第272話 色に溺れても公務は来るっ!

「お背中流しますね」


 ナリアに叩き起こされ、ミリアと二人きりで、後宮内の風呂――混浴場で少しゆったりとする。


『時間に余裕はあるので、身だしなみはしっかりとお願い致します』


 風呂に向かう直後に、ナリアから指示が出たので、のんびりってわけだ。

 もし、時間超過になったら、またナリアが来るだろうし。

 ……超過には気を付けながらゆったりしよう。


「あなた?」


「気にしないで良いよ。時間を考えてただけだから」


「公務もありますしね」


「結婚後に即公務とか、勘弁して欲しいよな」


 クスクスと笑うミリアと一緒に、ゆったりしてから風呂を出て……何故かメイド集団が待ち構えていた。

 勿論、ナリアが引き連れて。


「ミリアンヌ公王妃様をお願いします。私は、公王陛下を担当します」


 ナリアの指示の元、サッ! と動く、メイド集団。

 訓練され過ぎじゃね?


「出来て半人前です」


「あ、そうですか……。後、なんで思ってることが分かる」


「顔に出ておりますので」


 軽いやり取りをしながら、頭から足指の間までしっかり拭かれ、魔法で髪から体、足指の間と先まで綺麗に乾かされ、最後に手早く着替えさせられる。

 この間、僅か5分。

 ちょっと長めのカップ麺かよっ! ってツッコミてぇ。

 しかし、これだけ手早く済ませたって事は、時間超過してる?


「出来て当たり前ですが? 陛下は男性ですから、尚更、出来て当たり前の早さです」


「さいですか。んで、ミリアの方は?」


「もう間もなく。昼食後、公務を――と、ブラガス宰相から言伝ことづかっています」


「わかった。後でブラガスは少し弄る」


 必要な会話を終わらせ、ミリアの支度を少し待って、食堂に――。


「後宮の食卓でお願い致します」


「「あ、はい」」


 ナリアからの指示。

 ミリアと二人、間の抜けた返事をして向かう。

 あれ? みんないないな。


「残る奥方様は、陛下の代わりにお仕事を」


「……怒ってる?」


「いえ。ご自分の日が来たら、同じことになる可能性があるからと、率先して行かれました」


「皆さんらしいですね」


 ミリアが締め括り、昼食が運ばれてきて、軽く雑談しながら食べる。

 そういや、後宮にわざわざ運んできたのだろうか?


「ラギリア様のお弟子様には、女性の方もおられますので」


「あ、なるほど。後宮専属って事か。……ラギリア、怒ってないか?」


「本人が決めたのならば――と、仰っていたと聞いています。それと、お弟子様はまだたくさんおられるので、早く一人前にしてやりたいとも」


「ラギウスは、真の料理人だな」


 ナリアと会話して直ぐに食べ終わらせ、公務へと向かう。

 ミリアも手伝ってくれるらしく、腕を組みながら、後宮から城へと入り、執務室へ向かう訳だが、腕に当たる感触が素晴らしい。


「あなた、昨日したばかりですのに」


「それとこれとは話が別だと思うんだ。これはこれで至福なんだよ」


「もうっ」


 しかしっ、至福の時間は長く続かない。

 執務室に到着して入ると、ミリアは別席へと座る。

 腕が寂しい。


「何を馬鹿なこと言ってるんですか、陛下」


「何も言ってないが?」


「顔に出ています」


「ブラガス、お前もか」


 いつも通りのやり取りをブラガスと済ませて、公務開始だ。

 ただ、ブラガスも配慮したのだろうか、仕事量が少ない。

 いつもこれなら楽なのに。


「調整はしましたが、効率も考えないと、陛下が過労死しかねませんので」


「うん、感謝するわ。まだ死にたくねぇし」


「文官達にも、今のお言葉を伝えておきましょう。それで、今日の分ですが、早急な書類は3つです」


 ブラガスから渡された書類に目を通す。

 一つ目は、挙式、パレード、披露宴に掛かった、最終金額と税収の算定に関して。

 少し費用は上がっているが、想定内の金額なので決裁。

 税収算出に関しては、想定よりも大幅に上回っている。


「大分、当初の見立てと違うんだけど」


「自分もそう思っています。嬉しい誤算ですな」


「で? なんでこんなに違うんだ?」


「想定よりも、人と商人が集まったからですな」


 ブラガスや文官達が想定していた、総合人数よりも何倍も上だったらしい。

 当然だが、貴族達も金を落としまくってるそうだ。


「まぁ、大体は酒ですけど」


「ドリンクスライムに、予め作って貰ってた分か」


「即日完売で、追加注文が来ました。どうされます?」


「スライム達が辛くならない程度になら、許可で」


「かしこまりました」


 ブラガスの傍に控えていた文官が部屋を出て伝えに行くが、機密情報だらけの部屋に入れて大丈夫なのか?


