第58話◇鷹人ネオールの説明、今のマルーン街
「じゃ、俺が出て来た時点でのマルーン西区、百層大迷宮の説明をするぞ」
立ち上がった
場所はエルフの森外縁部、
集まったのは前回と同じ、
俺とサーラント。
テーブルの上には、シャララと
レスティル=サハの旦那さんがみんなにハーブティーを持ってくる。……なんかいまだに旦那さんと呼ぶのに抵抗があるなぁ。膝丈のスカートから見える足も細いし。キラキラと花を飛ばしたりするし。
今回はエイルトロンもディストレックもクワンスロゥも、それぞれの率いる部隊の部下を連れて来てて後ろに立っている。副官という奴だろう。
その回りをこの町の
前回はノスフィールゼロの紹介とトンネル工事のことなので代表者のみ。
今は集まった
カッコつけようとしているらしい。
「まず、マルーン西区、百層大迷宮への入り口は騎士団に封鎖された。現在は
ここのエルフ同盟のエルフ達には
ま、ネオールが張り切っているから任せようか。
「
ネオールが取り出したのは賞金の書かれた人相書き。目付きの悪い
生きて捕らえたら1万cs 。
俺が賞金首ねぇ。人相書きを見つつ。
「サーラントは似てるな。頭にカチンときたときこんな目をしてる。俺はぜんぜん似てないけど」
「ドリンは似てるな。悪巧みをしているときこんな笑みを浮かべている。俺は似てないからこの人相書きでは捕まらんな」
「マルーン西区にいた
「
エルフ達もその紙に描かれた顔と俺達の顔を見比べて、なんかクスクス笑ってんだが。シャララも、うぷぷーとか変な声出してるし。ネオールが人相書きを片手でピラピラとみんなに見せながら、
「見ての通りの賞金首の人相書きだ。ドリンがマルーンの貴族を怒らせたって聞いたぞ。あとは怪しい動きをしてる探索者ってことで触るな凸凹と灰剣狼と猫娘衆がマークされた。あとは徴税所で悪名を馳せてるのと、なんかやるなら触るな凸凹だろって噂でお前らふたりを捕まえて、いろいろ吐かせたいんだろうよ」
「
「まったくだ。本気で探し出したいならその10倍は用意しろよ」
ネオールが人相書きを見直して。
「
ディストレックが手を上げて、
「それを聞くと、かなり
ネオールはニヤリと笑って。
「まぁ聞いてくれ。小迷宮と中迷宮なら5層毎にある転送陣のある部屋。これが大迷宮には10層毎にしか存在しない。古代魔術で作られた転送陣は登録した転送アミュレットが無いと使えない。で、転送アミュレットに階層登録できるのは、その転送部屋の前のボスを倒した
ネオールは自分の首にかけている転送アミュレットを取り出してみんなに見せる。ネックレスの先についてる小さな金属板に青い石が嵌め込まれたもの。
「30層ボスは1度討伐すると復活するのに約30日かかる。俺達で30層東側の骸骨百足は倒したから、あと15日は骸骨百足は復活しない。復活したところで俺達が先に倒せば、
ネオールは転送アミュレットのネックレスを首にかけ直して、指でピンと弾く。のって来たなネオール。
「ドワーフがいたら洞窟内で食事の加護もあるが、
「つまり、まとめるとどういうことか、簡潔に説明しろ」
調子にのってきたところに水を差されて、ネオールがクワンスロゥを見下ろす。
「まとめるとだな、1層、10層、20層の転送部屋は
レスティル=サハがネオールを見上げる。
「流石は百層大迷宮に挑む歴戦の探索者だ。それならばトンネル開通まで防衛することも可能というところか?」
ネオールはレスティル=サハの胸に下りかけた視線を素早くもとに戻して、
「あの地にいる探索者は、並じゃない。トンネルの方は140キロまで進んでいる。あと60キロ掘るまで守りきれるだろうよ」
「頼もしいことだ。ネオールよ、トンネル開通したら百層大迷宮について教えてくれ。メンバー募集してる
「いいとも。ま、向こうには
「は? スーノがいるのか?」
「なんだ、知ってんのか?」
「
「今じゃ百層大迷宮でトップクラス、40層級の
「そいつはいい。
俺は手を上げて発言する。
「盛り上がってるとこ悪いが、念のために。
ネオールが翼をすくめて、
「それについては警戒してはいるんだが。ただ、人員と
サーラントがネオールに、
「トンネル開通は間に合わないか。
「ウジャウジャいてよく解らん。3万くらいか? さらに増えそうだった」
「
「見つからないように接近しなかったからなぁ。武装とか細かいとこまでは解らん」
