第2話 異世界で就職活動1

「なぁおれらだけじゃねぇか」


 唐突とうとつ達巳たつみった。


「「なにが?」」


 けい慎慈しんじ突然とつぜん発言はつげん意図いとみきれなかった。



異世界いせかいにまで就職しゅうしょく活動かつどうをするために、王国おうこく図書室としょしつ勉強べんきょうしてるの」


「「……………………………………」」



 三人さんにんひとみくらかげちる。

 あのあと様々さまざま検査けんさをしたが三人と《さんにん》ともなんちからそなわっていないことが確定かくていし、れて自分じぶんたちはおやく御免ごめんとなった。

 意味いみがないのならもと世界せかいかえしてしいと懇願こんがんしたのだが、もと世界せかいかえ方法ほうほうがないとわれた。完全かんぜん八方はっぽうふさがりの状況じょうきょうおちいってしまったのだ。


 フィーデルは三人さんにん面倒めんどう一生いっしょうるとっていたが、やくたない三人さんにんをいつまでもいておくわけがない。最悪さいあくなケースとして暗殺あんさつされる可能性かのうせいもある。

 そうかんがえた三人さんにんはこの世界せかいで生きていくために就職しゅうしょくすることを決心けっしんした。そのむねつたえるとこの世界せかい知識ちしきがまるでない三人さんにんのために、国王こくおう特別とくべつ図書室としょしつへの入室にゅうしつ許可きょかしてくれたのだ。


 ちなみにあかつきめられたちから解放かいほうするために、フィーデルとともにどこかへってしまった。

 自分じぶんたちのこと精一杯せいいっぱいで、詳細しょうさい余裕よゆうはなかった。


 もしかしたらもと世界せかいへとかえ方法ほうほうがわかるのかもしれないと、三人さんにん夢中むちゅうほんあさる。

 文明ぶんめい中世ちゅうせいレベルとえども、魔術まじゅつ当然とうぜんのように普及ふきゅうしている世界せかい把握はあくするのは、非常ひじょうほねれる作業さぎょうだった。

 とく魔術まじゅつかんする記述きじゅつ理解りかいするのに時間じかんようした。たまにかおしてくれるフレインを質問しつもんめにしてやっと理解りかいできるほど魔術まじゅつ難解なんかいだったのだ。

 感覚的かんかくてき表現ひょうげん多用たようされており、魔術まじゅつ使つかえない三人さんにんには実感じっかんかなかったことにほかならない。


「ハァ〜〜〜……………つかれた」


 達巳たつみおおきな溜息ためいきをつく。


すこ休憩きゅうけいするか」


 沈黙ちんもく図書室としょしつ支配しはいする。三人さんにんたがいを見合みあい、微笑ほほえうと雑談ざつだんはじめた。


「ここにてからもう5っちまったなー」


時間じかんながれがはやかんじるよね。体感たいかんじゃあ、一ヶ月いっかげついるみたいだよ」


「まぁ、こんだけ異常いじょうなことがこればなぁ……」


「ていうか魔術まじゅつのある世界せかいなにもできないのはヤバくないか?」


完全かんぜん生活せいかつ一部いちぶだよね。それがこの世界せかい常識じょうしきだから当然とうぜんのことだけど」


就職しゅうしょくもキツい……かぁ……」


 三人さんにん同時どうじ溜息ためいきをつく。

 突然とつぜん図書室としょしつのドアがひらき、おとこはいってきた。


三人さんにんとも、時間じかんだぞ」


 おとこ言葉ことばくと三人さんにんがり、おとこあとをついてく。


           *


 三人さんにん衛兵えいへいたちがつど訓練場くんれんじょうにいた。

 三人さんにんまぎらわすためと、護身術ごしんじゅつけるために訓練くんれん参加さんかしていた。

 衛兵えいへいたちの訓練くんれんメニューは対人戦たいじんせんきんトレだったが、素人しろうと三人さんにんのために特別とくべつメニューをんでくれたのだ。


 達巳たつみ格闘技かくとうぎたしなんでおり、不良連中ふりょうれんちゅう相手あいてにずっと喧嘩けんかいどいどまれてきた。徒手としゅではあるが戦闘能力せんとうのうりょくがあり、体格たいかくめぐまれていたのできんトレを重点的じゅうてんてきにおこなっていた。


 慎慈しんじまえ器用貧乏きようびんぼうさをわれ、けんやりゆみなど様々さまざま武器ぶき訓練くんれんをしていた。上達じょうたつはやく、教官きょうかんうならせるほどだった。


 一方いっぽう自分じぶんといえば、特筆とくひつすべき事柄ことがらかったのでけんたて使つかった実践的じっせんてき訓練くんれんをおこなっていた。教官きょうかんすじがいいとってくれるが、ほか二人ふたりくらべれば見劣みおとりしてしまうのはあきらかだった。

 しかし最初さいしょ達巳たつみ慎慈しんじおれ一番いちばんヤバイとかかしやがった。訓練くんれん時間じかんになるたびおもかえしてしまう。

 いまでも腹立はらだたしくて仕方しかたがない。


「ヨォーーシ!最後さいご対人戦たいじんせんをやるぞ!!」


 このくに軍事ぐんじ最高さいこう責任者せきにんしゃであり、このくに随一ずいいち実力じつりょくほこ騎士きしであるハロルドのごえがる。

 それぞれグループをつくり、一対一いったいいちはじめる。


「タツミ!今日きょうおれ相手あいてをしてくれるか?もちろん徒手としゅだ」


たりまえじゃねぇか!今日きょうこそ一本いっぽんってやる!!」


 達巳たつみ訓練くんれん初日しょにち徒手としゅ対人戦たいじんせんでハロルド以外いがい全員ぜんいんから一本いっぽんっている。

 唯一ゆいいつハロルドだけしており、流石さすがこのくに頂点ちょうてんとしかいようがない。自分じぶん慎慈しんじも、達巳たつみしてるのをおどろいたほどだった。


 ハロルドは達巳たつみより二回ふたまわほどおおきく、きたかれ膨張ぼうちょうした筋肉きんにくというよろいまとっていた


くぜぇ!!くなよ!!!」


 遠目とおめからても二人ふたりたたかいは度肝どぎもくほどはげしく、うつくしいとさえおもえてしまう。

 達巳たつみはルチャリブレのような空中殺法くうちゅうさっぽう仕掛しかけ、ハロルドはそれを身体能力しんたいのうりょく技術ぎしゅつさばいていく。


 一方いっぽう慎慈しんじ教官きょうかん相手あいて武器ぶき使用しようした対人戦たいじんせんをしていた。

 速度そくどおそいものの、武器ぶき自分じぶんからだ一部いちぶのようにあつかっていた。

 時折ときおり中断ちゅうだん指導しどうけているが、そのたび段々だんだんうごきが流麗りゅうれいになっていく。


 くわえて慎慈しんじ洞察力どうさつりょくすぐれており、まわりの衛兵えいへいたちのうごきを模倣もほうし、着実ちゃくじつ技術ぎしゅつつちかっている。成長せいちょうしていく慎慈しんじて、衛兵えいへいたちもけじと切磋琢磨せっさたくましていく。

 慎慈しんじ不動明王ふどうみょうおうのようにするど眼差まなざしで教官きょうかん見据みすえている。

 表情ひょうじょう真剣しんけんそのもので—————なんか口元くちもとってないか?


「ケイ、こっちもはじめるか。いいか?おまえほか二人ふたりけをらないものをっている。むしろ……まぁいいか。はじめるぞ」


 固唾かたずみ、けい対人戦たいじんせんのぞんだ——————



 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る