第52話◇灰エルフの町、エルフ臨時会談
「全員揃ったところで改めて自己紹介としようか。私は
大きなテーブルの奥、足を組んで堂々としている
優しい目をしているが、男前な姉御という感じ。組んだ腕にたっぷりとした胸を乗っけている。胸に隠れて手が見えない。さすが
俺達から見てテーブルの右に並ぶふたり。奥の
「
金髪に翠の目に長い耳、白い肌。エルフは見た目で年齢は解りづらいが青年というところだろう。エルフの中で数が多いのが
「
ペコリと頭を下げて席に着く。エイルトロン、キッチリしててなんか貫禄あるな。
手前に居るのは
「
なんだか言外に一枚噛ませろ、と聞こえたような。それを聞いた奥の
「それなら私の祖父はエルフ同盟長老会のひとりです。長老会への口聞きなら私に」
おっと、なんかもうトンネル入り口の取り合いでもしてるのか?
テーブルの左にはむっつりとした背の高いエルフ。見た目は
「
俺は初めて見るがこれが
エルフは顎が細いけど、
「そのトンネル工事の責任者、
「族長会議も長老会も通さないものなど認めない」
腕を組んだまま言う。ふむ、なんか偉そうだな。
「緊急で一刻も早くトンネル開通しなきゃならんのなら、エルフの森外縁部のこの町がいいに決まってんだろ。トンネル工事に詳しく無いが、距離も近くて木の根が少ない方がいいんじゃないか。族長会議してもおそらくここで決まるぞ」
「長老会も同じ結論になるんじゃないですか。迷宮の魔獣が出てこないか見張るために防衛体制を作る必要がありますが。森の奥に迷宮の魔獣が出てこられても困るので、トンネル出入り口は森の外縁部の方が都合はいいでしょうね。
なにか言おうとする
「トンネルの話は後回しだ。先に聞いておくことがある」
「ふん」
エルフ同盟参加の種族間には、なにやら俺達の知らない事情や関係があるようだ。
テーブルの上の青い蝶の羽根の
「シャララがお世話になってます。
身長はシャララよりちょっと高いかな。それでも31、2センチというところ。族長と言われても可愛い女の子にしか見えない。
「ようこそ、エルフの森へ」
にっこり微笑んで歓迎してくれる。癒される。これが
続いてテーブルから飛び立つのは透き通るナイフのような4枚羽根の
「
こちらは身長40センチの男の
「シャララから聞いてる。あの無限の魔術師、グリン=スウィートフレンドの練精魔術を受け継ぐ2代目だって。時間がとれたら是非とも俺と魔術談義を」
「これが終わったら。俺も
次はこちらの番。俺とサーラントとシャララが自己紹介を軽くして、それからテーブルの上のノスフィールゼロに全員の視線が集まる。
「初めまして、
「なんとも風変わりな種族だな」
ノスフィールゼロは胴体から6本指の触手腕をにゅにゅっと伸ばして、ディストレックと握手する。
「見た目はアルムスオンの種族とは大きく違いまスガ、友好が結べれば、と願ってまスノ」
「こちらこそよろしくな。おー、指が6本有って骨が無い。こんな握手は初めてだ」
族長レスティル=サハが、議題を始めようと手を上げる。
「ノスフィールゼロには申し訳無いが、先にこちらの緊急議題だ。
俺とサーラントとシャララで黒装束との遭遇戦のことを話す。
「
俺の推測に族長レスティル=サハが片眉を上げて言う。
「いや、ドルフ帝国もドワーフ王国も、エルフが何の理由も無く
「
サーラントも頷く、
「やるだろうな。ドルフ帝国にはあの隊長とネイディーが伝えるから、ドワーフ王国にも教えてやった方がいい。エルフの振りをした
族長レスティル=サハが舌打ちする。
「ふざけた話だが、早いとこドワーフ王国に知らせた方がいいか。それと黒装束の死体はエルフの長老会に見せたい。こちらで預かってもいいか?」
「そのために持って来たから、あれは好きにしてくれ」
「解った。それと
「そのあたりはドルフ帝国と話をつけて欲しい。俺達が連れて来たわけだが、あの3人は俺達のものってわけじゃ無い」
サーラントが補足して、
「あの隊長が
「まったく気分の悪い話だ。
「エルフの森外縁部のここを拠点に集まりましたけれど、森の外で悪さをされるとは。これで森に入ってきたら遠慮は要らないですね」
レスティル=サハは顎に手をやって考えている。
「相手が
「
「戦闘能力の無い者は種族の区別なく受け入れよう。
レスティル=サハはにこりと笑う。なるほど、そうすれば逃げてきた
「なので、できるだけエルフの森に逃げられるように手伝ってあげて欲しい」
テーブルに着く全員が了解の意を示す。
「では、次にトンネルについて、なんだが。ノスフィールゼロには1度エルフ長老会に顔を出して欲しいんだけどいいか?」
「こちらからお願いしまスノ。できればエルフの森に住む族長皆さんにご挨拶したいでスノ」
「私も百層大迷宮に住むという
「
「クワンスロゥ、これは
「そのことなんだが」
俺はレスティル=サハの話に口を挟んで手紙を取り出す。
「ドワーフ王国、第二王女、ディレンドン王女からエルフ同盟への手紙を預かっている」
激流姫ディレンドン王女の手紙を
レスティル=サハは手紙を一読して、
「はは、これはおもしろい。シャララとネオールに聞いていたけど、ドワーフの王族を動かす探索者なんて聞いたことが無い。これが一流の探索者、触るな凸凹というもの?」
「ディレンドン王女と話ができたのは偶然というか、妙な流れに乗った結果というか。近いうちにディレンドン王女がドワーフの職人軍団を連れてくる。トンネル工事現場で受け入れて欲しい」
「解った。この手紙は他の族長にも見せないと。
「どれどれ」
ソミファーラはふわりと飛んでレスティル=サハの肩に乗る。
「俺は族長の息子で、非常時には族長代理もするから見てもいいよな?」
「そうだな、ディストレックも読んでおいてくれ。他はダメ」
3人が並んで仲良く手紙を読んでる。仲良しさんだ。3人は、おー、とか、ほほぅ、とか口にしながら読んでいるので、テーブルに着く他の面子は気になってしょうがない様子。そわそわしてる。
レスティル=サハの旦那さんにハーブティーのお代わりをもらう。旦那さんと呼ぶのにかなりの違和感を感じるんだが、旦那さん、なんだよなぁ。胸がぺったんこの美少女にしか見えない。膝丈スカートを履いた旦那さん。旦那ちゃん?
目が合ってにっこりされるとドキッとする。妻が3人いる男なのになんでバックに花が咲くんだ?
手紙を読み終えた3人が元の席にもどって、レスティル=サハが口を開く。
「
「
「だけど、他のエルフ族長に長老会を動かしたいなら、エルフが乗り気になる材料がもう少し欲しいところ。そのあたりを聞かせてもらえるかな?」
ふむ、エルフにとっての利点。トンネルができた後のエルフの利、か。
トンネル計画のもうひとつの側面、もうひとつの策について話してみるか。
これはエルフ同盟にとっても、この先のことを考えてもらうのにいいかもしれない。
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