第273話 プレイボールッ!!

 本日も昼前にナリアから叩き起こされ、ミリアの時と似たような感じで風呂と昼食を済ませて執務へ。

 書類決裁をしながら、来賓たちに関する本日の行動予定内容を聞かされる。


「披露宴での顔見せは出来ていますが、あくまで顔見せですからね。本日は本格的なご挨拶となるでしょう」


「上級貴族は、だろ?」


「それはなんとも。各国の意図までは図りかねますので」


「白々しい。で、伝え忘れがあるって話だが、どれについてだ?」


「一年後の話に関してです」


 同盟盟主だから、各国でも披露宴をって話か。

 何を伝え忘れたのかわからんけど、結構深刻そうだな。

 かなり重要な話か?


「各国での披露宴に関しての旅程や参加する奥方に関しての話です」


「……ん? 今更?」


「重要な事を伝え忘れていまして」


 ブラガスの話を聞くと、確かに重要だった。

 いや、最重要であり、伝え忘れんなよ! って話でもあり、なんで自分も気付かなかったんだって話。


「ご懐妊された場合について、詰めるのを忘れていました」


「いや、俺も気付けって話だな。それで、どうするんだ?」


「まぁ、どちらにしても中止は無いんですが……」


「ないんかいっ!」


 この後、ブラガスと話し合って決めたのだが、誰かが妊娠していた場合、色々な条件付きをする事になった。

 勿論だが、ゲートも解禁である。

 多少の経済より、公家の方がって話だな。

 そして決めた内容だが、悪阻が酷い妻達に関しては、事情を話して参加見送り。

 ブラガスは多少渋ったが、ごり押した。

 健康面で徹底的に論破したからな。

 次に妊娠中期あたりの場合に関して。

 お腹が目立つならば、参加は見送り。

 健康面や慣習もあるが、一番の理由は暗殺者や毒に関してが理由。

 過去にもある話らしく、安全面は取れるだけ取った方が良いって話だ。

 旅程に関しては、竜便でいくつかの領地はって話にもなったが、夫が妊娠中の妻を長く放置っておかしくね? って、執拗に話をして、状況に応じてという形で、一旦は決着。

 その後は細かい話と、明日の予定などを聞いて、公務を終える。

 鍛錬は欠かさずにしたいと言ってあるから、毎日最低一時間は、兵達をしごいているぞ。

 まぁ、ゼロとツクヨが指南役になってるから、時間が来た頃には全員、屍になりかけてるけどな。

 余談だが、訓練当初は、本当にゾンビみたい動きになってたからなぁ。

 だから訓練は、兵士達と軽く手合わせして、ツクヨとゼロがメインって感じだ。

 今日も良い汗かいたわ。

 そして風呂、夕食と済ませて、寝室へ行くと……やっぱり先に来てた。

 今日はラナの日であるが、なんかちょっとだけ不安もある。


「失礼な事、考えてます」


「自分の胸に聞いてみ」


 そっと胸に手を置いて考えるラナだが、首を傾げてた。

 うん、そういう所が不安なんだよ。


「それよりもですね、早く座って下さい」


「わかった、座るから、飛び掛かろうとする姿勢は止めて」


 横に座ると、三つ指ついて正座に変えるラナ。


「不束者ですが、これからも幾久しく」


 つられて正座して、三つ指ついて返す。


「幸せって胸張って言える様にします」


 お互いに微笑んで……押し倒されました。

 反応する気が無かったわけだが、スキル使ってまで押し倒しに来られるとは思わなんだ。


「逃がしません」


「ラナさんラナさん、目が肉食獣のそれなんですけど?」


「早く子供が欲しいんです。そして、親子で魔獣狩りにっ」


「こんのっ、戦闘狂さんめが!」


 クルっと反転させて、ラナを下にする。

 一度体勢を立て直さないと――なんて考える暇もなく、首後ろに手を絡まされて、ムードも何もないキス。

 しかもですね、手順ガン無視の大人のキスです。


「ん、んむぅ、ぴちゃ、んんぅっ」


「んっ! んんっ! ぷはっ」


「ぺろっ! その気になってくれましたか?」


「いきなり過ぎるわっ! ……だが、臨戦体制に移行したことは認めよう」


 初めから肉食系全開できたラナの姿は、それを全く見せない洋装だ。

 白のシルクキャミソールに、下着だけ……あれ? 肉食系全開?

