第12話 パパの夏バテ
「今年の夏は暑いにゃあ……」
「パパ…」
「今年の暑さは異常だよ。おじさん、早めにカットして良かったよ」
モコモコの毛皮を1cmほどで揃えた正宗は、もはや別の種類の猫のようだったが、今年の夏の暑さに、すっかりバテてしまった。
一日中クーラーを効かせているがバテバテだ。
「プライムで注文した冷んやりマットも今日には届く予定だし、それまでお風呂にお水張って浸かってきたら?」
「そうするにゃあ……」
「さて、水風呂に浸かるおじさんを美哉が撮影している間にサッパリした飯でも作るか。」
正宗のブログで紹介するための写真は美哉が撮影している。なかなかの写真の腕前だ。
── 今日は疲労回復にビタミンB1を多く含む豚肉で豚しゃぶサラダそうめん、疲労物質を体外へ排出させるためにクエン酸を多く含む梅干しでスープにするか。スープにはワカメも入れよう。
── 明日は免疫力を高めるためにビタミンCを多く含むゴーヤでゴーヤチャンプルー、明後日はクエン酸たっぷりメニューでチキンの甘酢炒め、その次もクエン酸メニューで酢飯でちらし寿司、その次は豚肉に戻って生姜焼き…うん、夏が終わるまで飽きずに献立を組めるな。
ずぞぞぞぞー。
「美味しいにゃあ〜。文治郎のご飯は美味しいにゃあ〜」
「食べてももらえて良かった、明日はゴーヤチャンプルーを作るよ」
「ちょっと食べたくらいじゃ、うちの緑のカーテン減らなそうだけどね」
ベランダの緑のカーテンは暑さに弱い正宗が仕込んだが予想を超える成長で食べるのが追いつかない。
「もう食べないとダメそうなゴーヤは収穫してゴーヤチップスにしておいたから小腹が空いたら摘んで消費しておいて」
「文治郎が出来過ぎにゃ」
「そう?おじさんの真似してるだけだよ」
文治郎の言う通り、家事と育児と仕事を楽しそうにこなす正宗は超ハイスペックな男だった。美哉への溺愛が過ぎて気づかれていないのが残念だ。
正宗はデザート代わりにパリパリとゴーヤチップスを摘みながらブログを更新した。
夏バテであざとく舌を出してぐったりする正宗、水風呂に浸かる瀕死の正宗、水風呂で麦茶を飲んで生き返る正宗、ご機嫌で豚しゃぶサラダそうめんを食べる正宗。
可愛いが大渋滞のブログには豚しゃぶサラダそうめんと梅干しワカメスープのレシピも載せた。写真はインスタにもアップした。
明日の朝までにいいねとコメントが殺到するだろう。
この後、ブログ本を定期的に出版している出版社に正宗ファンのブログ読者から夏バテ解消グッズが山ほど届いた。冷んやりグッズは本当にありがたいと感謝する正宗だった。
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