第1話 異世界へ転移してしまったようだ3

もうおくれました。わたしはフィーデル・ストラクション、国王こくおうカーズ・ストラクションのむすめにございます。こちらは宮廷魔術師きゅうていまじゅつしのフレイン・ホーエンハイム」


 フィーデルは簡単かんたん自己紹介じこしょうかいをしたあと、すぐにこの世界せかい説明せつめいはじめた。


みなさまをこの世界せかいんだのはほかでもありません。いずれおとずれる危機ききからすくっていただくためです」


危機きき……とは?」


戦争せんそうです。獣人族じゅうじんぞくばれる、われらとながあいだいがってきた種族しゅぞく不穏ふおんうごきをはじめたのです。かれらは戦闘せんとう民族みんぞく開戦かいせんしたらまず間違まちがいなくおおくのながれるでしょう」


獣人族じゅうじんぞく魔王まおうではなく?」


 てき代名詞だいめいしともべる魔王まおうではなく獣人族じゅうじんぞくであることにおどろきをかくせず、ついくちひらいてしまった。


魔王まおう…ですか?平和主義者へいわしゅぎしゃとしてわたっていますし、他国たこくとの干渉かんしょう完全かんぜんっていますね」


「……平和主義へいわしゅぎ?」


「えぇ。魔族まぞくかたたちは魔術まじゅつ素養そよう他種族たしゅぞくくらぐんいていますが、寿命じゅみょう格段かくだんながいせいであらゆることに無関心むかんしんなんですよ」


 平和主義へいわしゅぎとはちょっとちがうのかもしれませんね、とフィーデルはくわえる。

 魔王まおうがメチャクチャ無害むがいだった、驚愕きょうがく事実じじつである。


「そういえばフレインは魔王まおう設立せつりつした学園がくえんかよっていたのよね。魔王まおうはどんなかただったの?」


「とても無気力むきりょくかたでした。魔王まおうによる魔術指南まじゅつしなん講義こうぎはありましたが、ほとんど自習じしゅうでした。ちなみに口癖くちぐせは『なん学園がくえんてたんだろ』です」


 あまりにみどころがおおすぎてなにになれない。


はなし脱線だっせんしてしまいました。我々われわれにとってもっと重要じゅうようなのは獣人族じゅうじんぞく動向どうこうなのです。かれらは全種族ぜんしゅぞくほろぼし、この手中しゅちゅうおさめんと暗躍あんやくしているのです。いま休戦中きゅうせんちゅうなのですが、いつ再開さいかいするかわからない状況じょうきょうで……」


 フィーデルはくら表情ひょうじょうのまますこうつむく。

 同情どうじょうさそっているのだろうか?



「あの…ひとついいですか?」



 そのにいる全員ぜんいん視線しせん発言主はつげんぬしく。警備員けいびいんのおっさんだ。


ばれた理由りゆうなんとなくわかったのですが……わたしたちがやくてることなんてなにもないですよ?」


「いえ、異世界いせかいより召喚しょうかんされた方々かたがた特別とくべつちからあたえられてこの世界せかいちます。みなさま、なにかご自身じしん肉体にくたい変化へんかしたのをかんじませんか?」


 みな一様いちようからだ見回みまわしたり、うごかしたりする。


「……とくなにも」


みぎおなじく」


なにかんじないです」


 達巳たつみ慎慈しんじいぶかしむだけで変化へんかかんじていないらしい。


「おかしいですね………」


 フィーデルの表情ひょうじょう強張こわばる。えて動揺どうようしているのがわかる。


「そちらのかたはどうですか?」


 フィーデルは警備員けいびいんのおっさんにこえをかける。


すこ身体からだかるくなったようながします。それに何故なぜちからがるようなかんじも……」


「フレイン、かれらを調しらべてください」


 フレインはどこからかした水晶すいしょうたずさえて、一人一人ひとりひとり順番じゅんばん正面しょうめんに立つ。

 警備員けいびいんまえったときだけ水晶すいしょうすこかがやいたがした。


「…残念ざんねんですがこの三名さんめいは………」


 フレインはくもった表情ひょうじょうをフィーデルにける。フィーデルの表情はかたまった。

 少ししてフィーデルは一息ひといきくと、けっしたようにくちひらいた。


「どうやらあなたがたなんちこらあたえられていないようです」


「まったく?」


「えぇ……このようなことがきようとは」


 戸惑とまどっているフィーデルとフレインの姿すがたて、三人さんにん胸中きょうちゅう不安ふあんひろがっていく。

 




 

 


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