 そんな事を考えた隙に、また唇を奪われた。

 貪り尽くされた後、ラナの言葉に総ツッコミ入れたわ。


「夜の帝王に、私はなりますっ」


「ならんで良いわっ! そもそも、夜の帝王ってなんじゃい!」


「私のテクで、旦那様を骨抜きにします!」


「初めてやろがい! ……つうか、そこまで言ったんだから、覚悟は出来てるんだよね?」


「え? ……そのぅ、初めは優しくお願いします」


「……却下で」


 最後の言葉を皮切りに、それは堪能しましたとも。

 ミリア達の時よりは、多少は荒々しくしたけど、優しさも忘れてないから。

 まぁ、その後は終始、攻められたけど。

 うちの妻、肉食系多過ぎじゃない疑惑が、密かに浮上した瞬間でもあった。

 勿論、この二日と同じ時間までしていたわけだが、そんな事はお構いなしに、ナリアから叩き起こされた。

 いつもより早めの時間に。


「陛下、本日は早めの公務です」


「うん、わかった。でもな……布団を引っぺがすなと何度言えば気が済むんだっ!」


 初夜から変わらぬ起こし方をされて、二人で風呂場に向かい、遅めの朝食を食べて、城門の方へと向かう。

 腕を組んで向かってるわけだが、ラナの胸は普通サイズだ。

 胸より、腕の密着度の方が上――睨まれたから、この考えは放棄する。


「あなた、おはようございます」


「うん、おはよう。それで、誰が一緒になるんだ?」


「今回は公務なので、序列順ですね」


「了解」


 先に馬車へ乗り込み、ミリア達をエスコートして……拡張馬車じゃない?


「拡張馬車は?」


「今回は公務ですから」


 使用禁止らしい。

 全員が納得済みらしいので、これ以上は何も言わない。

 言ったら、総口撃論破されて負けるから。

 貴族関連では完全に分が悪いので、黙って従うのみよ。

 そんな公族一行の馬車は第一防壁門を抜けて、第二防壁門内に簡易設置された球場へ到着する。

 前世の野球を知ってる人間なら、絶対にこう言うと思う。


 ――草野球場やん――


 敢えて否定はしない。

 だって、建設が間に合わなかったんだから。

 それでも、貴賓席と一般席の区分けはされてるし、草野球レベルの設備にはなってる。

 元々、練習場として建設してたから、少しの改良だけで済んだのだよ。

 まぁ、その改良費の金額は聞いて欲しくないがな。

 予定外の出費ではあったが、お披露目とこれからの周知に対する先行投資と割り切ろう。

 そんな草野球場に、続々と貴賓席組がやって来て、決められた場所へと座っていく。

 細かく言えば、貴賓席、招待席、貴族席、一般席の四つに分かれていて、貴賓席の右が貴族席になり、左が政商や大店の招待席となっている。

 尚、この形にしたのはブラガスの提案だ。


『為政者より先に貴族が商談は不味いでしょう。ならば、貴族は後だと、敢えて席順で告知します』


『不満が出ると思うんだが?』


『慣習で押し通せますから。それと柵でも』


『聞きたくない言葉が出たな……』


 なんてやり取りをしていたりもする。

 席順もブラガスが決めており、各自挨拶を終えて、席に着いて行く。

 次に貴族がこちらに一礼してから座り、その次に招待枠の商人達も一礼してから座り、最後に一般入場客。

 満員御礼である。


「陛下、開会の挨拶を」


「わかった」


 ナリアに言われて立ち上がり、風魔法を応用して声を響かせる。


「みな、今日は良く集まってくれた。今日は我が考案した新しき娯楽であり、職業でもある。人種は問わない。必要なのは才能と努力、そして礼節である。正々堂々と競い、己が名誉を高めて欲しい。そして、その名誉を高めた者を見つけ、育て、経営する者達にも、最大の賛辞を送ってやってくれ」


