第13話 原初との契約

 いきなりの使徒になれ宣言と加護の授与宣言によって、俺は混乱の中にいる。

 未だキョトンとした顔で混乱している俺にゼロは話を続けた。


「色々思い違いをしてるようだから説明しておく。使徒になっても人を辞める訳じゃねぇ。俺の存在は超超超極秘なんだが一部の限られた人間は知っている。お前が使徒になるのならその情報も開示してやる」


 自分で超超超とか言っちゃってるよこの人(神)は。

 でも使徒については分からないんだよなぁ・・ここは色々聞いておくべきだな。

 俺は使徒についてゼロに聞いた。


「原初の神である俺に代わって、お前が動くってだけの話だ。俺が出張らにゃならん時以外はお前が解決するって事だが、基本は今まで通りの生活だ。後はそうだな・・ある程度の年齢になれば冒険者登録はしとけって事位か」


 面倒事きましたー!!

 俺は異世界ライフを楽しんで、家庭を持って、幸せに暮らしたいだけなのに・・・。

 確実に顔に出ていたのであろう・・ゼロはとても良い笑顔になり、メリットとデメリットを提示してきた。

 ゼロが提示したメリットは・・。


 原初の神の加護が貰える。

 条件が揃えば原初魔法が使えるようになる。

 初の原初の使徒になれる。

 称号が増える。

 家庭教師として濃密に教える。

 スキル増加。

 とある国のお偉いさんと仲良くなれる。


 こんなとこだろうか。

 対してデメリットは・・。


 面倒と厄介ごとが確実に増える。

 危険度が増す。

 更なるチート化が進む。

 家庭教師の修練中に間違いなく地獄を見る。


 なのだが・・メリットの数が多いように見えるが俺に対してあるかと聞かれると全く無い。

 デメリットだけなのだ・・・原初の神ゼロだけに、0と言っても過言ではない。

 ・・・・・・自分で言って、ものすごく寒くなったわ・・・。

 気を取り直して、俺は即座に、丁重に、お断りを入れようとしたのだが。


「受けなきゃお前の情報、全てばらすぜ」


 と、脅されてしまった。

 何という悪魔の所業!

 俺はゼロに全て見せたのを心の底から後悔した・・・。

 思いっきりゼロを睨むがどこ吹く風だよ・・チクショーめ!!!


