第279話 現代水着は最強!

 長期休暇5日目、南部辺境伯の屋敷を後にしようとして――何故か南部辺境伯が付いてきた。


「実は漁業街に視察の用事がありまして。この際だからついでにと」


 最近物騒だから、同行し合いませんか? 美味しい店、ご紹介しますよ――って事らしい。

 ただこの言葉、もう一つ裏があるらしく、リーゼが小声で教えてくれた。


「(護衛費をなるべく安く上げたいので、片道だけでもお願いしますって事です)」


「(帰りはどうすんだ?)」


「(漁業が盛んな大きい街なので、冒険者ギルドもありますから)」


「(片道分の護衛依頼費は下げれるわけか)」


「(絶対に0にはなりませんけどね。経済を回すためにも)」


「(世知辛いねぇ。で、受けて良いのか?)」


 受けて良いらしい。

 普段は駄目だが、この先は完全にプライベートだから、好きにして良いそうだ。

 後は貸しを作っておくためでもあるそう。

 貴族の貸し借りは中々に大変だから、貸しておくのは悪くない手だ。

 というか、向こうも分かっていて、わざと貸しを作りに来てるはずだ。

 唯一、前国から続く辺境伯家だからな。

 そんなわけで、南部辺境伯領都から1日半の旅程となる道を、竜便でサクッと進む。

 時間? 高く速く飛んでいるので、数時間ぐらいだな。

 朝に出て、昼前には着いたから。


「いやはや、なんとも凄まじいですな。良い思い出になりました」


「それは何よりだ。ところで、早速貸しを返して欲しいんだが」


 直轄領である黒島へ行くことを伝え、水兵か漁師を借りれないかと相談する。

 直ぐに衛兵に伝えた南部辺境伯は、一緒に詰め所へと向かって行った。

 伝令役の衛兵を手配するのだろう。

 別行動となるので、紹介された飲食店へ足を運ぶ。

 多分、そのつもりもあって紹介したのだろうから。

 その紹介された飲食店だが、まぁ、普通に美味かったな。

 ちょっと物足りないけど。

 女性陣は満足しているのを見ると、男性陣はって感じだ。

 働き盛りの男達には、少々物足りない量は減点だよなぁ。

 そんな中、伝令兵がやって来た。


「失礼します、公王陛下。水兵は数名が同行出来ますが、何名必要でしょうか? 漁師に関しては、引退した者で良いなら、直ぐにご紹介が可能です」


「ふむ……漁師に関してだが、引退理由が聞きたい」


「漁業組合規定による年齢によってですが、引退して1年程ですし、趣味の釣りをしており、貸し釣り船もしておりますので、操船技術に問題はありません」


「そうか。なら、その漁師と水兵3名を頼もう」


「はっ」


 伝令兵は直ぐに出て行き、少し待つと4名の男性と1名の女性がやってきた。

 その内の一人は、先程の伝令兵なので、残る男性3名と女性1名が案内役なのだろう。


「公王陛下、お待たせしてしまい申し訳ありません。この3名が水兵で、こちらの1名が漁師です」


「ありがとう。これからも頑張って職務に励んでくれ」


「は、はっ!」


 激励の言葉を受けた伝令兵は、小躍りしながら出て行った。

 さて、案内役の漁師と水兵だが、漁師は還暦っぽい男性で、還暦とは思えない程の筋肉ムキムキマン。

 水兵の男性二人も筋肉ムキムキマンの中年男性二人。

 そして、珍しい女性兵士。

 かなり優秀なのだろうか。


「以降、我々が護衛と案内をさせて頂きます。彼女に関してですが――」


「南部辺境伯が五女、トルティと申します。公王妃殿下の世話係と護衛を」


「……あんの辺境伯め、上手い事やりやがって」


「私もそう思いますが、妻に――と、考えてはいませんよ。公王陛下というよりは、公王妃殿下の方かと」


「そういう事ですか。あの御仁、相当ですね」


「リリィ?」


 小声で聞くと、次世代への顔繋ぎとしてらしい。

 恐らくだが、南部辺境伯の娘達は、全員嫁ぎ先が決まっているだろうと。

 それと、何か目新しい事があれば、話に乗りたいと。

 先行投資? 多少の借金なら喜んで投資しますって事らしい。

 ちょっと頭が痛くなるような出来事だったが、気を取り直して黒島に行こう。

 シアたっての、船で海旅行だしな。

 そんなわけで、船着き場にやってきました。


「自分の釣り船では、この人数は流石に……」


「あ、その辺は問題ない。こちらで用意したから」


 申し訳無そうにする漁師を安心させるように、リエル監修の船を出す。

 初めは大型クルーザーみたいなのだと思っていたが、完成品を見て絶句したのを思い出すなぁ。

