第11話 夏休みデート

「惜しかったね」

「うん、でも全力出せたし悔いはないかな。負け方も納得できる内容だった」


文治郎たちサッカー部は県大会の準決勝で敗れた。

相手チームは埼玉県内でもサッカーの強豪校として有名な私立学校でサッカー推薦枠で入学する生徒が多く、将来はプロ間違いなしのメンバーがレギュラーに揃っている。

対する文治郎たちの学校は県立の進学校として有名でスポーツの実績は地味だ。


それでもよく食い下がった。2対2で後半が終わろうかというギリギリのタイミングで決勝点を入れられた。休みなくサッカーに打ち込んできたメンバーに体力で負けるのは当然だろう。


「文治郎たちには次もあるにゃ。それにサッカーは文治郎たちのほんの一部にゃ。サッカーを取ったら何も残らない子たちと競っても意味がないにゃ」

正宗のコメントが今日も容赦ない。よその子に厳しすぎるし何も残らないは言い過ぎだが、文治郎たちの敗北が悔しいのだろう。プリプリしている正宗が可愛い。



期末テスト、終業式、県大会も終わり、本格的に夏休みだ。

今日は正宗&美哉の家で夏休みの宿題を片付けている。夏休みは午前中に文治郎と美哉でスーパーで買い出しを済ませて、3人で昼ごはんを食べて宿題に取り組むのが子供の頃からの習慣だ。


「私、今日はここまでにしておく」

「俺もキリがいいな」

「今日は買い物に付き合ってくれる約束だよね?」

「ああ俺も楽しみにしてた」

「支度してくるね!」


「…文治郎、しっかり美哉ちゃんをガードするにゃよ! 夏休み中はウェイウェイな頭の弱いクソガキが増えるからにゃ。ドンキホーテには行っちゃダメにゃ。美哉ちゃんを邪な目で見てくる不届き者がいたら手っ取り早く去勢するにゃ」


今日も正宗の愛が重いし、ドンキホーテに偏見を持ち過ぎだし、全体的にやり過ぎだ。美哉と付き合っている不届き者は自分ですとはとても言えない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る