第274話 ドバイクス家の一大事

「何を落ち込んでらっしゃるのですか?」


「いや、その、まぁ……」


 ナリアに叩き起こされ、いつも通りに執務をしながら、各国の予定や変更などを聞いて、風呂と夕食を終え、今日こそはっ――と、意気込んで来たら、もう既にミナが待っているという……。

 夫として嫁に待たせるのはダメなのでは?

 ミナの横に座ってから話すと、知らない慣習が出て来たよ。


「初夜の場合は、妻が先に来て夫を待つのが慣習ですよ」


「はい? ……それって、何処の貴族家でも?」


「そうですね……貴族というよりは、ほとんどの家庭で?」


「平民もかよ。……いや、ちょい待ち。なんで平民もやってる慣習を俺が知らないの?」


「女性側の慣習と言いますか、男性は知らない方が多いのではと。特に平民は」


「俺の知識って、平民並なのね」


 それなりに勉強して頑張っていた心に、グサッと何かが刺さった感覚が……ちょっと泣いて良いですかね?

 そんな心情を察したであろうミナが、胸元に頭を引き寄せて抱き、撫でてくれた。

 もう、色々と気持ち良いですわ。

 その流れからお互いにキスをして、優しく堪能し合ったのだが……ミナの胸は至高だった。

 そして、2回戦、3回戦と行い、今は枕を尻に敷きながら、後ろからミナを抱いて座っている。

 勿論、両手は胸揉んでますっ!


「んっ……あの、そんなに良いんですか?」


「いや、これは病みつきになって止まらんわ」


 ミナの胸はギリギリ手に収まるサイズなのだが、ハリ、ツヤ、弾力、揉み心地、その全てが、最高だった。


「その、今度は前から……」


「喜んでっ!」


 胸に顔を埋める。

 程よい弾力が顔に当たるも、包み込むような安心感。

 それを独り占めに出来る独占欲。

 天にも昇る気持ちとは、こういうのを言うのだろうか?

 ランキングをもし付けるなら、ダントツぶっちぎりで、ミナが今は一位である。


「ふふっ、赤ちゃんみたいです」


「ばぶぅって、言った方が良いか?」


 ちょっと冗談を言った後、続戦に突入。

 お互いに満足するまで抱き合って、最後はミナを抱き寄せて眠り……いつも通りナリアに叩き起こされて、いつも通りに過ごして、次はティアの日。

 ミナから慣習を聞いたので、少し余裕を持たせて寝室に向かうと、ちょっと膨れたティアがお待ちかねであった。

 うん、何故に?


「結構、待ちました」


「あれ? 慣習があるんじゃ?」


「ありますけど、知っていて、皆の所には早く向かってたんですよね?」


「んんっ?! いや、ミナから何も聞いてないのか?」


 ティアの横に座り、お互いに情報の擦り合わせを行うと、顔を覆って、ティアがベッドに横になった。

 若干、悶えながら。


「うぅ、恥ずかしいです」


 悶えるティア、かわゆす。

 そんなティアを捕まえて、頬に掛かった髪をそっと後ろへとやる。

 リリィと同じく、付き合いが長いので、幼少期のティアを思い出しながら、今のティアを見る。


「うん、あんま変わって無いな」


「酷いですっ」


「いや、悪い意味じゃなくて、良い意味だよ。昔から可愛かったけど、今は更に可愛くなってる」


「はぅっ」


「まぁ、綺麗にもなってるが、綺麗さはリリィの方が勝ちだな。可愛さなら、ティアが勝ちだけど」


「それは、喜んで良いんでしょうか」


 少しの沈黙、そしてお互いに笑い合って、キスをする。

 そしてそのまま、ティアを抱いて……やっぱ、ランシェス一族だと思わされることに。

 三回戦目に入る頃には、肉食系に変貌していたから。

 あれか、ランシェス王家の女性陣は、皆、肉食系女性なのか?!

 そう思わされるくらい、貪られました。

 満足するまで頑張って、抱き寄せて寝て、ナリアに叩き起こされを繰り返していた次の日、ドバイクス夫妻が訪問してきた。

 なんでも、シアに関する事らしい。

 普通は義父母であっても、謁見申請が必要なのだが、家族としての話らしく、数日前からノーバスが説得に回っていたらしい。

 ブラガスとナリアも納得せざるを得ない内容らしく、ノーバスの援護に回って、官僚達を説き伏せていたそうだ。

 まぁ、ナリアの場合は、多少の物理はあったらしいが、今は置いておこう。


「それでダズバイアお義父さん、今日はどうされたんですか?」


「いや、そのなぁ……」


「序列と初夜に関してですよ」


「お義母さん!?」


 珍しく、ド直球で本題をぶちまけて来たが、女性から言う話じゃなくねっ?!