 そう、この場にいる全員が、同じく絶句していたのだから。

 超大型豪華客船が、船着き場に現れたから。

 あ、空間収納から出しただけだよ。

 ちょっと演出はしたけど。


「あの、あなた? この船は一体……」


「俺もな、初めは中型帆船程度を考えていたんだ。ただ時間も無いから、リエルに全て任せたらな、こんなのになってたんだ」


「リエルちゃん、やりすぎですね」


「まぁ、リエルだからって事で」


 頭の中で、リエルの拗ねた声が聞こえたが、スルーしておこう。

 そんな超大型豪華客船だが、魔改造戦艦とは違って、魔導動力船である。

 魔石の魔力を使って動かすのだが、かなり大きい魔石が必要で、黒島への往復で燃料切れになるくらい、燃費が悪い。

 なので魔石を加工して、魔力を魔石に流し込んで、補充できるようにしてある。

 それくらいしないといけないくらい、超燃費が悪い。

 魔改造戦艦は永久機関なので、燃費の悪さが浮き彫りになってしまってるな。

 代わりに内装は、前世の何かで見た豪華客船特集を参考にしているので、煌びやかである。

 船上には巨大プールも完備だ。

 乗船人数も、船員込みで1万人ちょっと。

 もし、実際に乗客を乗せるなら、5千から6千人位だろう。

 ゆったりめなら、3千から4千弱かな。

 そんな処女航海船に全員――護衛と侍女込みで70人位――乗り込み、いざ黒島へ!




「潮風が気持ち良いのです!」


「あまり乗り出すと危ないですよ、シア」


「気を付けるのです、リーゼおねえちゃん」


 妻達は船酔いしてないようだ。

 しかし、意外な事実が判明した。

 これは致命的な弱点かもしれん。


「うっぷ……」


「きもちわりぃ……おぇ、吐きそうだ」


 夫婦揃って船酔いである。

 そう、ナリアとウォルドが。

 他にも船酔いの侍女と護衛が数名。

 ただ問題なのは、同伴序列メイド全員が船酔い中。

 そんな中の航海は数時間続き、おやつ時に黒島へと到着した。


「今日は流石に遊べないから、宿泊地の選定だな」


「主、我が運べば、頂上に居を構える事も可能ですが?」


「それも考えたんだけどな、道ってないだろ? 遊びに行きづらいのはなぁ」


 海岸線に乗り上げさせた船から降りて、何処を拠点にするか考える。

 満潮も考えると、森を多少切り開くのが妥当かな。


「つうわけで、さっさとやるか」


 土魔法と風魔法を使い、一気に森を切り開く。

 ある程度の土地を確保して、空間収納から屋敷を取り出す。

 基礎工事? リエル監修で切り開いたから、しっかり作って設置したぞ。

 そんな状況を、ポカーンと口を開けて呆然としている四人。

 漁師と水兵3名である。

 他の者達は、まぁ陛下なので――と、何か諦めてる様子。

 君ら、何気に失礼。

 野宿したいのかな?


「いや、陛下の魔法最高っ!」


「野宿無しって素晴らしい!」


「手の平クルックルかよ」


 そんなこんなで一夜を過ごし、翌日、海で早速遊ぶことに。

 その前に、あれを着て貰わねば――。


「というわけで、水着を用意しました」


「あの、布地がかなり少ないのですが……」


「蒼、あんた、やったわね?」


「なんの事かな? あ、いつものは禁止で」


 ミリアは少したじろぎ、蛍は怪訝な顔をしているが、これは仕方ないのである。

 この世界の水着だが、ボーダーラインウェットスーツで、全身ウォー◯ーみたいな水着なのだ。

 色気も何もあった物ではない。

 ただ、ミリア達の懸念も分かる。

 なので、一部護衛達は屋敷か船で待機してもらう。


「潤、輝明、ウォルド、他数名の男性だけだから」


「私達も着るのですか?」


「ナリア含めた侍女も全員だな。君らの休暇も兼ねてるから、交代で遊んでくれ」


「……はぁ。まぁ私は、陛下ご誕生時から侍女をしていますから構いませんが、旦那様が良い気はしないでしょう」


「だってさ、ウォルド」


「多少の事には目を瞑る。後、トキワがいやらしい眼でナリアを見たら、物理的に目を潰す」


「なんで名指し?!」


「潤、もし他の女性をそんな目で見たら、目を潰した上で別れるから」


「美羽さん?!」


「輝明」


「潤が覗きをしないように見張れば良いんだな」


「他の人に鼻を伸ばしたら、不知火君に乗り換えるから」


「天音さん?!」


 ……妻含めて、独占欲の強い女性多くね?


