第49話 時宗4歳

今日は1歳になった美哉ちゃんが僕の家に遊びに来てくれた。


「美哉ちゃんは、あんよがお上手にゃ。でも危ないから僕と手を繋ぐにゃ」


── ヨチヨチと歩く美哉ちゃんが可愛いにゃ。


家の中をあちこち歩き回る美哉ちゃんが転ばないか心配で手を繋いだら、露子さんがたくさん写真を撮り始めた。恥ずかしいにゃ。


美哉ちゃんが、はしゃぎ疲れて眠ってしまった。叔父さんに抱っこされて気持ち良さそうに眠る美哉ちゃんは可愛いにゃ。


僕は露子さんに抱っこされてスーハーされた。


「露子さん」

「なあに時宗くん」

「僕はもう4歳にゃ」

「うん、可愛いねえ」

「もう赤ちゃんじゃないにゃ」

「大人ぶっちゃって可愛い〜」


露子さんが僕の頭にチュッとしてスリスリする。

「スリスリとかチュッチュとか、そういうのは結婚した人にしか、やっちゃいけないにゃ」

「やーん。時宗君たらおませさん! 可愛い〜」


「叔父さん…。なんとか言ってにゃ…」

叔父さんに助けを求めれば、美哉ちゃんに夢中でこっちを見ていない。


「時宗君が将来、美哉ちゃんと結婚してくれたら良いのに〜」

「何を言ってるにゃ」

「そしたらモフモフの孫が生まれるんだよ。絶対に可愛いよ」

「美哉ちゃんは従姉妹にゃ」

「いとこは結婚出来るんだよ」

「それはレアなケースにゃ」


露子さんが僕の良いところを撫でる。なぜ、そこが良いと知っているのか。

ゴロゴロゴロ……。

つい喉が鳴ってしまう。


「ねえ正宗ちゃん、正宗ちゃんはどう思う?時宗君が美哉ちゃんと結婚してくれたら最高だと思わない?」


気軽な感じで露子さんが叔父さんに同意を求めたら、美哉ちゃんを抱く叔父さんがポロポロと泣いていた。


「正宗ちゃん!?」

「…っく……美哉ちゃんがお嫁に行ってしまったら淋しいにゃ…ずっとパパと一緒にいて欲しいにゃ…ぐすっ…」

叔父さんがポロポロと涙をこぼす。


「ええ!? ちょっと! 泣くほどのこと!?」

露子さんが僕を抱っこしたまま右往左往する。


「露子さん、叔父さんはそのくらい美哉ちゃんを大切に思っているにゃ。美哉ちゃんの結婚を冗談にしてはダメにゃ」

「…ごめんね正宗ちゃん」


「叔父さんも美哉ちゃんを縛ってはダメにゃ。美哉ちゃんが大切なら美哉ちゃんの幸せを願うべきにゃ」

「時宗が大人にゃ…。誰に似たにゃ? 本当に4歳なのかにゃ? 人生何周目にゃ!?」


叔父さんが泣きながら、うちの父さんに疑問を投げかける。

「時宗の見た目は俺や正宗にそっくりだけど、中身は謎にゃ、歳上の飲み友達みたいにゃ。誰に似たのかは分からないにゃ!」



── 僕がしっかりしているのは、父さん達が、そんなだからにゃ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る