第4話 告白


 それから武志とは地下鉄が同じと言うこともあり、一緒に帰るようになった。思えばあの頃は二人きりだった。


 もちろん、その頃も彼氏がいたりいなかったりしていたのだけど、武志と付き合ってみたいと言う気持ちは治まってしまっていた。


 時々、スタバに寄ったり、ゲームセンターに行ったり、映画なんかも見たりしていた。

 彼氏もいるのに、なんかだらしないなあと自分でも思いながら。でも言い訳じゃないけど、武志とは友達になっていたのだ。


 そんな関係が1年以上続いた、つい3週間前。武志がポツリと言ったのだ。


「俺、楓と付き合いたい」


「!?今さらぁ?付き合うとかって概念、私たちに必要かなぁ?(笑)」


 そうなのだ。付き合うとか、その枠組みが私たちには必要ないと思っていた。祐司と別れたばかりだし、武志とは普通に一緒にいて楽しい友達だったし、本当に付き合う意味はないと思ったのだ。あえて付き合ってしまえば、必ず来る別れを武志と迎えることになってしまう。私は彼氏と全然続かない恋多き女なのだから。


「俺、楓がコロコロいろんな彼氏と付き合ったり別れたりしてるの、ずっと見てきてるけどさ。全然気にしてないから」


「うーん。私、武志のことは大切な友達だと思ってるから…」


「どうしても別れたくなったら、付き合ってたこと抹消しよう。記憶消そう(笑)別れたあとも、今までと変わらないから!だから付き合おう!俺は別れたくなることないと思うけどさ。決めるのは楓でいいから!」


 今まで付き合ってきた彼氏はだいたい一目惚れされたり、わたしが声を掛けたりして、友達期間がないまま付き合い始めていた。

 だから…。だからではないけど、彼氏たちと別れても、日常生活がガラリと変わるほどのことがないと思っていた。

 もとから日常にいない人だったのだから。

 でも、武志は?

 武志と別れたら、わたしの日常は変わるかもしれない。


 じゃあ別れなければいいのに。そうなんだけど、私はすぐ別れたくなる気がする。どうしたらいいのだろう。私は本当に好きな人とずっと付き合っていたいだけなのに。本当に好きな人って、どうやったら出来るのかな。


 押しきられる形で、私たちは付き合い始めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る