第7話 雨降ってなんとやら
カフェを出て私たちは二人ならんで歩く。
武志はいつも友達を連れてきていたのは、私から別れ話をされないように、予防線を張るためだったと言っていた。ゆきなに彼氏だとすぐ言えなかったのは、こんな俺が彼氏だったら、バカにされたら私に悪いと思ったからだとも言っていた。
私は彼氏をコロコロ変えていたのは、武志の言うとおり、好きとか何もわからないままとりあえず彼氏という人を側に置きたいどうしょもない女だったのかもしれないと、振り返って思ったことを伝えた。それでも、教室で朝武志に言われたことは傷ついたと…。
武志だけは、とりあえずとか中途半端な気持ちで向き合うのはおかしいと思っていたのに、付き合い始めて気持ちが追い付いていなかった。誰彼構わず付き合いたかった訳じゃなかった。
武志はただ黙って聞いてくれた。
「私、本当に好きな人が始めて出来たよ。ありがとう。高岡くんに気付かせてもらった」
「楓、今の流れだと高岡が好きみたいになってるから(笑)」
「違っ。ごめん。話の構成がおかしかったね(笑)」
武志が急に私の前に回り込んで、手をぎゅっと握って顔を近づけてきた。
「わ、わ、わわ、私、初めてなの!!!」
咄嗟に顔を手で隠してしまった。
「嘘?あんなに彼氏いたのに?」
「だって…、したくなかったんだもん。今まで」
「今は?」
「今は…。聞かないでよ、ばか」
武志はもう一度ゆっくり顔を近づけてきた。今度は離れることはなかった。
学校を初めてさぼった高3の夏。本当に大好きな人に気付いた。大好きな彼氏とは、別れる理由なんて考える必要はない。自然に楽しくて、うれしくて、二人が幸せになれることをたくさん考えちゃうんだ。
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