばらくの沈黙が続き、やがて、夕霧が白狐の隣に腰を下ろし、口を開いた。


「白狐、これ、どう思う?」


「どう……って。」


白狐は呟き、口元に笑みを浮かべると、新聞をきちんと畳み、縁側に置き、夕霧の方に、顔を向けた。


「化け物の仕業に、違いありませんよ。ねぇ?夕霧さん。」


優しい声だが冷めている白狐の言葉に、夕霧は、薄く微笑んだ。


「彼らのことになると、本当、嬉しそうな顔をするねぇ。」


「そうかえ?」

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