「すみません、私は何故、この場に呼ばれているのでしょうか?」


「? 護衛の水兵だよね?」


「そうですが、婚約者のいる未婚女性なんですが」


「色々な感想聞きたいから、着用で。多分、君のお父さんも、なんとなくわかって送って来てるから」


「お父様、後で殴りに行きますからね」


 貞操観念の強い女性が多いから、水着は売れないかもしれない。

 そんな事を考えながら、トランクスタイプの水着にパーカーを着て浜辺に立つ。


「海だーーーーーー!」


「蒼夜、ベタだな」


「ベタだけど、海水浴なんて17年ぶりだから」


「おーい、パラソル立てようぜ。潤、蒼、手伝ってくれ」


「それは私共がしますので」


「うぉっ! びっくりしたぁ」


 背後にすぅっと立っている序列侍女集団に驚く輝明。

 前にもあったのだから、慣れて欲しい。


「慣れるかっ!」


 そんな文句を言いながら、仲良く準備して行く輝明。

 潤は護衛で置いておくみたいだ。

 そんな中、次に現れたのは男性護衛陣なわけだが、なんで女性陣より遅いのかな?


「知らねぇ。俺らは普通に着替えて来ただけだしな。まぁ、周辺警戒してからだが」


「そういや、俺らが着替える時にいなかったな」


「今更かよ……」


 なんて話をしていると、戦闘護衛侍女以外の侍女が妻達を連れてやって来た。

 いや、隠れてやって来たが正解か? ほとんど隠れて、なんか羽織ってるし。


「は、恥ずかしいんですよ」


「今更じゃね? ああ、他の男性陣の目が気になるなら、一時的に、物理で潰すけど?」


「「「やめろっ!!」」」


 潤、輝明、ウォルドが、ハモって断固拒否してきたが、だったら背を向けてろって話なんだが。

 他の護衛男性陣は、視界に入らないようにと全員が背を向けているし。

 まぁ、本当に人数は少ないから、役得感はあるだろうけど。

 それよりもだ、今の現状は萎える。

 おねだりしてみるか。


「皆の水着姿、しっかりと見たいなぁ。見れないと、悲しさの余り、海に魔法を連発しそう」


「蒼、それはおねだりじゃなくて、脅迫って言うのよ」


「おっと、失敗」


 しかし、効果はあった模様。

 いや、前世現代組の中でも、何も羽織ってない妻が二人いて、颯爽と前に出て来て、感想を聞いて来た。


「蒼夜、どうかしら?」


「ラフィさん、私もどうかな?」


 詩音と優華である。

 二人共ビキニで、詩音はパレオ付き。

 背筋も良い詩音は、どこぞのボーイッシュモデルにも見える。

 対する優華は、フリル付きのビキニで、可愛さをアピールしていた。


「二人とも良く似合ってる。詩音は白が映えるな。優華は可愛さ倍増だな」


「ふふん、流石ね、蒼夜」


「やったっ。作戦成功」


 喜ぶ二人に感化されたのか、一斉に羽織物を脱ぐ妻達。

 くっ、眩しいぜ!


