第9話 お金
実は昔のむかーし、オムツやおもちゃ屋さんのモデルをしていたことがあるのだ(私にはそんな記憶はないけど)
母が言うにはそれなりに色んな雑誌やポスターに載ったり、幼児番組にも出ていたらしい。その時のお給料を両親は一円も使わずに残してくれている。
もしかしたら、学部によっては少し足りないかもだけど、数百万円は自由に使えるのだ。バイトしてもらえばいいよね…。
武志に使ってもらえるなら私は嬉しい。両親だって許してくれるはず!
「お前はどうしてそんなバカなこと言ったんだ!山岡という男は誰なんだ。大事な楓の貯金を渡す訳にはいかないだろう。今からそんなんじゃ、楓、男に騙される人生を歩むのが目に見えるぞ…。父さん、悲しいぞ…」
「そうよ、楓ちゃん。大学資金を出すなんて、お母さん楓ちゃんの将来が…心配すぎて…泣きたいし吐きそうよ」
こんなに反対されるとは思わなかった。私っておバカさん(笑)
なんてふざけたことは言っていられない。
「確かに。お父さんやお母さんが誰かわからない男の人に、お金はあげたり貸したり出来ないよね。わかりました。変なこと言ってごめんなさい」
「分かればいいんだ。さ、バカな話はやめて、勉強しなさい。お前は大学にしっかり行って、何か資格を取るんだ。信じてるからな…」
「お父さん、なら、私と山岡くんが家族になったら、その貯金も山岡くんと一緒に使えるよね?」
「ああ?何言ってるんだよ楓ー。山岡とどんな話をしてるんだ!山岡を連れてこい。二度と楓に近づくなって言ってやる!」
まずい。逆上させてしまった…。でも、わかるの。きっと武志以上に好きになる人は絶対にあらわれない。
「待ってて、お父さん。今連れてくるから!」
「こら、待ちなさい。楓!連れてこなくて良いから!」
「待っててってば。絶対お父さんもお母さんも、武志のこと気に入るから!」
私は急いで武志の家に向かった。人を好きになると、思いもよらないパワーが湧いてくる。数ヵ月前の私なら、絶対に考えたりしないことだろう。
チャイムを鳴らそうとした瞬間。玄関のドアがガチャリと開いた。
「武志っ!」
「楓!どうした?すごい慌てて。あれ、今日は約束してないよな?」
「私、武志とずっと一緒にいたい」
「ああ?なんだよ、それを言いに来たの?俺もそうだよ。ずっと一緒にいたい」
「…結婚したい」
「ええ?」
「ええ?変かな」
「どした急に。や、ゆくゆくはいつか、ね。俺たちまだ学生だしさ。そんな慌てなくても」
「結婚して家族になって、そしたらお金渡せるから!一緒に大学通えるから!籍だけ入れよう!ね?武志。お願い」
「楓…。気持ちは嬉しいけど、大学資金はもらったり借りたり出来ないよ。俺、奨学金貰えるよう頑張ることにした。全てにおいて努力して大学に行かないと、中途半端な気持ちでは頑張れないからさ」
「奨学金!そうかー。そうだよね。それなら私のお金いらないか。結婚もしなくていいよね」
「違う違う。お金はいらないけどさ、結婚はしよう!大学卒業して、就職して、焦らないでよ。ずっと俺は楓だけを好きだったんだから。ずっとこれからも変わらず好きなんだから!」
「武志…」
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