 俺は使徒になるのを受けざるを得なくなった。

 だがゼロも鬼では無い様だ。

 とりあえず学校を卒業するまでは使徒としては活動させないと約束した。

 この約束だが、神気を使った契約魔法で、少なくとも12歳までの学校卒業までは使徒ではあるが世界崩壊レベルではない限り使徒としては活動させないとした。

 実は卒業後に更に難関である王立高度高等学院と言うのがあるのだが、もし入学した場合には冒険者として活動しながら通う事を条件に提示された。

 使徒としても多少は動いてもらうとの事だが、多分そこまで大掛かりに動くことはほぼ無いだろうとの事だ。

 むしろ冒険者としての実績とランクを上げる様に言われた。


 次に家庭教師についてだが、教会から来る家庭教師は何と次期教皇と言われている人で、ゼロの秘密を知る者の一人だそうだ。

 ゼロが光属性を教えその地位に就くようにした人物らしい。

 当然、裏でゼロが手を回して、家に来るように仕向けたわけだ

 残りの属性についてはゼロが教えるとの事。

 ゼロは登録上は無以外(召喚は記載しなくても良いらしい)の全てを使えるように登録しており、冒険者ランクも世界で1人だけのSSSランクである。

 更にはもう一つ上に最高峰のEXランクが存在し、なろうと思えばなれるが面倒くさいのでパスだそうだ。

 今回依頼を受けた名目は、長期休暇のついでを理由に引き受けたと言われた。

 他にも色々教えてくれるらしい。

 世界の歴史・国の地名・国の特色に、武術・体術・その他諸々・・・。

 地獄は回避できそうにないっぽい。

 どうして神は修練で地獄を見せるのが好きなのか・・・。


 それなりに授業の内容が決まっていき話は愚痴や雑談へと移る

 今なお続く着せ替え人形化の話に家族の話。

 色んな話をしていく中で3歳の時に森での魔力実験の話が終わり、ゼロは魔力修練の場所について話してきた。

 予想通りの考えで合っていて、魔力修練と魔法修練は場所を変えないと周りへの被害が大変なことになると言い、ゼロが用意した修練場でした方が良いそうだ。

 問題は両親がそれを許すかである。

 俺はナリアを呼び、父に話があるので時間は大丈夫か聞いて来てもらう。


 戻ってきたナリアは父を連れていた。

 ゼロは父に魔法関連は良い練習場があるのでそちらで行いたい事を話した(言葉は丁寧ではない)が父はやはり渋い表情をした。

 ゼロは父を納得させる為、転移魔法のゲートを見せ、教会から来る者と一緒に行き、夕方には戻る事を提案し父は渋々了承した。

 父はナリアを同行させたかったようだがあの森での出来事があったためナリアも非同行派に回った。


 ゲートと言う魔法は時空間魔法と無属性魔法の属性持ちでないと使えないかなり希少な魔法である。

 ただ何故その2属性が無いと使えないのかはわかっていない。

 当然俺も知らないのでナリアと父が部屋から出て行った後にゼロに訊ねてみた。

 答えは意外と言えば意外だしそうでないともいえる。

 ただ世の学者たちからは間違いなく神に対し非難の嵐だろう。


 ゼロ曰く、ゲートとは無属性にも時空間魔法にもどちらにもあるのが答えだ。

 ただこの二つのゲートには違いがある。

 繋げ方が全く違うのだ。


 無属性のゲートは繋げる先のイメージを元にして空間短縮して繋げる。

 時空間は座標軸を使い、座標設定を構築し、起点同士の空間を歪曲して繋げる。

 どちらも必要なのは訪れたことがあり起点が出来ていることだ

 それがなければゲートは発動しない。


 有能なのは時空間魔法のゲートで、イメージが悪くても、起点の場所に繋げられるからだ。

 無属性のゲートは、イメージが悪くても一応は繋がる。

 但し、以前と場所が違っていたり、不安定だったりする。

 記憶を頼りに繋ぐので、それなりの記憶力が求められるのだ。

 俺は使えるのかと聞くと、起点さえ作ればどちらも問題なく使えるとの事。


 ではなぜこのような2属性必須になったのか?

 ゼロは答えてはくれたが、馬鹿らしい見たいな感じでだ

 理由は単一使用による行使の衰退。

 過去の人物が2属性だとより発動しやすく安定すると提言して真似をし始めた為、単一による発動使用者が減少していき、時代の流れから消えて行ったが答えだ。

 確かに何とも言えない答えだった。


 話を終えるとナリアを呼び、ゼロは案内されて用意された客室へと休みに行く。

 2時間ほどで夕食になったので二匹と共に食堂へ行き、夕食を食べて自室に戻る。

 ゼロは街へ食べに行ったようだ。

 俺はベッドに座りルリとハクを撫でる。

 ゼロがルリとハクについても説明してくれたな。


 神竜にもいくつか種別があり、ルリは希少種中の希少種でバハムート種だと言っていた。

 大きくなれば手綱をしっかり握っておかないと世界が滅びかねないと脅してきた。

 神狼であるハクもいくつかある種の希少種中の希少種でフェンリル種と言っていた。

 こちらも大きくなれば小さな国など1匹で滅ぼせるそうだ。

 二匹とも凄いんだねぇ。

 頭を撫でるのを止めると、指を吸ったり、手を甘噛みする二匹を見ていると、そんな事出来そうにないと思えるのになぁ。

 ゼロの言ってる事なので何かしら根拠があるんだろうけど・・・。


 しかし何というか、この短時間で良くゼロの事をそれなりに信じたものだ。

 信じるに至った結果は神喰いの件とゼロにとってはデメリットが多そうな使徒になる話とそれについての契約が決め手だったのではあるが・・・。

 ちょっと考えてる隙に二匹は、自分の寝床で寝息を立てて寝ていた。

 俺も疲れたので寝ることにしよう。



 教会の家庭教師が来るまでは、知識方面の授業と簡単な武術と体術をすると決定しているので地獄はその後だなと、その時の俺は甘い夢を見ていたのであった。

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