第14話 修練と内緒話

 ゼロがクロノアス家に来てから11日後、教会からの家庭教師が来た。

 その11日間のゼロとの修練を簡単に伝えようと思う。


 ZI・GO・KU!!だった。


 それしか言いようがない。

 既に俺は真っ白に燃え尽きて灰になっているのだから・・・。

 そう表現するしかない位の濃密な修練内容なのだ。

 武術と体術の同時修練をしながらの歴史の勉強。

 武術特化の修練+国の地名と特色。

 体術特化の修練+魔力関連の知識授業。

 その他諸々。

 これが11日間の修練だ。

 当然、家族は引いている。

 どちらにかって?どちらにもさ・・・。

 この超過酷な修練メニューを組んだゼロにも、それについていく俺にもな。


 双子の兄姉の家庭教師はそんな俺たちを見て「俺のメニューは優しすぎるのか!?」等と言ってるが、あなたのメニューが普通なのですよ。

 俺の家庭教師がドSで鬼畜なのですよ・・そして俺はMじゃない!!

 ・・・最後のは意識飛びかけて朦朧として出たやつなのでスルーの方向で・・。

 そんな様子を教会から来た教師は見ていた。

 彼は俺達・・ではなくゼロを見て。


「相変わらずですな・・・ゼロ殿・・」


 と、思いっきり苦笑いした。

 俺は悟ってしまった・・この人もゼロの地獄で鬼畜な修練の被害者なのだと・・。


「久しぶりだな、ヴァルケノズ。おめぇも参加するかい?」


「御冗談を。私はもう40過ぎてるんですよ。身体が壊れます・・・」


 ああ、やはり被害者だった・・・。

 二人は挨拶して少し話しているがゼロが休憩しているわけではない。

 俺の修練の相手をしながら話しているのだ。

 ・・・・・よそ見をしながら・・・。

 クッソー!ぜってぇ一撃入れてやる!!

