第3話 ものは考えよう

先述の通り、神経難病の多くは、寝たきりになります。

徐々に動けなくなる身体と闘うことが、闘病の目的になります。

もちろん、勝てる確率は0%です。

著名人が病気やケガで入院して、必ず勝って戻りますと、力強くインタビューに答えておられますが、我々、神経難病患者は、闘病の結果は、100%敗戦しかありません。

しかし、経験豊富な医師や看護師の指導や体験談を無視せず、自分自身を過信することなく、自分自身にとって、何が重要なことかをきっちり判断して、事前に準備していれば、何も怖がることはありません。

自分自身の筋肉は、動かなくても、機械が代わりに動いてくれる時代になっているのです。

筆者は、すでに下半身が不随ですが、介護ベッドと車椅子の間の移乗は、電動ですが単独で行っております。

車椅子も電動ですので、リビングダイニングキッチンと自室を自由に動いております。

もちろん、腹筋を使って起き上がることは、出来なくなっておりますので、電動の介護ベッドでギャッチアップと呼ばれる、背中から頭を持ち上げる動きで起き上がり、電動のリフトで宙吊りで電動車椅子に移乗して自宅内をうろちょろ。

しかも、外出支援員が、週2回ほど散歩に付き添ってくれますので、陰気にならずにすんでおります。

ものは考えようですよと考えさせてくれたのも、実は、かかりつけ病院の看護師さんです。

最初、将来のことを話してくる看護師さんを疎ましく思ったものですが、歩く距離が短くなり、しゃがんだ時に、後ろ向きに転けることが出て、看護師さんの言っていたことが、実は将来に向けての準備の方向性を示してくれていたと気づきました。

リハビリをどんなに頑張っても、どんなにトレーニングしても、病気が進行するということがわかりました。

リハビリを頑張っていれば筋肉を守れるぐらいに考えてました。

そんなに簡単なことなら、誰も難病なんかで悩んでいないでしょうと言われて始めて。

なるほど、トレーニングやリハビリで、くい止められる程度の簡単な病気なら、偉い科学者さんや偉いお医者様がよってたかって研究していてわからないなどということがありますかって。

関西のオバチャン看護師さんだったので、少し言葉がきつく、反発があったのだと思いますが。

その看護師さんは、100%の献身的な姿勢で筆者のことを思っていてくれたのですね。

これがあったからこそ、重症神経難病にも関わらず、20年以上もの単独行動が可能になったのでしょう。

自身を過信して、リハビリを頑張っていれば進行を遅らせることができるという妄想に取りつかれている患者さんがいます。

しかし、やはり病気は進行してしまいます。

たしかに、適切なリハビリで進行を遅らせることは可能なようです。

筆者も、すべての神経難病に対して有効と言えるほど、患者さんの知り合いがいるわけではありませんので、確実に、リハビリによって、難病の進行を遅らせるとは言えません。

しかし、少なくとも関節を動かすことは大切なようです。

患者を取り巻く環境も大切なんですが、やはりパートナーの存在によってモチベーションは、かなり変わるようです。

重症神経難病の場合、身体の機能は失います。

遅かれ早かれ必ず。

自身の足で歩くこと、あきらめるのは、悲しいと思いませんか。

あきらめるのではなく、違う方法を準備せよと教えてくれた看護師さんには感謝です。

どうしても、自身の足で歩きたい方々は、リハビリで長く歩けるように頑張って下さい。

筆者は、要介護5でありながら、認知症で要介護2の母親の介護をしております都合上、自宅内をうろちょろする必要があります。

したがって、自身の足で歩くことより、車椅子でも、確実に自宅内を移動する方法を選ばざるを得ませんでした。

安全に確実に、毎日最低3回以上、単独で車椅子に移乗する必要に迫られたための苦肉の策をとっただけのこと。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る