「ああ、序列に不満があるという話では無いですよ。順番的に、今日か明日ぐらいかと思いまして、少々お話に」


「そ、そうですか、はは……」


 地味に冷や汗が止まらん。

 ドバイクス家当主嫁は、かなりの女傑だと、ランシェス貴族の間では有名な話である。

 そんなお義母さんが、初夜に関して話がある。

 ちょーっと、嫌な予感がするんですが?


「シアに関しては、最低でも学校卒業までは、手を出さないって話でしたよね?」


「それで間違っておりません。しかし、少々事情が変わりました」


「お義父さん?」


「前の話は破棄して貰って構わんという事だ」


「理由を聞きたいですね」


 話しを聞くと、貴族絡みのいやぁな話だった。

 でも、貴族的に仕方ないという話でもあるのだが、俺に持ってくる前にやることありますよねって話。


「センシティブで、公に出来ない話である事は理解しました。しかし、夫婦揃ってなりますかね?」


「そうでしょうね。ですから、誤解を解いておきます。娘を生んだ時、少々ありまして、二度と子が成せない体になっています。夫の方は、最近になっての話です」


「いやいや、その前に、お義父さんは側室や妾を取れば良かっただけでしょう?」


「ドバイクス家は、派閥関連の話があるからな。今はある程度好きに出来るが、妻を正妻から降ろす気は無いのだよ。それだけで理解してくれるか」


「奥方の実家に関連する問題ですか。そこが少しマシになったら、お義父さんが不全と。それで、後継ぎに関しての話ですか」


 簡単に言うと、子供を沢山、産ませてやって。

 その中で、ドバイクス家を継ぎたいって子をどうにかお願いします。

 シアの年齢? 子が成せる体になっているなら、何も問題にしません。

 シンビオーシス王に関する不名誉は、こちら側に問題があってお願いしたと見聞させます。

 家の存続の為、どうにかお願いできませんか? って話。


「うーん……よし。ナリア、ミリアとシアを呼んできてくれ」


「畏まりました」


 ドバイクス夫妻がちょーっとだけ、嫌な顔をしたが、奥が乱れるのは流石に許容できない。

 なので、妻代表と当事者含めて話を進める。

 こちらが出した最低条件がこれだ。

 妻達とシアの気持ちを無視はしない。

 その上で、認めるという話になってから、後の話に移るべきだろう。

 そう伝え終わると、ミリアとシアがやって来たので、事の経緯を簡単に説明する。


「お話は分かりましたが、継承権の問題もありますし」


「そこは後で考えても良いだろう。問題はシアの気持ちだと思う」


「そこは考慮してますよ、あなた。ですが、一つ気掛かりがあります」


「体への負担か」


 この世界の女性は、早熟傾向にある。

 元の世界と三カ月のズレがあるから、実際には13歳程度の身体になっている。

 でも、それでも、身体への負担は十分にある。

 だからこその13歳まではって話だったのだが。

 まぁ、それでも、元の世界換算で16歳だからな。

 ギリギリって話。

 さて、どうすっかなぁ。


「シアはどう考えてるんだ?」


「一つ、お父様に質問があるのです」


「なんだね?」


「ラフィ様に治療のお願いはしたのですか?」


「いや、それは、なぁ……」


「まぁ、頼みづらくはありますね」


 シアは少し首を傾げたが、ドバイクス夫妻の言い分は良くわかる。

 貴族社会の面倒な所が。


「その、ラフィ君はな、一国の主なわけでな」


「要らぬ厄介事が舞い込みかねないのですよ」


「何故なのです?」


 貴族社会に精通してない俺が、シアに説明……染まったなぁ。


「ランシェス貴族のままなら、お義父さんが矢面に立って守れるけど、一国の主だと難しいって話だよ」


「言い方は悪いですが、格下が格上を守るというのは、少し風聞が悪い訳です」


「ラフィ様なら、どうにでも出来そうなのです」


 うん、まぁ、出来るか出来ないかで言うなら、出来るよ。

 でもね、面倒さはあるんだよ。

 シンビオーシスだって、今も半分は脳筋プレイで従わせてるからね。

 そういった事を簡潔に話す。

 後、嫁に娘達をどうぞ合戦が再燃しかねない事も伝えておく。


「それは嫌なのです」


「俺も嫌。でも、シアのお願いなら断らないよ」


 ドバイクス夫妻は分を弁えて話している。

 義両親なのだから、身内の部分を引き立て、強引に治療を頼むこともできる。

 それにだ、不全の話は、貴族としては隠しておきたい話でもある。

 充分に攻撃材料になるし、お家乗っ取りの可能性も無くはないから。

 こちらに明かしたのは、信頼でもある。

 だから、シアが頼むのなら断らない。

 妻の願いだからな。

 ただ、治せるかどうかは不明だが。


「ラフィ様は、どっちが良いです?」


「……はい?」


「ラフィ様は、今すぐにシアを抱くのと、治療するのと、どっちが良いです?」


「…………」


 こ、……こたえられるかぁぁぁぁあああああっっ!!

