第5話 言い争い
「楓ー。昨日は突然帰るから、友達の子びっくりしてたよー。あんまり仲良くなかったのか?まあ、楓の雰囲気とは違うタイプだもんなー」
武志は笑いながら私に話しかけてきた。高岡くんと一緒に。なんだか無性に腹が立った。
「私と違うタイプってなに?ゆきなはふわふわかわいい女の子で、私は男を取っ替え引っ替えするうるさい女ってこと?」
「何だよ、そんなこと言ってないだろ」
「だいたい、どうして武志はいつも男友達を連れて私のところに来るの?どういうつもりなのよ!」
「いや、どういうつもりって…。友達なんだから、別に一緒でもおかしくないだろ」
「なに、まさか武志本当は男子が好きなんじゃないの?私とはカモフラージュカップル?変だよ、武志」
「変って…。お前なあ…。楓の方がよっぽど変だろ?よくそんなに男をコロコロ変えれるよな。俺のことだってもうすぐ振るつもりなんだろ?お前の方がカモフラージュしてんだろ。男が好きなんじゃなくて、ただ楓は彼氏がいる自分自身が好きなだけだろ?」
自分自身が好きなだけ…。
頭にガツンと響いた。
「おい、武志…。言い過ぎだって…」
高岡くんが私たちの間に入ってくれた。
「ごめん、言い過ぎたわ。俺、ちょっと抜ける。担任に言っといて。腹イター」
「ちょっと武志。待ってよ!!」
「あのさ楓ちゃん、武志がどれだけ楓ちゃんのこと大切にしてるか知らなすぎるんだよ」
高岡くんがゆっくり話し始めた時、ちょうど涼子が教室に入ってきた。私の異変に気付き隣に駆け寄ってくれた。
「武志さ、入学式の時から?違うな。合格発表の時からずっと楓ちゃんのこと好きだったんだよ」
「え?!」
そう言えば武志が私をいつから知ってるなんて、聞いたこともなかった。しかも合格発表って、いもくさーい中学生の頃だし…。恥ずかし…。
「すごいかわいい子が同じ学校に合格したって、俺すぐ聞かされたよ。同じクラスになりたいってずっと言ってたけど、1年の時はアイツは2組で楓ちゃんは10組で。全然探せなかったみたい」
2組と10組は校舎も違う棟だし、合同授業もなかなか無いので、顔を合わせることはほぼない。
「でも体育祭で応援団にいた楓ちゃんを見つけたらしくて、すげー張り切ってたんだよなあ。それで名前とかいろんなヤツに聞いて、無事クラスと名前をしっかり覚えたらしい。アイツんち、ちょうど引っ越しもしてさ、運良く同じ地下鉄沿線だってこともわかったみたいで。軽いストーカーみたいだったもんな。楓ちゃんと同じ時間に乗り合わせる様にしてさ。あれは引いたけどな(笑)」
うそ。知らなかった。武志がずっと私を探していたなんて。
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