第17話 パパと避暑地
スッコココー
「Slackの通知音にゃ〜」
頭にアイスノンを乗せた正宗がSlackを起動する。
「むう……」
「どうしたのパパ、何かトラブル?」
「依頼にゃ」
「お仕事?」
「そうにゃ。時々依頼を受けている制作会社から講師をやって欲しいって依頼にゃ」
「パパは教え上手だから向いているかも」
「相手によるかもな。美哉と俺の2人を相手におしえるのと大規模なクラスを受け持つのじゃ全然違うんじゃないか」
「5〜6人のグループらしいにゃ。技術面の知識は問題ないけど経験はゼロな採用内定者への研修らしいにゃ、いろんな案件をこなしてきた経験豊富なエンジニアを集めて実際の案件をヒヤリングから見積もり作成に制作、納品までさせる…新入社員の入社前研修って書いてあるにゃ」
「それって何日も通う必要があるんじゃ……」
「パパは涼しくなるまで昼間は外に出ない方がいいよ」
「それが…志賀高原で合宿らしいにゃ」
「志賀高原て長野県だっけ?」
「有名な避暑地だな」
「8月でも13度から23度くらいの気温だって書いてあるにゃ…」
「いいじゃん! パパは夏の間、昼間は外に出られなくてストレス溜まる上に運動不足だし、夜に散歩してても気温が下がらなくて辛そうだし! 避暑地なら自由に外に出られるよ!」
「……。」
「パパ?」
「おじさん?もしかして期間が長いのか?」
「1ヶ月……」
「なおさらいいじゃん! 帰って来る頃には暑さもやわらいでいるよ!」
「よくないにゃ! 美哉ちゃんを1人にしてしまうにゃあ……」
涙目でヒゲが下向きの正宗。
「美哉はうちで暮らせばいいよ。親父も母ちゃんも喜ぶ」
「そうさせてもらおうよ! 毎年パパが辛そうで見てられないもん……」
「美哉ちゃん……」
「いつからいつまでなの?」
「8月23日から9月20日までにゃ」
「明後日から!?」
「結構急だな」
「もともと予定していた講師が急病で運ばれて緊急手術をしたらしいにゃ。退院する頃には研修も終わってるにゃ。急いで別な講師を用意しようにも急過ぎて見つからないらしいにゃ」
「パパ、夏は仕事をセーブしているから頼まれちゃったんだね」
「この短いメッセージの中で12回も涼しいって書いてあるにゃ」
「その制作会社も必死のアピールだな」
「とりあえず受信したって連絡するにゃ」
ポチポチポチ……。
「パパ、受けないの?」
「俺もおじさんの健康のためには良い話だと思う」
「ダメにゃ…1ヶ月も美哉ちゃんを1人にしてしまう決心がつかないにゃ。夏休み期間中なら美哉ちゃんも一緒に行けたのに、もうすぐ2学期が始まってしまうにゃ」
「パパ……」
「…それに、こうやってグズれば勝手に条件をつり上げてくるにゃ。どうせ他に当てはないにゃ」
「…パパったら」
スッコココー
「返事がきたにゃ」
「何て言ってるの?」
「がっつりギャラを上げてきたにゃ。思った通りにゃ。同じ会社から毎年受けている案件なので問題を起こしたくないようにゃ。にゃっ! にゃっ! にゃっ!」
悪い顔で正宗が笑う。
「じゃあ、明後日から美哉はうちで預かるってことでいいか?」
「健太郎と咲に話してからにゃ」
「うちは大歓迎だよ」
「それでも物事には順番があるにゃ」
正宗が避暑地で過ごせることになり安心すると共に、文治郎の家で一緒に暮らすことが楽しみな美哉だった。
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