 神界仕込みの早業を数発(身体的に今はこれが限界)出すが敢え無く潰されてカウンターを喰らう。

 更に追い打ちを喰らって意識が飛ぶ・・・。


「あ、意識飛ばしちまった・・・しゃあねぇ、今日はここまで」


 そう言うとゼロは木剣をしまい屋敷に戻る。

 日はまだ落ちてないが意識を取り戻して修練するには時間が足りないので今日はここまでとなった様だ。

 尚、意識を取り戻したのは30分程後である。


「ヴァルケノズ、話があるから今日の夜は酒場な」


「私、聖職者なんですけどね・・・」


 二人は会話を終えるとゼロは汗を流しに(汗なんてかいてないが)風呂場へ。

 ヴァルケノズさんは着いて早々に懐かしい声が聞こえたので、父への挨拶の前にこちらによって修練を見ていたそうだ。

 見ていた時間は俺が意識を飛ばすまでの数分だけだが・・・。


 俺は意識を回復させ、ヴァルケノズさんを応接間に案内し、父を呼んでくようにメイドへ告げ、一礼してから汗を流しに風呂場に向かった。

 失礼かもとは思ったが汗でびちょびちょなのだ。

 早く汗を流したい・・。

 風呂場に行くとゼロがまだ入っていた。

 風呂はのんびりゆっくり入るものだそうだ。

 前世も今も俺の風呂は早上がりなんだよな。

 今度ゆっくり浸かってみるか。

 風呂を10分程で上がり、着替えをして応接室へと向かう

 父は教会から来た人物に驚いたそうだ。

 まぁそりゃ教会次期教皇と言われてる人が来たら驚くよね。


 ヴァルケノズさんはゼロが知己である事を明かし、普段は依頼なんかでは絶対に教える事のない人物に興味が湧いたそうだ

 なので、ゼロから連絡を受けた時、丁度その名前の人物の派遣人が決まって無かったので自分が来たのだと父に告げた。

 父はきっとこう思ったに違いない。

 ゼロって何歳なんだ?と。

 答えを知ってる俺とヴァルケノズさんは思わず苦笑いした。

 ヴァルケノズさんはゼロと共に明日から修練に参加すると告げ客間に案内された。


 夕食時、ゼロとヴァルケノズさんは今日は外食する旨を告げており、俺にも明日の修練で少し話があると言われ、父に許可をもらい酒場に夕食を食べに来ていた。

 酒場で3人は奥にあるテーブルに座り各々注文をする。

 ゼロだけは酒を頼んではいるが。

〝そんな中、ゼロが防音と遮断を使い、内緒話が再び始まる〟


「しっかし粗削りだがラフィは良く俺の修練についてこれるな」


「ついてこれないような内容だったのかよ」


「ギリギリついてこれない位で回してはいたがな。誰に教わった?」


「・・・・・全員・・・」


「マジか?」


「嘘言っても仕方ないだろ・・」


「二人とも?その全員と言うのはもしかしなくても・・・」


 そんな話を続けていく。

 そしてヴァルケノズさんは頭の回転が速い。

 ゼロの正体も知っているので、俺が全員と言った瞬間に誰かわかったみたいで、俺の事も一部であろうがいくらかは察したようだ。

 ヴァルケノズさんはため息をついて・・。


「はぁ・・・そういう内緒話ですか。私を呼んだのは顔繋ぎと、いざと言う時の支援ですか・・で、当然全て話してくれるのでしょうねゼロ殿?」


「全て話したいんだが、ちょっくら話せない内容があるな。とりあえずラフィのステータスについては全部見せるぜ」


「見せるって聞いて無いんだがなゼロ。そういう事は事前に言え、事前に」


「言うじゃねぇか。まぁお前のそういう所が気に入ってるんだけどな。ヴァルケノズはかてぇんだよな。もう少し砕けろや」


「これでも大分砕けてるんですがねぇ・・・それよりステータス見せてもらえます?」


 こんな感じで話しながら俺はヴァルケノズさんにステータスを見せる。

 俺のステータスを見たヴァルケノズさんはやっぱり絶句した。


「あー・・やっぱりそういう反応になるわなぁ」


「事情説明せずに開示させたゼロが悪い」


 ヴァルケノズさんの再起動には数分を要した。

 再起動するとカウンターに行きジョッキを3つ持ってきた。

 中身は酒だ。

 その一つを一気に飲み干し、ゼロに説明を求めた。


「で、これは全部ゼロ殿の仕業なのですか?」


「んなわけあるか!こいつも事情があってな・・あのガキどもの仕業だよ」


「教会が崇める神々をガキ扱いですか・・・まぁゼロ殿ですから許される特権でしょうね。それでグラフィエル殿はどこまで説明できますか?」


「とりあえずいくつかの称号とスキルに関しては触れないでください。後は説明できる範囲で説明します」


「それ終わったら、俺の使徒の件の話な」


 とりあえず説明の段取りを決め、俺はいくつかぼかしながら説明をしていく。

 説明を終わるころにはヴァルケノズさんは頭を抱えていた。


「これ、教会関係者にバレたら騒ぎどころじゃ済まなくなりますね。間違いなく奉られる事案ですよ。神託の御子なんか目じゃない」


「そこはお前だから教えたんだぜ。わかってるよな?」


「十分承知してますよゼロ殿。しかし酒を予め取りに行っていて良かった。素面じゃこんな内容聞けませんからね」


「あー・・やっぱり俺ってチートで実質神の仲間入りみたいな感じなのかぁ」


「チート?と言う言葉はわかりませんが・・・問題はそこなのですよグラフィエル殿!なまじ人であるから余計に問題なのです」


 三人とも言いたいことを言い合い本題の使徒の話へと移っていく。


「んで、俺の使徒の件なんだがな、こいつからより詳しく聞いたらどうにもキナ臭くてな。正直この世界は気に入っている。なので崩壊しないように手を一つ打ったのさ。まぁラフィにしてみれば良い迷惑だろうよ」


 本当にその通りである。


「ゼロ殿が手を打つほどの案件なのですか?それは世界に警告を出す事態なのでは?」


「いや、下手に地上で騒ぐと尻尾をつかめねぇ。それに半分以上はラフィの事を気に入っている。あいつらは俺の事は基本捕捉できねぇ。何かするより泳がせた方が楽だ」


「しかし、何かあってからでは・・・」


「でだ、ヴァルケノズ。お前1年でこいつに光属性の全てを叩き込め。んで2年後、教皇になれ。今、教会には面白い子供がいるだろう?没落寸前だった貴族の子だが、その能力で子供ながらにあの地位につけた子供が?」


「その情報をどこで・・・」


 汗が頬を伝いながらグラフィエルさんがゼロに聞く。

 ゼロには基本隠し事をする気はない。

 情勢によって仕方なくするだけだ。


「お前らんとこのジジィっていやぁわかるか?」


「そう言う事ですか・・その情報を開示すると言う事はその者と組めと言う事で良いのですね?」


 ゼロはニヤッと笑い。


「正解だ。最終目標はさっき言った子供を早い段階・・15歳~17歳位で教皇に仕立てあげろ。出来ない場合はその地位を確固たるものにしろ。んで、それとなくラフィに会わせろ」


「また無理難題を言いますな・・で、確認なのですが組むのは現教皇で間違いないですかな?後、どこまでなら情報開示をしても?」


「それでいい。情報開示はとりあえずラフィが俺の使徒だけのとこまでにしとけ」


「秘密を知る人間は少ない方が良いですか・・・」


 悪い大人の会話が繰り広げらてる!!

 俺は知ってはいけないことを知ってしまった・・・。

 某アニメとかドラマだと確実に消えるたり狙われたりする奴だ!


「ラフィ、お前も他人事じゃねぇんだぞ。しっかり聞いとけや!」


「え!?俺も当事者なの!?」


「当たり前だろうが!!誰のために好きでもねぇ裏工作してると思ってやがるんだ!!てめぇ明日から倍の速度で修練すすめっからな!」


「ちょ・・・まっ・・・」


「グラフィエル殿、これは諦めるしかないですよ。安心してください。万が一の時は我が教会が責任をもって葬儀をしますから」


「勝手に殺すなぁー!!」



 そうして秘密の会合は幕を閉じたのだった・・・。

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