「ど、どうですか?」


「ミリアはワンピースタイプか。でも、へそ出しタイプとか、地味に攻めたな。セクシーで良いぞ!」


「は、恥ずかしすぎます」


「ラフィ様、どうです?」


「シアもワンピースタイプだな。レースフリル付きがシアに合っていて可愛いぞ」


「わーいなのです」


 その後も、妻全員に感想を言って行くのだが、ドM妻三人衆はそこに正座な。


「何故なのですか!?」


「他の男性陣見ろよ。ガン見してんじゃねぇか」


「でも、用意したのはラフィだよね?」


「リアよ、ネタ水着とわかって着てるよな?」


「わかっていても、用意されてるのなら着るべきだと、ボクは思うんだ」


「ヴェルグは後でお仕置きするからな。つか、絶対にヴィオレを唆しただろう」


 三人が着ているのは、確かにワンピースタイプではある。

 しかし、リエルの悪ふざけで用意されたネタ水着――V字ハイレグ水着を。

 これで恥ずかしいと、羽織物を着ていたのだから、矛盾してるよな。

 その水着、誰かに見られて承認欲求を満たすか、興奮するかの二択しかないと思うんだが。

 後、地味に遊びにくい気もする……いや、リアだけは該当しなさそうだな。


「何気に失礼だよね。どうせ僕は、胸無しチビのお子様体型ですよーだっ」


「まぁ、否定はしないが、エロティックさでは一番かもしれん。ギャップ?」


「そ、そんな……」


「だとすると、二位はボクだね」


 絶望しているヴィオレと、勝ち誇ってるヴェルグがいるが、君ら三人で格付けするなら、ヴェルグが最下位だな。

 なんて言うか、普通? ヴィオレは戦艦級の胸があるから、セクシーさがな。


「う、嘘だぁ……」


「やりましたわっ。大逆転ですわ!」


「喜んでるとこ悪いんだけど、ほんっとうに、その水着で今日一日遊ぶんだな?」


 暫くは海で遊ぶから、明日以降の水着も必要なので、片付けるぞと遠回しに言うと、ヴィオレは着替えに戻っていった。

 残る二人は……そのままで良いんか。

 後で着替えたいとか言っても、破れたりしない限り替えは出さないけど、本当に良いんだな?

 答えは、力強い頷きで返って来た。

 そういやこいつら、モノホンのドМさんだったわ。

 なんてこともありながら、各々に遊んでいる。

 ある者はビーチチェアーでのんびりと、ある者は砂遊び、ある者は教えた娯楽のビーチバレーなどをしている。

 ……何故、誰も泳がんのだ? 海にすら入る気配が無いのだが?