 最後に締め括ると、大歓声が沸き起こった。

 うん、ちょっとうるさい。


「人気ではないか」


「そうですかね?」


「王族に人気が無ければ、ここまで人は集まらんし、歓声もおきぬ。もう少し、学ぶべきだな」


「わかりました、テオブラム王」


 二人で話していると、選手入場と運営者の紹介が始まっていた。

 先に話をして育成に励んでいた四大諸侯達である。

 南部辺境伯のチーム編成は、人間族を主体に亜人族数名。

 東部辺境伯のチーム編成も似たような感じだが、人族半数、亜人と妖精族数名。

 西部辺境伯のチーム編成は、人族オンリー。

 北部辺境伯のチーム編成は、人族、亜人族、妖精族、獣人族、ドワーフに、この大陸では非常に個体数が少ない小人ハーフリング族の混成チーム。

 良く、スカウトできたものだと思うわ。


「では次に、観客の皆様へルール説明をしていきます」


 司会が侵攻していくルール説明だが、いくつか省いているのがある。

 大前提は、前世のプロ野球のルールを主軸としているが、審判も育成中なので、いくつかの魔道具を開発して、ピッチャーに関する違反ルールの大部分を撤廃している。

 ボークとかわからんし、何秒ルールとか知らんし、二段投法とか何っ?! って感じになったから。

 育成中の審判がな。

 犠牲フライに関しても、そこまで見るのは無理っ! て嘆願が来てたりしてたので、本来よりも緩い感じにしてある。

 ファールに関しては従来通り。

 カウントも同じ。

 後は前世で有名なヘッドスライディング神様である某レッドスターさんみたいにならないように、首周りの防御は疎かにしないようにと言い聞かせてあるくらいかな?

