第59話◇空から潜入、マルーン街降下作戦
サーラントの背に乗り、大草原を越え、マルーン街へと向かう訳だが。
「これ、どうやって越えて行くんだ?」
呟くのは
見えているのは
ミトルが言ってたが、
あぶれた
「どうしたもんかな、これは」
ため息混じりに呟いてみる。
大草原の中、
ここさえ越えればマルーンの街までは近いのだが。
「迂回するか?」
サーラントの提案、だけど、
「時間がかかる上に、あいつらどこまで広がってるんだ? 障害物も無い大草原であれを迂回するには、どれだけ遠回りをしなきゃならないのか」
まったく面倒な。シャララが両手の指で丸い輪を作って覗いている。魔術の遠見で様子を見ている。
「鎧も着てないのがぞろぞろいる。人数集めてるけど、戦えるのってどれくらいいるんだろ? 槍は持ってるけど。奥の方には立派な鎧をつけてて、馬に乗ってるのがいる。ちょっと大きいのが……あれは前に馬車の上で見たのに似てる。
さて、どうしたものか。俺とサーラント。ネオールにシャララにラァちゃん。そしてノスフィールゼロ。
サーラントとネオールの機動力ならちょっとは無理もできるんだが。
ネオールがフワフワと浮かぶラァちゃんを見て、
「ラァちゃん、なにかこう、俺達をひょいっと隠しエリアに運ぶ魔術とか無いの?」
8枚の羽を揺らめかせて、空中であぐらをかいているラァちゃん。ぼんやりと
「ラァは何もできぬよ。ご先祖から
「聞いてはいるけどさ。増えすぎた
そういう解釈ってありなのか? それで
ラァちゃんはため息ついて。
「ラァの如き
「悪魔に関わることのみ、
シャララが振り向いて、
「えー、
「
「んー、スッキリしないなぁ」
このあたりが
サーラントがシャララの頭を指で撫でる。
「シャララもネオールも無理を言うな。かつてこの世界を守ってくれた
「そうだな。紫のじいさんも地上に出てちょっとなんか派手なことしたら、神の世界に送られるんだろう。地下の隠れ里でひっそりとしてるから、今もアルムスオンにいることができるんだろうな」
ラァちゃんが俯いて、少し寂しそうに。
「そういうことよ。ラァは
「
俺が手を伸ばすとラァちゃんはフワリと飛んで俺の手のひらの上に座る。
「それに俺達がこんなとこで死ぬようなことにはならない。ラァちゃんが守ってくれた種族の子孫てのはタフなんだ」
「ほぉ、ならば見せてくれるかえ?」
「まぁ見ててくれ。さて、これからだけどネオール」
「ん? なんだ?」
「何、ぼーっと見てんだ?」
「いや、ドリンがずいぶんと自然にラァちゃんを手に乗せてるのがすげぇなって。ドリンは相手が
「なにバカなこと言ってんだ。それに
「いやぁ? ラァは相手を選ぶのよ?」
「シャララも誰でもいいって訳じゃないよ?」
あれ、そうなのか?
「まぁいい。で、ネオール、俺を持って飛べるか? ここから
「シャララとラァちゃんならともかく、ドリンを、か。どれちょっと持ってみるか」
ネオールが俺の脇の下に手を入れて、地面を蹴って羽ばたいて。
「ちょっとキツいがなんとかなるか。
「それなら飛行中には筋力増加の支援魔術をかけるとして、ん、下ろしてくれ」
俺ひとりがギリギリか、そうなると。
「一旦、ここから離れようか。そこで説明して準備しよう」
「見つかって打ち落とされたくは無いので、夜を待とう。暗くなったらネオールは俺とシャララを運んで
サーラントが草の上に座って腕を組む。
「やりたいことは解ったが、それほど急ぐ必要があるのか?」
「考えすぎに終わればいいけどな。どうも嫌な予感がする。ここまで順調に来てるが、だからこそここでコケたくは無い。
「ずいぶんと
「侮ってやられるのは腹が立つからな。それにサーラントも言ってたろ。50センチ魔晶石、あれで何をするのか。ただの大きい魔晶石だと思ってたから売っぱらったんだが。魔術研究局が後になって50センチ級を探し始めた。それはあのサイズのものが必要になったってことだ」
「50センチ級魔晶石で
「解らん。可能性としては、超巨大
「どっちも、本当なら怖くて背筋がゾクゾクするんだけど」
シャララが赤い蝶の羽根を震わせる。サーラントが少し考えて。
「
「あと懸念しているのは、悪魔の召還か」
「
「あぁ、悪魔召喚の系統は
ネオールが眉を寄せて、
「いくらなんでもそれは無いだろう。上位悪魔の召喚なんて手を出したなら、その種族はアルムスオン全ての敵ってことだ。いくら
「悪魔崇拝者は
ラァちゃんは首を傾げて。
「はぐれた悪魔も見つければラァや他の
「そういうことになっている。俺もそうだと考えていた。アルムスオンに住む種族がアルムスオンに危機を呼ぶことなどしないと。だけど、
俺の話を聞いてたラァちゃんの目が、スッと細くなる。
「ほぉ、それは1度
「簡単に証拠が見つかるとも思えないけどな。調べるにしても、奴らが異種族の俺達を教会に入れることは無い。いずれ忍び込んで探すにしても、今のところ俺の推測というだけで確証は無い。とにかく、地上の戦場でも地下迷宮でも
「解った。となるとネオールとドリンとシャララがマルーンに向かうということだな」
「いや、ネオールは俺を運んだら戻ってサーラントと動いてくれ。地上の戦場でネオールの高空からの偵察は有効だろうから。ノスフィールゼロは
「解りましタノ。こちらで削岩機が作れないか試してみまスノ」
リュックからロープを取り出して、と
「ネオール、どう固定したら俺を運びやすくなる? ちょっと試してみてくれ」
「ほいよ。シャララとラァちゃんはリュックの中か? それとも俺かドリンの上着の中か?」
上位の悪魔なんぞを呼び出して、それをエルフもどきのせいにして、『このエルフが悪魔を呼んだ。
もしかして拐った異種族に何事かの責任をなすりつけるつもりなのだろうか?
なにを思い付いて何をしようとしているのか。エルフもどきを見ると、俺の予想とはまるで違うことを企んでいるのかも知れない。あんな策は俺には考えつかないから。
遠く離れたところでは
3万人以上集まった
人間にしか使えないというふたつの魔術の系統。集団魔術と悪魔の召喚。
本来、失われたはずの悪魔の召喚の系統が何故、
「強いぞ、速いぞ、すっごいぞ。風に負けない元気な子」
シャララが筋力増加の支援魔術をネオールにかける。シャララとラァちゃんは俺のチョッキの中に潜りこんで、俺の肩から脇の下にかけてはロープがたすきがけに巻かれている。
ネオールがそのロープを腰に巻き付けてる。俺の後ろに立つネオールが俺の肩のロープを掴んで、
「そんじゃ、行くぞ」
夜の闇の中、空に向かって飛ぶ。俺は上から見下ろして、
「サーラント。俺がいないからって暴れ過ぎるなよ」
「ドリンこそ加減を間違えるんじゃ無い」
おぉ、ここまで高く飛ぶとけっこう怖いもんだな。
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