「彼は借金奴隷です。商売に失敗した商人の息子なので、教育はしっかりされていたのを確認して、拾い上げました」


「……わざとだな?」


「はい。彼も条件を呑みましたので」


 ブラガスに付いて入れる文官の彼は、奴隷解放を放棄した――いや、させたが正解か。

 ただ、世間の風聞があるから、借金奴隷用の首輪を外して、強力な誓約魔法で縛ったのだろう。

 確か、闇魔法に奴隷紋魔法があったはずだ。

 しかし、良く条件を呑んだな。


「どうやった?」


「弟と妹も一緒に――と言えば、分かって頂けるでしょうか?」


「……恫喝はしてないんだな?」


「彼からの条件です。勿論、普通の文官としての給与は支払うという約束もしています」


「わかった。但し、これっきりにしてくれ」


 釘を刺すのは忘れない。

 尚、弟の方も文官らしく、ブラガスに付いて執務室に入れる文官は、この二人だけらしい。

 休みの関係もあるから、どうしても二人は必要と言われて、渋々だが、事後報告に許可を出した。

 妹の方はまだ学校に行く年齢らしく、保護子供達と同じ扱いにするとの事。

 その辺りは上手くやってるらしいので、何も言わないでおこう。


「んで次が、あの潰した貴族についてか。……ああ、その三人はそこの奴隷でもあった訳か」


「察して頂けて何よりです」


「他にも居たんだろう?」


 詳しく聞くと、犯罪奴隷、借金奴隷、そして、違法とされる誘拐奴隷がおり、人族は勿論として他には、妖精族、亜人族、獣人族も含まれていたそうだ。

 現在は犯罪歴を調べている途中だそうで、何も無ければ、誘拐奴隷は解放する方向で纏まっている――か。

 レラフォード代表、キレてねぇかな?


