第48話 時宗3歳
生まれたばかりの美哉に会いにいったら、毛皮がなくて驚いた。
「おかあさん、毛皮がないにゃ。美哉ちゃんは女の子なのに…どうしようにゃ…」
立派な毛皮はケットシーのステータスだ。こんなにスベスベでは…いくら可愛くてもお嫁にいけない。
美哉ちゃんの将来を思って涙がこぼれた。
……というか、わんわん泣いた。
大人たちが笑っている。
「わらうなんてひどいにゃ! 美哉ちゃんは女の子にゃのに!」
…人族とのハーフなら、これが普通らしい。
ちゃんと可愛いから大丈夫、心配するなと宥められた。
── 事前に教えてくれればいいのに…恥ずかしいにゃ。
人族とのハーフの美哉はおっとりして可愛い子だった。たった1人の従姉妹で歳も近いので、割と頻繁に行き来して遊んだ。
美哉ちゃんのお母さんの露子さんには、ずいぶん可愛がってもらった。
遊びに行ったら美哉ちゃんがハイハイで僕のところに来た。
「可愛いにゃ、美哉ちゃんはハイハイ出来るようになったにゃ」
頑張って僕のところに来てくれたのが嬉しくて美哉ちゃんを抱っこすると、露子さんにたくさん写真を撮られた。
露子さんの口癖は“尊い”だ。
正宗叔父さんと同様に露子さんも美哉ちゃんを溺愛しているのだろうが、なぜか美哉ちゃんだけでなく僕に向かって“尊い”を連発する。
遊びにいくと露子さんは僕を抱っこしてスーハーする。撫で方もテクニシャンだ。ついゴロゴロと喉を鳴らしてしまう。
「はあ、時宗くん、尊い…。時宗君て正宗ちゃんの子供の頃に似てるよね?」
「よく言われるにゃ」
正宗叔父さんも似てると思っているようだ。
「ああもう可愛いなあ、尊いなあ。縫いぐるみみたい。子供の頃の正宗ちゃんにも会ってみたかったなあ」
僕はモフモフされたり、スーハーされたり露子さんにされるがままだ。
叔父さんは美哉ちゃんに夢中で僕を放置なので、まだしばらくの間スーハーされるだろう。
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