「海は危険ですから」


「魔物もいる。海蛇シーサーペントが出る」


「その辺りは大丈夫」


 手を上げて、大丈夫な理由を示す。

 同時に、いくつもの海竜と水竜が海の中から顔を出した。

 前以て、危険は排除しているのだよ。

 縄張りの形成もしているし、危険生物は軒並み排除済みだ。

 万が一の細菌ウイルス対策も、コキュラトを筆頭に水竜を待機させて万全の態勢を敷いている。

 水竜は別名、薬竜だからな。

 つまりっ! 遊んでも危険は無いのだよ。


「潮の関係があるのでは?」


「海難救助竜たちがいるのに?」


「……そう言われると、問題無いですね」


 正妻様からのお許しが出た。

 それを知って飛び込むのは、桜花、優華、詩音、蛍、シア、5人の妻に加え、箒と澄沢も波打ち際へと走る。


「正妻様の言葉って重いよなぁ……」


「重いと言うより、責任でしょうか。万が一は考えないといけませんから」


「そっか。で? ミリアはどうするんだ?」


「一緒に遊びましょう、あなた」


 手を繋いで、波打ち際に来ると……ミリアが体勢を崩して尻餅をついた。

 うん、良いお尻です。

 あ、海が初めてな人にはあるあるだから気にしないように。

 うん、そうならない人もいるから、個人差だね。


「びっくりですよ」


「あはは、ごめんってば。でも、知らない事もあっただろう?」


「そうですね。世界って広いですね」


 その後は直ぐに慣れたミリアと、海の中に入って水しぶきを掛け合い、泳ぎの練習をしたりして、お昼時に。

 ナリア達序列侍女も、交代で遊び……ん? ナリアがいない。


「侍女長はいつも大変ですから、今日は一日、楽しんで頂いております。それと、イルリカも」


 視線を向けた侍女の後に視線を向けると、ウォルドとナリアがラブイチャしていた。

 うん、人目も憚らず、某魔王と某魔王の正妻様みたいに、ピンク空間が出来上がっていたわ。


「陛下も他人事では無いです。先程の正妃様との逢瀬は、それはもう炎が出る様で」


「あー、うん、そういや、シャストは未婚だったな。嫉妬の炎は出さない方向で頼むわ」


「承知しました。出来れば、明日は未婚序列侍女達とも逢瀬の時間を」


「そこはミリアの領分だから、そっちで聞いてくれ。俺は知らん」


「私達に怒られろと? 酷いです、陛下」


「あー、一緒に話は聞いてやるから、嘘泣きは止めろ。後な、それが限界ともわかってくれ」


 どうにか宥めて、全員で昼食を食べ……うん、飯中にミリアへ話を通すな。


「あなた、明日は、皆さんで遊びましょう」


「良いのか?」


「はい。ですが、露骨な誘惑をした侍女には、ナリア侍女長からの再教育をするという事で話が付いていますので」


「侍女たちにとって、最凶の罰だな。因みに明日は、何をするんだ?」


「ビーチバレー大会です。護衛男性も交えます」


「天竜や四神獣も?」


「はい。皆で大騒ぎしましょう! あなたは、私とペアですからね」


「うっす」


 ペアの拒否権は無いらしい。

 いやね、純粋に勝ちを狙いに行くなら、天竜かヴェルグ、リアにリュール、リジア辺りが正解なのよ。

 まぁ、頑張って勝ちを狙いに行くか。

 そして午後は、ビーチバレーの練習を行い、簡易別荘に戻って夕食を食べ、翌日のビーチバレー大会になる訳だが……俺とミリアペア、初戦敗退です。

 ちょっとクジ運が悪すぎた。

 初戦の相手は、ナリア&ウォルドペアだったのだ。

 単純な行動原理だと俺はウォルドより上だが、ナリアはミリアより上で、ペアとしての総合値だと、こちらが下なのだ。

 サポートは出来る限りしたが、地力が足りんかった。


「クジ運に見放されたなぁ」


「すみません、あなた」


「ミリアが悪い訳じゃ無いよ。その証拠に、リア&ヴェルグペアに、ナリア&ウォルドペアは負けただろ。どう考えても、クジ運が悪すぎた」


「ふふっ、慰めてくれてるんですか?」


「事実だよ。まぁ、なんだ、気にすんなって話」


「それじゃ、少し甘えちゃいます」


 ミリアを膝枕して、二人で勝負を見る。


「お飲み物は如何ですか?」


「きゃっ」


「うん、ナリアさんや、気配消して近付くな」


「お邪魔かと思いまして。非常に仲が良くて何よりです。お世継ぎも心配なさそうですね」


「今ここで、それを言うかね」


 ナリアに茶化されたりしながら、昼休憩を挟んで、勝敗の行方を敗退した妻達と観戦。

 後は……未婚序列と護衛男性の1人が、良い雰囲気だな。

 そんな中での優勝者は、まさかのディスト&リュミナペアである。

 この二竜、犬猿の仲ぽかったのだが、相性は悪くない――あ、やっぱ相性最悪だわ。


「ディスト、なんであの場面でトスしないんですかっ!」


「馬鹿みたいにアタックしかしないお前など、読まれているに決まってるだろうがっ! ブロックされて、失点間違いなしだわっ」


「あ、おつかれー」


 二竜の口喧嘩を聞きながら、準優勝者を出迎える。

 こちらは順当で、リア&ヴェルグペアだ。

 あの戦争でもペアを組んでいたのだから、息もピッタリで総合力も申し分ない。

 じゃあなぜ負けたのかって? ディストの悪知恵が敗因だな。

 フェイントが多く、何回か失点して、立て直しきれなくて負けたって感じだ。


「負けちゃったねー」


「ディストって、黒曜竜だけに、お腹ん中も真っ黒なんじゃないの。あのフェイントは上手いけど卑怯だっ」


「まぁまぁ。準優勝なんだから、凄いと思うぞ」


「それじゃ」

「頑張った妻にご褒美ちょうだい」


「……ドM系のご褒美は、今すぐには無理なんだが?」


「「普通に頭撫でるなり、抱きしめたりするだけで良いでしょっ!!」」


 二人のハモった声に、ミリア達はクスクスと笑っていたが、俺は気付いてしまった。

 怒らせる要因の言葉を聞いた二人が一瞬だけ、それもアリかもという目をしていた事に。

 ……今日の夜は気を付けないといけないかもしれない。

 こうして、二日目も日が沈み始めるころに簡易屋敷へ戻った。





「で? ヴェルグとリアは、なんで皆が寝静まった後に、俺を浜辺に呼び出したのかな?」


「わかんない?」


「……その格好で予測はつく」


「じゃ、ご褒美頂戴」


 その夜、二人に浜辺で搾り取られました。

 この二人、混ぜると危険だ。

 まぁ、夜の相性はヤバい位にバッチリなので、楽しんでるけどな。

 そして翌日の朝、何故かミリアにバレて、三人仲良く正座させられて、お説教くらいました。

 うん、日常だな!

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