「ご報告は上げました。犯罪歴が無ければ、即時解放とも伝えてあります」


「納得したんだ」


「流石に、犯罪者を無罪放免には――と話した所、渋々ですが応じて頂けました」


「他は?」


「同じです」


「あのクソ貴族は?」


「当主は悪事に手を染めすぎており、流石に死罪は免れません。嫡男も同様に関与していたので同じです」


「伴侶の方は?」


「何か悪事をしている、奴隷商法をしている事は知っていましたが、違法行為までは知らなかったようなので、ご実家に帰られるか、教会かの二択ですね」


「そこは選択肢があるんだな」


「まぁ、ほぼ教会でしょうが」


「実家は引き取りたくないってか? 情がねぇなぁ」


「その伴侶の実家も、あの貴族リストですから」


「本人が拒否ってるのもある訳か」


 あの貴族リストとは、旧ダグレスト王国時代に、やりたい放題していた中央に近い領主たちの事だ。

 直ぐには厳しくても、善政寄りに変えるならば要経過観察。

 ある程度の時期を見て、ダメなら潰す。

 但し、その数は100家以上あるため、一気に潰せないのが現状だ。

 こちらの事情込みでの時期と経過観察でもある。

 しかし、1家は憂いなく潰したから、多少の脅しにはなっただろう。


「そして最後が、二日後のやつか」


「皆様、1週間前後は滞在されるらしいので」


「お披露目には丁度良いな。それで、時間に関しての取り決めがまだってことか」


 お披露目、野球である。

 流石に、球場は未完成なので、草野球っぽい感じにはなる。

 警備に関しても段取りは済んでる。

 観客に関しては、政商関連と各国からの招待客と一部貴族には優先席を用意してある。

 残りは前売り券だ。

 飛ぶように売れたらしく、1日で完売したと記載があるな。


「皆、娯楽に飢えてんなぁ」


「その娯楽で儲けようとしているのは、陛下ですけどね」


「否定はしないよ」


 無くても生きていける世界だからな。

 だから、趣向品や娯楽で利益を出すことに、罪悪感は一切無い。

 ただ一つあるならば、全員が入場は無理って所だな。


「そこは割り切るしかないでしょう」


「分かっちゃいるんだけどな」


「何か案がおありでしたら、相談して下さい」


 とりあえず、緊急案件の決裁を済ませ、今後の話に移る。

 ミリア達にも関わる話なので、公王妃であるミリアは、今から話に参加だ。

 あ、書類見ながら話してるぞ。

 書類の方は、リエルに任せてるけど。


「各国での披露宴、ねぇ」


「あなたは、あまり乗り気じゃありませんよね」


「まぁなぁ。でも、やらないとダメなんだろ?」


「ダメですね。まぁ普通は、何処もしませんけど」


「じゃあ、なんで俺らだけ?」


「同盟の盟主だからですよ、あなた」


 同盟関係は良好だと、各国にアピールするのが目的だそう。

 ただ一つ、問題もある。


「一年後って、どうなんだ?」


「各国の王達は、今、この国にいますからね。帰国を考えたら――」


「無理ですよね。……ブラガス宰相、陛下の旅程はどうされるのですか?」


「公王妃様のご懸念はごもっともです。それもあって、一年後となります」


「竜便もゲートも禁止ってか」


 流石に、各国や自国の領地で金を落とせって事らしい。

 飛空船便は既に運航を開始しているが、物流に主観を置いているらしく、あまり人を乗せてないそうだ。

 王族が動けば、それに伴う護衛も多いし、侍女達も多くなる。

 それに加えて、衣装や食料と考えたら、飛空船一隻を占有してしまう可能性もある。

 中型なら、間違いなく占有するだろう。

 大型飛空船は数に限りがある上に、一隻はランシェスが帝国と中型と小型を何台か知らないけど交換をしている。

 どうやっても数が足りないので、陸路になる――と。


「もう一つ、冒険者達の兼ね合いもありますから」


「領域から、弱い魔物が出てくるようになったからなぁ」


「あなた、そんな他人事みたいに」


 ミリアに窘められるが、必要不可欠な事だったので、どうしようもない。

 だから今では、護衛依頼が増えまくっている。

 だが、悪い事ばかりでもない。

 魔物たちが領域から出るようになると、賊関連は減少傾向になった。

 他人を襲ってる場合ではないのだろう。

 賊=罪人確定なので、助けも呼べないし、街などに逃げ込んだり、助けも呼べない。

 自衛しかないので、手詰まりとも言えるだろう。

 ただ、人殺しをしていない賊は、命の方が大事なのか、自首してきているとの報告も上がっている。

 但し、問題が無いわけでもない。

 義賊に関しては、一部の民達から陳情が出ているらしく、領主や王達は、頭を抱えているらしい。