「そうか。今回は3万以上か」
「すまん、サーラント。俺は戦争用の偵察とかしたこと無いんだ。今回も見つからずにここまで来ることを優先してたし。役に立てなくて悪い」
「いや、ネオールのおかげで助かってる。ドルフ帝国はどうだ?」
「
「重
ディストレックが立ち上がる。
「それが分かったら俺が『闇牙』連れてその兵団赤の応援に行くとするか」
「それなら
「いや、
俺はこのあたりの地形を頭の中に描く。
「そうだな、もしもあの
サーラントが後を続ける。
「いるかどうかも解らんが、念のために探した方がいいのか」
「エルフの森の周辺調査は
「ネルカーディはエルフもどきとそれに追われた者も探してくれ」
レスティル=サハがテーブルに身を乗り出す、その胸がテーブルに乗っかって形を変える。むにゅん。
「ネルカーディの魔術戦隊だけで足りないところは、大草原から避難してきた
「解った。メンバーは私が選んでいいのね?」
「そこは任せる」
ディストレックが慌てて、
「おい、レスティル=サハ。俺達は
「
「
いや、カッコつけて言ってるが、それって
大丈夫なのか
「ドリン、私達はどうしようか?」
シャララが聞いてくる。どうしようかと言われても、
「地上の戦争となれば俺達には出番は無い。エルフの森からのトンネル工事の目処がついたら、百層大迷宮に戻るつもりだったんだが」
「ネオールの話じゃ大迷宮入り口に入れそうに無いんだけど?」
「そうなんだよなぁ。ところでネオール、西区の住人はどうした? 商人で残ってるのは故郷に帰ったのか?」
「あぁ、西区は全員街の外に出た。
ん? 脱出完了?
「ちょっと待て、脱出完了ってどういうことだ? 異種族が団結して暴れないように
「言ってなかったか? マルーンの街は門を閉じて異種族を閉じこめようとしたんだ。それで探索者の精鋭で西区の残った住人を街の外に逃がしたんだ。そのときに迷宮入り口でバトルしたんで警備が厳重になっちまった」
「いや、妙だろ。なんで
「俺に聞かれても。妙っていうなら西区の住人が何人か行方不明なんだ。家族や友人に黙っていなくなるような奴じゃ無いってのが、10名ほど消えてる。それもあって住人の脱出を急いだんだけど」
「なんか
「前に
「いなくなった種族は解るか?」
「えーと、エルフだろ、
「それ、エルフ以外は傭兵として戦力としてどうなんだ?」
「そういやそうだな。共通してるのは、
「「ほーぅ」」
そこにいるエルフ全員が目を細めてネオールを見る。
「待て待てまって、俺は可能性を言ってるだけで俺が拐ってんじゃ無いからな? エルフと
エイルトロンが半目のまま、
「大草原周辺の
「あいつら戦争が終わる度に誓約して、戦争前にはいつも忘れてるじゃないか。
サーラントが拳を顎に当てて考え込む。
「ここで異種族を拐って何をしたいのかが解らん。調べてみたいところだ」
「あ、なーんか嫌な想像しちゃった」
シャララが苦いものを口にしたように顔をしかめる。
「食料不足解決のために異種族を
「奴らならやりかねん。食用に研究するつもりで拐っていったのかもしれんな」
ディストレックが眉を吊り上げて、
「エルフもどきといい、まったく気色悪いな
「待った。拐われたかどうかも解らん。それを調べる為にもマルーンの街に戻るとしよう。俺とサーラントとシャララでマルーン西区を調べてみるか」
ネオールが口を出す。
「触るな凸凹でも今のマルーンの街を調べるとか無理だろ。あの街はもう
「ここにいてもすることも少ないし、迷宮入り口なんてのは、砦を突破すればいい」
どうにも
「エイルトロン、魔晶石あるだけ分けてくれないか? それと水精石を少し。強引でもなんでも、1度隠れ里に戻ってみるか」
「なら、ラァもついていくかや。ただ、戦闘には手を貸さぬよ」
「ラァちゃん、ついていくるのか? やめといた方がいいんじゃないか?」
「むーちゃんに会うだけよ。なんぞあればひとりで逃げるゆえ、気にすることは無いわ」
「まぁ、それならそれで」
神への誓いなのか、今の世界に影響しすぎないように気をつけているようだし。
悪魔に関わること、またはアルムスオンの危機であればその限りでは無いのだろうけど、
全力の
さて、準備ができたら戻るとするか。
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