第1話 異世界へ転移してしまったようだ4

「おまえたち名前なまえは?」


 戸惑とまどっている二人ふたり他所よそ警備員けいびいんのおっさんが突然とつぜんはなしかけてきた。


「………神宮じんぐうけい


草薙くさなぎ達巳たつみ


翡翠ひすい慎慈しんじです」


 渋々しぶしぶこたえると警備員けいびいんのおっさんは満足まんぞくしたようにうなずく。


おれあかつき光輝こうきだ」


 なんできゅう自己紹介じこしょうかいはじめたんだ?疑問ぎもんばかりがおもかぶ。


「ここは本当ほんとう自分じぶんたちのいた世界せかいとはべつ世界せかいなのか?」


しんがたいですけどその可能性かのうせいはあります………みんな幻覚げんかくている可能性かのうせいもありますけど」


 慎慈しんじ率直すなお感想かんそうべる。


「オホン…すみません、みだしてしまいました。ええと……アカツキさま……でよろしかったでしょうか?」


 フィーデルはとりあえず自分じぶんたちのことを後回あとまわしにしたらしい。上目遣うわめづかいであかつきつめる。


「もしわたくしはなしを————————」



「その提案ていあんけましょう!!!!!」



 即答そくとう、もとい即決そっけつだった。


「おっさん本気ほんきか!?」


 達巳たつみ驚愕きょうがく表情ひょうじょうかべ、あかつきめる。


「あぁ!おれ本気ほんきだ!!!」


「アンタはバカか!?まだなんもわかってない状況じょうきょうなんだぞ!!?」


 至極しごくとう反応はんこうをする達巳たつみに、興奮気味こうふんぎみあかつきはさらにまくてる。


おれ元警察官もとけいさつかんだったんだ、エリート街道かいどうっしぐらのな。あるとき組織そしき不正ふせい気付きづいちまってな、それを上司じょうし糾弾きゅうだんしたらクビになっちまった」


 あかつき突然とつぜん独白どくはくはじめる。

 いや、だれたのんでないから。しかもいま状況じょうきょうなん関係かんけいがあるんだ?


「そのあとすぐに妻子さいしっちまったんだよ。エリートじゃなくなったおれ見限みかぎってな。人生じんせいんじまったって思ったよ」


 しかもかなりベヴィーな内容ないようむのを躊躇ためらうレベルの。


日雇ひやといの仕事しごとかえす、自分じぶん正義せいぎ完全かんぜん否定ひていされたおとこの、人生じんせい終着点しゅうちゃくてんはどこなんだろうなぁ、とかかんがえてた矢先やさきだ」


 どこか哀愁あいしゅうただよ様子ようすだったあかつき一変いっぺんし、ひとみには決意のほのおのようなものがともった。


「これは運命うんめいちがいない!!人生じんせいをやりなおすチャンスなんだ!!!これからおれはこの世界せかい勝手かってきていくんだ!!!!!」


 なんくわからないうちに年長者ねんちょうしゃであるおっさんが人生じんせい再出発さいしゅっぱつ決意けついし、恍惚こうこつふるえさせはじめた。

 あれは完全かんぜん自分じぶん世界せかい没入ぼつにゅうしちゃったやつだ。

 あのひとほおっておこうと三人さんにんかお見合みあわせた瞬間しゅんかん


「おまえたち」


 たったいま第二だいに人生じんせいはじめたおっさんからこえをかけられた。


としはいくつだ?」


「えっと…全員ぜんいん二十歳はたちにはなってますけど」


全員ぜんいん大学生だいがくせいなのか?」


「まぁ……いま三年生さんねんせいです」


 なんできゅうにそんなことをいてくるんだ、このおっさん。三人さんにんともそろっていぶかしんだ。



「ならかったじゃないか!!あのくだらない現代げんだい社会しゃかいくさっていくより、この異世界いせかい人生じんせい謳歌おうかしようぜ!!!!」


「「「……………………………………」」」



 この状況じょうきょうに振《ふまわされて混乱こんらんしているうえに、年長者ねんちょうしゃがおかしなことをした。


地獄じごくだ…………」


 三人さんにんとも文字もじどおあたまかかえる羽目はめになった。

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