 勿論、シンビオーシス国内でも問題になってる。


「陸路で、義賊に襲われたりしないだろうな?」


「来ても返り討ちですよね? あなただけでなく、皆いるのですし」


「まぁ、そうなんだけど、そのへんはどうなんだ? ブラガス」


「義賊に関してですが、恩赦を出す予定です」


 ブラガスの案はこうだ。

 一つ、決められた期間内に自首する事。

 二つ、一応は賊に分類されるので、民達からの陳情率で罰を決める。

 三つ、罰に関しては罰金か強制労働奉仕。

 四つ、罰中は、王家管理の犯罪奴隷となる事。

 五つ、監査中は牢屋。

 六つ、罰終了後は釈放するが、二度目は無い。

 簡単に区分けするとこんな感じだ。

 詳しく言うと、更に長くなるので勘弁。


「義賊は人殺しをしませんからね。流石に、他の賊と同じ様にはいきません」


「私も、概ねそれで良いとは思います。ただ、一つ加えて欲しい事が」


「なんでしょうか?」


「例の貴族リストの領民たちが、全員陳情を出した場合に関してです」


「それでしたら、既に草案を作ってあります。こちらをどうぞ」


「拝見します」


 ミリアが書類を持って横に来て、身体を寄せ合って一緒に見る。

 今は仕事モードなので……良い香りがします。

 うん、違うね、ちゃんと仕事します。

 そして書類だが、思い切ったことをしている。


「ブラガス、マジか?」


「大マジですが? 流石に、半数以上が陳情を出してきたら、応えるしかないでしょう。一揆とか悪夢ですよ」


「ですが、無罪放免はどうかと、私も思います」


「では、どうしますか?」


 二人で考え、リエルから答えが来た。


『従軍任期で良いのではないでしょうか? 警備兵あたりで良いと思いますよ』


『警備兵の理由は?』


『その領地では人気があるという事ですから、従軍任期満了後、就職したいならば受け入れたら良い訳で』


『実利も取れって事か』


『悪徳商人から奪っている者もいそうですし、色々と大掃除するのもありかと思います』


『人手が足りん。人材も含めてな』


 最後の言葉にリエルは黙り込んだ。

 だが、一考する価値はある。

 リエルの言葉を伝えると、ミリアもブラガスも考えこみ始めた。

 問題は、人材と人手。

 これさえ解消できるなら、良案ではあるが。


「見せしめ――でしょうかね」


「ブラガス宰相、それは悪手でしょう。代わりにですが、義賊被害にあった商人との流通を、少し絞っては如何ですか?」


「国としては出来ても、全ての商人に対しては不可能でしょう」


「いや、ミリアの手なら、少しだけ改良すれば使えなくもないけど」


 二人して、バッ! と、こちらに顔を向けて来た。

 この二人、地味に相性が良いよな。

 まぁそれより、答えを言うか。

 前世でもあった事だし、もしかしたらこの世界でもあったかもしれんしな。


「事実確認した後、噂を流して、不買に追い込めば良い」


「情報操作するのですか?」


「いや。事実確認して、色々と看過できない商人ならば、事実を噂として流し、民達にその商店で買わないように動かす」


「更に悪事に手を染めそうなのですが……」


「ミリアの懸念は尤もだが、国の諜報部に見張らせれば良い。現行犯で捕まえたなら、ぐぅの音も出ないだろう?」


「人員はどうされるのですか? 人手は足りていないのが現状ですが」


「交代制で、準序列の試験に使えば良くないか? ナリアも、一桁ナンバー以外もとか言ってた気がするし」


「覚えて頂いており、感謝いたします。直ぐにこちらで手配を」


「荒事の予想も立てた編成でな」


「御意」


 一礼で締め括れられ、今後の話。

 一年後の話だな。


「資金面で少々不安が」


「どっちを優先するんだ?」


「開発優先です。上手く運べば、不安要素は無くなりますので」


「全ては二日後って所か。収穫祭終了後までは、経過を見よう」


 最後の議題は簡単に締め括って、残る仕事を済ませ、兵達の訓練に混じって汗を掻き、今日の執務は全て終わる。

 今日は後宮の方の風呂に入って汗を流す。

 同浴者はミリアだけである。


「皆さんは、きちんとしてからでないと」


「慣習?」


「淑女としての、でしょうか? 後は、正妻特権です」


「最後は本音だよね?」


「うふふっ」


 薄々感づいてはいた――が、今、確信に変わった。

 ミリアは非常に独占欲が強い。

 慣習、風聞、柵があるからこそ、独占できるうちはしておくというスタンスにしていると見ている。

 何故そう言えるのかって? 風呂上がりのメイド集団が、昼よりも少ないからだよ。


「公王妃様が不得手な部分は、私共が」


「お願いします」


 今のやり取りを見ても分かるだろう?