 抱きたいなら、ロ◯コン確定案件で、社会的に死ぬ。

 今はって答えたら、シアが悲しんで、妻達から有罪喰らう。

 治療も似たようなものなので、微妙な感じ。

 どう答えるのが正解だっ?! リエル、ヘルプ!!


『知りませんよ』


 見捨てられた。

 正解……正解は何処にっ!


「シアちゃん、その質問はズルですよ」


「ミリアおねぇちゃん?」


「ラフィ様が抱きたくないわけないでしょう? でも、身体の事を考えたら迂闊には言えませんし、治療って言えば別の意味に捉えられてしまう可能性もありますよ」


「……はい。ラフィ様、困らせてごめんなさい」


 シアが謝ると同時に、ミリアが視線で訴えて来た。

 これで良いですよね、あなた――と。

 うん、ありがとうございますっ! でもね、ちょっと怖いんですけど?!


「さて、ドバイクス卿、一つよろしいでしょうか?」


「なんでしょうか、ミリアンヌ公王妃殿下」


「素直に言いに来たことは評価しますが、やり方は悪手です。もう少し、別の方法もあったと言わざるを得ません。そしてそれは、奥様も同じです」


「「申し訳ございません」」


「ですが、シアを利用しなかったという点は非常に評価しましょう。では、少し交渉に入りましょうか」


「交渉――で、ございますか?」


「ええ。公王陛下も、怒ってらっしゃらないですし、助けたいとも思っていますので、交渉です。体面はお互いに保てますから」


 ミリアさん、怖いっす。

 とりあえず、シアを少し甘やかしながら、交渉内容を確認していく。


「まず、シアちゃんについてですが、全て本人の意思に任せる――で、どうでしょうか?」


「それは――」

「こちらに依存有りません」

「おまっ――」

「こちらから振った話でしょう? 今更です」


「ではそういう事で。次に治療に関してですが……あなた、お願いします」


「お、おう。……ごほん、まず初めに、治療できるかは、調べてみないと分からないと言っておきます」


「理由は?」


「肉体面なのか、精神面なのか。それによって治療方法が変わったり、無かったりしますから」


「分かりました」


「じゃ、調べますね。【鑑定】」


 鑑定結果、異状なし。

 呪いなどの痕跡も無し。

 魔道具や薬による悪い副次効果、無し。

 こうなると、精神面なんだが、どうやって調べ――あ、鑑定結果出るのね。

 結果は、精神面も問題無し、と。

 ……原因不明は無理ぽ。


「原因不明です」


「そんな……」


「もう一度、お願いできますか?」


「良いですが、結果は変わりません……いや、待てよ?」


 少し考えを変えてみる。

 確かアホ潤が前に言ってた事があったな。

 で、箒たち女性陣から総スカン食らってた内容が。

 それを念頭に、もう一度、鑑定。

 あ、やっぱそっちか。


「あー、そのですねぇ……」


「何か分かったのか!?」


「年齢的なものですね」


「「……は?」」


 ハトが豆鉄砲喰らったかのような顔をしているドバイクス夫妻だが、事実なのだからしょうがない。


「まだ30過ぎなんだがなぁ……」


「多少の心労はありますけど、年齢で間違いないですよ。友達が言ってたんですが、男は年齢を重ねるごとに性欲は減少していき、逆に女性は増すとの事です。真実かどうかは知りませんが、実際にあるのもまた事実です」


「元から性欲が薄いのは認めるが、早くないかね?」


「そうは言われても、自分にはなんとも……。あ、薬ですが、精力剤ですね」


「飲んでも効かなかったんだが、その場合は?」


「強力なの、作って渡しましょうか?」


 結局、精力剤は作らなかった。

 実はお義母さんの方が、お茶会で孫自慢されていたらしく、自分も早く孫が見たいとの事。

 お義父さんは複雑な顔をしていたよ。

 後継ぎに関しては、シアとの子が継ぎたいと言ったらって話で終わらせた。

 ダメなら、縁戚から養子でお願いしますとも言っておいたわ。

 そして夜、今日はシアの日なんだが……。


「お母様からです」


「まさかの手紙作戦まで実行ですかい。で、シアはどうしたんだ?」


「おねぇちゃんたちがしている事には興味ありです。子供は沢山が良いです!」


 こうして、甘んじてロ◯コンのそしりを受けることにした。

 ただ、シアには少し早かった様で、そこまで沢山はしなっかたと言っておく。

 それともう一つ、シアの胸はリアよりも大きかったわ。

 成長が楽しみではある。

 そして朝、ナリアが叩き起こしに来て、蔑んだ目で見られたわ。

 もうね、ないわーって感じな目だったよ。

 俺は妻が望んだからして――はい、嘘です。

 自分、ちょっとロ◯コンでした。

 認めたら、蔑んだ目が無くなったよ。

 そして執務中に八木が来て、一言。


「ある意味、勇者っすね。元の世界だと、お縄確定っすね」


 言われんでもわかってるわいっ!

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