第47話 お正月気分と暖房制限
「それで従兄弟たちは帰ったのか?」
「うん。眠っちゃった宗平君はやっぱり可愛かったよ。起きてる間はギャングだけど」
眠った宗平を吉宗が抱っこして帰っていった。
「大人しく眠る宗平を美哉ちゃんが抱っこしている写真を何枚か撮っていたにゃ。家に着いて目が覚めてからその写真を見せたら、美哉ちゃんに会いに行くって泣いて暴れたらしいにゃ」
「そういう時、いつも宗一郎君に任せてばかりだったんだけど、今回は叔父さんと叔母さんで宗平君を宥めて…2人ともゲッソリしてたって宗一郎君から連絡がきてた」
「うちは美哉ちゃんも文治郎も聞き分けがよくて良い子だったから良かったにゃ。宗平くらい元気で行動力があって欲望に正直だったら大変だったにゃ」
「お爺ちゃんとお婆ちゃんは慣れてるみたいだったね。ママも我儘だったのかな」
「露子ちゃんは大人しい良い子だったそうにゃ。でも猫を多頭飼いしていた時に癖の強い子がいたから、かなり苦労して、いろんな本を読んで勉強しては試したらしいにゃ。宗平は猫並みにゃ」
今日は正宗&美哉の家で鏡餅を調理している。鏡開きには早いが、硬くなる前にさっさと餅を片付けたい。正宗と美哉だけでは食べきれないので文治郎の家族も利用する。
毎年、小豆からコトコト煮るのが正宗のこだわりだ。
「小豆と同じ重さの砂糖を入れるって勇気がいるにゃあ」
しかし遠慮なくドバドバ入れる。
「お餅が焼けたよ」
「コタツで食べるにゃ」
「お雑煮もいいけどお汁粉も美味しいね」
「文治郎はたくさん食べて成人式に備えるにゃ。健太郎と咲の分も持って帰るにゃ」
「サンキュ」
「文ちゃんはサッカー部の冬の大会もあるよね」
「にゃにゃ! いつからにゃ」
「3学期が始まったらすぐだな。開会式が成人式とかぶるから今年はサロンの手伝いは出来ないんだ」
「お弁当は任せるにゃ。文治郎は優勝を狙うにゃ」
「さすがに優勝は無理だよ。スポーツ推薦で集めた優秀な選手を揃えている私立には敵わないよ」
「なんだかズルくにゃいか?」
「あいつら頑張ってるんだよ。プロを目指して寮生活でサッカーに全力だし。かなり厳しい競争があるみたいだ」
「文ちゃん達、仲良いよね。学園祭にも招待していたし」
「ああ、あいつらスポーツマンだし、爽やかないい奴ばっかだからな」
爽やかないい奴なのはお前らの方だと思われていると気付いていない文治郎だった。
「ねえ、それより最近パパの抜け毛が多くない?」
「にゃ!?」
みょーん! と伸びるお餅を食べていた正宗が固まる。
「な、なななななにゃん……」
動揺して言葉が出てこない正宗。
「実は俺も思ってた……」
「はにゃにゃにゃにゃ…」
青ざめた正宗が倒れそうだ。
「暖房を効かせ過ぎなのかな?」
「それもあるな。ホットカーペットとコタツとブランケットに暖房の合わせ技だから」
「パパ!」
「にゃにゃにゃ…」
涙目で喋れない正宗。
「少し設定温度下げようよ!」
「にゃ?」
「まだ冬は始まったばっかりなのに冬毛が抜け始めてるんだよ、パパは寒がりなんだから、いま夏毛になったら2月とか乗り切れないよ」
「にゃ? にゃにゃ?」
「美哉、もしかしてハゲてきたと勘違いしてるのかも」
「ええ! パパはモフモフだよ。でも今の抜け方は換毛期の抜け方だよ」
「…よ、良かったにゃあ! ハゲていないにゃ」
正宗が美哉に抱きついて、にゃあにゃあ泣いて喜んだが、暖房の設定温度を下げられて悲しみの涙をこぼした。
しかし設定温度を低めにキープしたことと外出を多めにしたことで正宗の毛皮は急いで冬毛仕様に戻った。
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