 時間があるならば、ミリアは自分で世話を焼きたいのだと。

 ちょっとダメ男の気持ちが分からなくもない。

 そしてな、俺が世話を焼こうとしたら、メイド集団に止められるんだ。

 結論、ミリアの教育が行き届いてるのを実感した。

 そんな事もあった後の夕食は、全員が勢ぞろいして報告や雑談しながら楽しく過ごす。

 そして後宮の自室で、昨日と同じ様に着替えて、昨日みたいに待たせないようにと寝室へ向かう訳なのだが……。


「ラフィ、早いですね」


 リリィ、既にスタンバってました。

 昨日より、かなり早く来たんだけどな。

 そんな彼女は、ミリアの時のガウン姿とは違っていて、白くて薄い生地の簡素なドレスに身を包んでいた。

 前世風に言うなら、薄手のキャミソールやベビードールをドレス風にした感じ。

 まぁ、そこはこれからの展望的に間違いではないと思うんだけど、何故にドレス? それも白の。


「ランシェス王家伝統なんですよ」


「ランシェスの?」


 緊張をほぐすため、酒を飲みながら話を聞く。


「王侯貴族女性は基本、他家に嫁ぎますよね。そうなると、どうなると思いますか?」


「相手の家風に合わせるのが普通だとは思うが」


「正解です。王族であっても変わらないんですけど、そこで王族伝統行事を作ろうって話が、過去にあったそうで」


「それが、そのドレス?」


「……はい。あの、恥ずかしいので凝視はしないでください」


「とは言われてもなぁ、似合い過ぎて、見るなってのが無理」


「はぅっ」


 そしてこの、薄手の白いドレスには、もう一つ意味があるらしい。

 でも、それを聞く前に、リリィからキスされてしまった。

 口の中にお互い酒を含んだ状態でのキスなので、当然だが召し物に零れて汚れる。

 拭かないといけない――と、思うと同時に、リリィに押し倒されてしまった。

 そして次も、酒を含んでのキス――但し、大人の。

 お互いに貪り合って数十秒、口を離したリリィは、手を取って自身のドレスへと添えさせた。

 酒で汚れてはいるが、それがまた妖艶で、嬉しさと期待に満ちた表情。

 上半身を起こして、リリィに近付ける。

 そして、もう一つの意味を聞かされた。


「私の全てを、旦那様の全てで染めて下さいって意味が……あり、ます」


 最後は小声であったが、意味は理解した。

 同時に、覚悟の表れでもあると理解する。

 政略結婚など当たり前の世界で、純愛を通せる王侯貴族は美談にされ、書籍化や演劇にされるほどに稀有だ。

 そしてランシェスの場合、その稀有な事をやり遂げた場合のみの作法が作られたという事だろう。

 なんてカワイイ姫であろうか。

 なら、その期待以上に応えるとする。

 応えられなければ、恥だな。

 そっと、肩の露出した部分から服を脱がして右腕を露出させる。

 その間にも、声を掛けるのは忘れない。


「リリィと出会って10年、長かったよな」


「っ、~~ラフィ」


 次は反対の左側。


「ありがとう、好きになってくれて。愛してくれて」


「~~~~~~っ!」


 珍しく、リリィが恥ずかしがってる。

 やっべ、ドS様が顔を出しそうになるぜ。


「沢山苦労を掛けたし、迷惑も。多分、これからも掛けると思う」


 抱きしめて、丁寧に、一言一言伝える。

 その間に、少しずつ脱がせていく。


「こんな俺だけど、幸せって言えるように頑張るよ。だから、俺色に染め上げても良いか?」


 最後に、一糸まとわぬ姿になったところで問いかける。


「私を、ラフィ色に染めて。代わりに、ラフィを、皆の色で染めて上げる。私が一番強く染めて上げますから、覚悟して下さい」


 答えは決まって、いや、予想以上の答えが返って来たな。

 リリィの答えは、ある意味、宣戦布告だ。

 序列は慣習があるから受け入れてる。

 奥の序列を壊すつもりもない。

 でも、夜は負けない。

 それがリリィの答えだった。

 その言葉を聞いて、お互いに微笑み、三度目のキス。

 そして、彼女リリィの初めてを貰い……三回戦目には肉食系に変貌していた彼女リリィ

 また馬乗りされてます。


(しかし、リリィは意外と華奢だったんだな)


 されるがままの状態で、身体を見る。

 胸はそれなりにあるも腰は細く、強く抱きしめてしまうと壊れそうな印象。

 でも、芯はしっかりしているときた。

 後、ちょっとだけリアフェル王妃に似ているとも思ってしまった。

 テオブラム王に、ちょっとだけ罪悪感が生まれてしまう。


「ラフィ、んっ、今は私だけ、見て下さい」


「リリィ」


「お母様に似ているのは分かります。でも、んんっ、罪悪感を抱く必要なんて無いです」


「見透かされてんなぁ」


「ふふ、何年の付き合いだと思ってるんですか? でも、ちょっと癪なので、私の色に染めて差し上げます」


「ちょっ、くっ! それはあかんて!」


 斯くして、二日目の夜も超絶楽しみました。

 もう、ずっと夜だけきたら良いと思ってしまう程に。

 まぁ、朝は来るんだけどね。

 そして二日目の昼も、ナリアに叩き起こされたとだけ言っておく。

 ナリアさんや、昨日、言ったことが出来てませんが、どういう事なんですかね?

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