第1話 異世界へ転移してしまったようだ1

 神宮圭じんぐうけいわせ場所ばしょへといそいでいた。すでにわせ時刻じこくから30ぷん以上いじょう経過けいかしている。


「ヤベェ、二人ふたりともおこってるかな?」


 今日きょうりのレポート課題かだい提出ていしゅつし、達成感たっせいかんひたっていた。そのためあたまなかからわせのことがすっかりとちていたのだ。


いそげぇ」


 わせ場所ばしょ校門前こうもんまえくと、すでに一人ひとり退屈たいくつそうにベンチにこしけていた。ちかづくとあちらもこちらの存在そんざいづきる。


「スマン!おくれた!」

にすんなって」


 草凪くさなぎ達己たつみ笑顔えがおでそうこたえる。

 185センチ以上いじょあもある背丈せたけに、一目ひとめでわかるほど隆起りゅうきした筋肉きんにく、そしてツーブロックに襟足えりあしびたウルフカットやたかのようにするどひとみ注目ちゅうもくあつめる。

 威圧感いあつかんあたえる容姿ようしだが、野性味やせいみあるぎているせいで周囲しゅういにはあまりこわがられていなかった。くちくわえているキャンディーが一役ひとやくっているのもまぎれもない事実じじつだろう。


「またあまいものべて……これから夕食ゆうしょくだつってんのに」

べつにいいじゃねぇか」


 だからって夕食前ゆうしょくまえのひらサイズのキャンディーべるか普通ふつう

 デザートは別腹べつばらわれるけど、達巳たつみのは……なんかちががする……


「……まぁいいや。それで?慎慈しんじは?」

「あっこ」


 達己たつみ指差ゆびさほうると、二人ふたり女性じょせい談笑だんしょうする翡翠ひすい慎慈しんじ姿すがたがそこにあった。

 長身痩躯ちょうしんそうくではあるが筋肉質きんにくしつで、スタイルのさがはなれていても際立きわだつほどだった。美形びけいぶにふさわしい顔立かおだちちといた雰囲気ふんいきによって、るものを魅了みりょうしていた。

 慎慈しんじ人柄ひとがらさとコミュニケーション能力のうりょくたかさからだれからもかれていた。とく同性どうせいからの信頼しんらいあつく、よく相談事そうだんごとちかけられていた。

 慎慈しんじはこちらの視線しせんづくと女性じょせいたちとわかれ、こちらにあゆってきた。


ちくたびれちゃったよ」

「とてもそういうふうにはえなかったけどな」

「そう?まぁいいじゃん」


 慎慈しんじ人懐ひとなつっこい笑顔えがおけた。


「とりあえずみせかおうよ」

「ほぉうばぁぼ!ふぉなはふいふぁー!」

達巳たつみはやくそれえ………」


 存在感そんざいかんのある三人さんにん一同いちどうかいしたことで、周囲しゅうい注目ちゅうもくまとになっていた。

 三人さんにんとくにする様子ようすもなく、たのしそうに会話かいわをしながらそのあとにした。


            ※


 夕飯ゆうはんえた三人さんにん夕陽ゆうひけながらあるいていた。


「おさけ充分じゅうぶんったし、あとは……どこでむ?」


 慎慈しんじ先程さきほどコンビニでったさけはいったふくろつめながらった。

 三人さんにん地元じもと大学だいがくかよっていた。三年生さんねんせい前学期ぜんがっきわり、夏休なつやすまえあつまってめしにしようというのが今回こんかい経緯けいいだった。


「やっぱりいつものとこ?」

裏山うらやま最近さいきん私有地しゆうちになったみたいで、よく警備員けいびいん見回みまわるらしいけど」

べつにいんじゃね?どうせ中谷なかたにさんだろ?」


 裏山うらやま三人さんにんちいさいころからよくあそんでいた場所ばしょで、やまといってもさほど標高ひょうこうたかくなかった。三人さんにんのたまりとして現在げんざいもたまに使つかっていた。


「まぁ、ってみないと——————」

 

 そのときだった。突如とつじょ三人さんにん足元あしもと魔法陣まほうじんのようなものがあらわれ、三人さんにん周囲しゅういひかりつつむ。

 ひかり徐々じょじょあかるさがしていき、三人さんにん本能ほんのうがアラームをらす。

 三人ともこの異常いじょう事態じたい騒然そうぜんとし、あからさまにパニックをこした。


なにコレ!?」

「!」

「とにかくはなれろ!!!」


 三人さんにん咄嗟とっさ魔法陣まほうじんうえからはなれた。その直後ちょくご魔法陣まほうじんくらむような強烈きょうれつ閃光せんこうはなった。

 あたりがひかりつつまれ、三人さんにんとも必死ひっしおおかくす。

 ひかりよわまると、三人さんにん慎重しんちょう見開みひらき、地面じめん凝視ぎょうししたがなにもなかった。


なんだったんだ?いまの……」

「わからん。とにかくいや予感よかんはした」

「もしかして幻覚げんかく……?」


 三人さんにん徐々じょじょきをもどしていき、溜息ためいきをつく。

 怪奇現象かいきげんしょうまれた経験けいけんなど皆無かいむ三人さんにんにとって、恐怖きょうふかんじるのは仕方しかたのないことだった。

 仕切しきなおすかのように達巳たつみおもむろす。


「とりあえず裏山うらやまに—————————」


 そのとき、またおな魔法陣まほうじんのようなものがひかりともなって三人さんにん足元あしもとあらわれた。三人さんにんふたた緊張感きんちょうかんはしった。


「「「……………………」」」


 三人さんにん冷静れいせい魔法陣まほうじんえんからる。また強烈きょうれつ閃光せんこうはなち、魔法陣まほうじんえていった。

 しばらくくし、あたりを警戒けいかいするがとく異変いへんはないようだ。


幻覚げんかく…じゃないみたいだな」

「そうだね……冷静れいせい対処たいしょすれば問題もんだいないよ」

「ハァ〜……緊張きんちょうした…」


 けい一拍いっぱくいてはなす。


「で、どうする?どこでm——————」


 ピカーン


「「「……………………………」」」


 サッ  ピカーン


「もういっそのこ——————」


ピカーン


「「「…………………………………………」」」


サッ   ピカーン


「……とうら——————」


ピカーン


「………やまでいいよな……ひといないし」

「うん……そうしよう……」

「しつこいな……」


 三人さんにん裏山うらやまへとはしってった、背後はいごひかりはしら何本なんぼんてながら。

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