 と言う様な感じの説明が終わり、選手と辺境伯が一礼して、選手は一度退場。

 次に箱を持った運営委員の一人が登場して、辺境伯がくじを引いて、エキシビションマッチの対戦相手が決定。

 八百長したら、徹底的に無体な扱いにすると言い聞かせてあるので、全身全霊で競い合ってくれるだろう。

 そして最後に、大事な一言を司会者が告げて、試合開始の準備に移る。


「本来は攻守交替で9回行いますが、今回はお披露目が目的であります。なので、時間制限及び、5回までとさせていただきます」


 観客席からブーイングの嵐。

 つうか、貴族や商人は百歩譲って、王族までブーイングするなや。


「新しい娯楽なのに、最後まで無いってのは、どうかって話だよ」


「ジャバの言いたい事も分かるけどな、時間的な関係でどうしようもないんだよ。今、昼時で、本来なら昼食の時間だぞ」


「……観客は喰いながら見れるが、選手たちは違うって事か」


「それもあるけど、本来は夕方位から一試合を目安にしてるからな。その方が、仕事を気にしなくて良いだろうし」


「……お前、本気で稼ぎに来てんな?」


「娯楽で儲けることに、罪悪感は無いからな」


 なんて話をしていると、選手たちが準備を始めた。

 因みにだが、身体強化魔法の使用は有りにしてある。

 素の身体能力だけだと、明らかに種族に偏りが出るし、同一にしたら面白みがないからな。

 勘違いしている人が多いんだが、身体強化魔法は、自身の最大値の能力を引き出すうえで壊れないようにする魔法だ。

 なので、最大値次第では面白い展開になると踏んだために、使用許可をしている。

 それと、エキシビションマッチのみ、各チームに一体だけ天竜の貸し出しをしている。

 守護竜でもあるので、人気も出るだろうと見越して。

 選ばれなかった天竜三体はって? 警護ついでに凹んでる。


「エキシビションマッチ第一試合はぁー、東部対北部だぁ!!」


 アップも終わり、試合開始みたいだ。

 今回だけ、先攻後攻はくじ引き。

 本格的になったら、前世のプロ野球方式を取り込む形にもしてらう。

 そんな今回限りの先行は北部、後攻が東部となった。

 北部にはバフラムが、東部にはブラストが選ばれている。


「東部は意外だよなぁ」


「ぬ? そうなのか?」


「ええ。ブラストに野球させてみたんですけどね、捕球は超下手で。一撃というよりは繋ぎと守備の編成に見えたので、意外だな、と」


「北部に関しては順当なのか?」


「北部はバランスが良いですね。ただ、攻撃力を高めたいからバフラムなのでしょう。当たれば必ずホームランですから」


「ふむ……ん? 当たれば、とな?」


「バフラムは選球眼が最悪なので。何でも振りますが、当たれば、ねぇ」


「そういうことか」


 皇帝と話を終えて、試合を観戦する。

 コールド試合のルールもあるので、どうなるか見物だ。

 そんな試合だが、終始、東部優勢だった。

 思った通り、守りが異常に硬い。

 ただ、ブラストの出場を見送っているんだよな。

 対する北部は、初っ端からバフラム参戦。

 但し、全てフルスイングで連続三振中。

 しかし、北部もバランスが良いチームなので、失点は無し。

 両者0対0のまま、5回先攻北部。

 ここに来て、バフラムのまぐれ当たりが炸裂して、1点をもぎ取った。

 但し、その1点で裏に交代。

 ホームランを打ったバフラムは大歓声に応えながら守備についた。


「こりゃ、北部で決まりか?」


「どうですかね。ブラストはまだ温存されてますし」


「皇王、賭けるか?」


「良いねぇ、傭兵王。俺は北部にドリンクスライムの酒を一瓶だ」


「じゃ、俺は東部に同じもんだな」


 勝手に賭けやんなって言いたいが、本人達は遊びの延長線上らしいので、大目に見る。

 野球で賭博は禁止しているからな。

 だから次やったら、マジで〆るとだけ言っといた。

 そんな東部だが、1アウト、2塁の大チャンス。

 次はバントで、運よく内野安打。

 しかし次は三振で終わり、次のバッターがまさかのである。


「選手交代、代打ブラスト」


 観客席、大歓声の大合唱。

 ブラストって、こんなに人気あったのか。


「ブラストって、指示が的確で、現場の方に重宝されていると聞いてますよ、あなた」


「知らんかった」


《かっとばせーっ、ブッラスト!》


「俺より人気、あるんじゃね?」


 嫉妬はしないけど、もう少し表に出た方が良いかなぁ――なんて考えていると、良い快音が鳴って、こちらにボールが一直線に。

 正に――届け、我が忠誠、主の元迄! って感じ。

 まぁ、障壁に阻まれるけど。

 結果、サヨナラ3ランホームランで、東部の勝利となった。

 お互い集まって一礼して、固く握手していく。

 その姿に、またも大歓声。

 あ、これ、多分ビッグウェーブ来るわ。

 なんてことを感じながら、次は西部対南部で、西部先攻、南部後攻だったわけなのだが……。


「まさかのコールド……」


「西部0点、南部10点ですか」


「びっくりだよねぇ。教皇様は西部が勝つと思ってたみたいだし」


「ゼルクト王もだろう? そう言えば、グラフィエル君はどうだったのかな?」


「勝ち負けはともかく、コールド試合は予想外でした」


 因みに、コールドになった理由の一つはリュミナとアルバだったりする。

 西部はリュミナを引き入れ、紅一点を狙ったのだが、野球に関してもポンコツだった。

 対するアルバは年の功とも言うべきだろうか、瞬時に色々と把握して、敢えてキャッチャーを選んでいる。

 2アウト1,2類の場面で、リュミナが何度も盗塁の気配を見せて、見事に刺されて1回無得点。

 その後、リュミナがピッチャーだったのだが、制球力ポンコツの力任せ投球なので、三連続フォアボールからのアルバ満塁ホームラン。

 リュミナ、速攻でクビになるも、勢い止まらずって感じだ。


「リュミナのポンコツ具合がえげつなかった」


「女性でも、活躍されてる方はいましたからねぇ」


 ヴァルケノズさんの言う通りで、西部以外では女性も雇用されていた。

 そして、大活躍していた。

 歓声もあったので、前世で言う野球アイドル的な存在になっている。

 ……グッズ化すれば売れるんじゃね?


