第112話◇蝕む呪いの対策
一通り説明したところで皆を見る。
シノスハーティルは途中から付いてこれなかったみたいだけど、そこは後で解りやすく説明しとこうか。
「貨幣経済の問題点が解ったところで、その対策として重要なのが、生きていく上で必要な物を貨幣以外で入手できる手段を無くさないことだ」
これは俺達には当たり前のことだが。
シュトール王子が腕を組む。
「我々には神の加護がある。そこは
多種族国家ドルフ帝国では、貨幣に頼る部分も大きいからな。
ノスフィールゼロが発言する。
「もうひとつ話しておくことがありまスノ。これはテクノロジスを信奉する
ソミファーラが申し訳なさそうに困った顔で、
「
「
それを聞いてついノスフィールゼロを見る。なんだか誇らしげで嬉しそうだ。
「ノスフィールゼロ、今の言い回しってエルフか
「真似してみましタノ。これはなかなか気分が良くなる言い方でスノ。また、
お、なかなかしっかりしてる。
「それについては後程、お話するとしテ、話を戻しまスノ。
シュトール王子が、
「理由を教えてもらえるか?」
「ハイ、税を貨幣で集めるようになれば
ソミファーラが眉を寄せる。
「もう少し解りやすく説明してもらえませんか?」
「ハイ、まずは
「あぁ、えーと、エルフ同盟とドワーフ王国はシード暴落までは
レスティル=サハが、
「いや、知らない。別に興味が無い」
ディレンドン王女も、
「どのように使われてるかは聞いてはみたいですが、わざわざ調べるほどのものでは無いですわね」
「そうだろうなぁ。ドワーフ王国の武器、あとは刃物などはドワーフ王国で買った値の20倍から50倍ぐらいで取り引きされている」
「は?」
驚くディレンドン王女。
「エルフの森で取れた木の実や保存のきくキノコとか干した薬草の類いは、エルフの森で取れた不老長寿の薬として、中央まで持ってくと50倍から100倍の値がついてる」
「「はあ?」」
なにそれ? という感じで声を揃えるエルフ同盟の3人。
ルドラムが
「商人にしてみたら、安く買って高く売れば利益がでるから」
ノスフィールゼロがボードのリストに目を通す。
「これが搾取というシステムでスノ。流通が更に1段階進化シ、生産者と消費者が直接取引ができれば問題は無いのでスガ。間に入る中間取引者が買値と売値を操作できる権力を持てば、こうなりまスノ」
ディレンドン王女には解ったようだ。
「なるほど。貨幣を稼ぐには自分で作るよりも、他者を支配して作らせたり、ときには奪ったりしたものを横流しする方が利益が出るというのですわね。
ルドラムが補足する。
「それでもまだ足りないから、身分階級の低い同族の売買もして労働力にしてます。
「食料が
ノスフィールゼロが応える。
「ソコが我々、
税というものヲ、国ヲ、社会を作る根幹とするならバ、その税を貨幣で集めるということハ、その国は貨幣を集めることを主体とする社会が作られまスノ。
その結果として作る者よりも商う者が裕福となり権力を持つようになりまスノ。貨幣を大事にする
「では、何で税を集めるのが良いと?」
「それは種族ごとの在り方で変わるのでショウ。我々
「種族の性格、となれば私達ドワーフは鉱石や宝石、山の恵みというのが相応しいですわね」
「エルフは森の恵みというところか」
「ハイ。その上で貨幣が必要なときは品物で税を集めた国ガ、その品物を売って貨幣に変えれば良いでスノ。そこを手軽で便利と安易にしてハ、その負債を未来に残しまスノ」
「なるほど、嘘を得意とする
俺もそこは考えた。
もともとが
「多種族国家である以上、ドルフ帝国に住む種族が共通して価値を感じる物。こういうところで、貨幣は便利なんだ。ただ、ドルフ帝国には戦闘種が多い。1案としてドルフ帝国の兵隊を
「それがどういうことに、あぁ、兵役を税とするということか? なるほど戦闘種らしくその力で国を支えると」
「あとは
「検討してみよう。だが、ドルフ帝国では税の1部を貨幣で集めている。これはすぐには変えられない」
「すぐで無くていい。ただ、税の全てを貨幣で集めるようになれば危険だ、ということを知っていて欲しい」
「解った。それを知れば兄上なら何か方策を考えるだろう」
既に1度広まった貨幣をどうにかするなんてのは、一朝一夕ではどうにもならない。
「対策としてすぐにというのは難しいけど、単純に貨幣を手に入れる為に同族を売るのはおかしいって、皆が知っていればいい。それを忘れたのが
「
「それも考えた。ただ西方領域の混乱を見たところ、
「ふむ」
「
レスティル=サハが、
「前にドリンが言っていた
「あとは多種族との協調路線で、智者憲章を遵守する
ディレンドン王女が微笑む。
「まるで、毒のあるところを丁寧に取り除いて食べると美味しいお肉のようですわね。同族を売り渡すなどドワーフの誇りを忘れた者は、加護を失うでしょう。それを忘れる者など我が国にいないでしょうが、貨幣の呪いについては父上と姉に話しておきますわ」
レスティル=サハは、
「
「そういう言い方もあるか。量を間違えなければ薬にもなる、か」
これまで静かに聞いていたリアードが手を上げる。
「ドリンよ、貨幣にしろ戦争にしろ、作り出しては他所に迷惑をかける。そんな
ディストレックもそうだ、と言う。
「奴らがいなくなればアルムスオンは平和になるんじゃないのか。
そういう話は、出るだろうと思っていた。
だけどそれは溢れた
もうひとつは難民として
そうやって戻った
問題を起こす原因となる
だけど、
「これは俺の考えなんだが、
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