「あ・な・た」


「グッズ化すれば売れるとか、考えてませんよ!」


「そっちでしたか。わたしはてっきり――」


「頼むから、そっち方面で考えないでくれ。本気で言ってないと分かっていても、心臓に悪い」


「クスクス、すみません」


 何はともあれ。お披露目は無事終了。

 時間は……2~3時間くらいかな? 夕方開催も出来なくはないな。

 さて、そんな中、興奮してる皇王と傭兵王、何か考え込む皇帝と教皇、そして、にこやかぁに笑顔を浮かべながら、こめかみ辺りに怒りマークの見えるテオブラム王。

 いや、俺、何も悪いことしてないよね?


「他国を巻き込もうとするときは、一言相談せんかっ!!」


「あっ、そっちっすか」


 最後にテオブラム王の雷を聞いて、お開きとなる――わけもなく、貴族や商人達から詰め寄られた。


「言いたい事はそれぞれあるでしょうが、まずは各国の決定を待ちましょう。国主体でするならば、色々と調整が入るでしょうし、そうでなければ領地内のみでやれば良い訳ですし」


 この言葉で、どうにか引き下がってくれた。

 尚、これを予見していたリーゼの入れ知恵でもある。

 ついでにもう一つ言っておくと、我が国では娯楽産業としてやっていくので、旅行ついでに見るとかもありですよ――とも付け加えておいた。

 これもリーゼの入れ知恵である。

 そんな手助けをしてくれたリーゼと今、寝室で談笑中だ。


「くすくす、ほんと、言った通りになりましたね」


「いや、予言かと思うほど当たって怖かったよ」


「商人達は、目がギラついてましたしねぇ」


「貴族も似たようなもんだよなぁ。あ、四大諸侯に関しては、あれで本当に良かったのか?」


「今回は手弁当ですから。金銭の方が有難い筈ですよ」


 野球お披露目の事を話してはいるが、既に三回戦目は終了済みである。

 未だ繋がったままのリーゼが胸板に自身の胸を押し付ける感じで身体を預けている状態だ。

 お互い顔も近く、吐息が当たる距離で話している。

 リーゼは高身長でモデル体型でありながらも、出る所は出て引っ込む所は引っ込んでいるのに加え、大戦艦ミリアと双璧を成す大戦艦級の胸を持つ。

 違う点を挙げるなら、ミリアは張りがあって弾力がある胸で、リーゼは張りはあり弾力もあるがスライム系胸な所だろうか。

 まぁ、どっちにしても、二大巨頭の誘惑と気持ち良さには勝てんけど。


「胸、好きですよねぇ」


「ななななな、なんのことでせうか?!」


「みーんな、気付いてますよ。ラフィは女性の胸が好きだって。それも、大小問わずに」


「は、はずかしい……」


「みなさん待ちわびてますよ、どんな反応するかなって」


「そしてそれを、お茶会で報告し合う訳だ」


「くすくす、どうでしょうか」


 悪戯っぽく笑うリーゼに、月の明かりが差し込んで照らす。

 淫靡――この一言に尽きる。

 普段は高貴な嫁であるが、夜は淫靡なカワイイ嫁。

 素晴らしき嫁である。


「あんっ。またですか?」


「魅力的なリーゼが悪い」


「それじゃあ、悪い私が、悪さをした棒にお仕置きで良いですね?」


「いや、悪いリーゼに、正義の棒でお仕置きじゃないか?」


 こうして、夜は更けて行くのだが、身体強化とかできないリーゼに、どうしてここまで付き合えるのか謎だった。

 体力も一番無い筈なのに。

 やはり、夜の時間だからだろうか?

 ……次のリーゼの日に、聞いてみるのは無粋なのかね。

 そして翌日も、ナリアの起こし方はやっぱり変わらなかったと言っておく。

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