第3話 出会い
武志と出会ったのは一年生の秋の体育祭だ。1学年400人の私たちの学校は、同じ学年でも名前も顔もあやふやな人も多い。
夏休みを過ぎても、私は武志の存在を知らなかった。
野球やサッカー、バスケット。マラソン等の陸上競技。応援合戦にブラスバンド。3日間に渡って行われる体育祭は、かなりの大イベントだ。 運動が苦手な私にとっては地獄の3日間になるけれど。
武志は時間的に出場出来る競技には全て参加し、どの競技でもみんなの視線を集めていた。
1000年に1人のスポーツが万能過ぎる一年生(笑)
体育祭後もしばらく色々な学年の生徒や教師からそう呼ばれていた。私は応援団の隅の方で、ポンポンを振り回すだけ3日間だったのに、武志は先輩やクラスメイトたちに囲まれて輝ける高校生活を満喫していた。
かっこいい。
そう思ったのは嘘ではない。当時の彼氏も武志のことは知っていて、男子の中でも話題になるくらいのイケメンだった。おまけに性格もかなり良くて、勉強もそれなりに出来るタイプだった。
モテない訳がないのに、彼女はずっといないんだよと当時の彼氏たち(笑)は教えてくれた。
体育祭から数週間経って、偶然にも地下鉄で隣に立つシチュエーションになった。すでに彼氏をコロコロ変えていた私は、武志という存在を知り、是非付き合ってみたいと思っていた。これはチャンス!声をかけようとした瞬間、武志は友達に囲まれてしまった。
次の日も偶然同じ時間の地下鉄に乗り合わせたけれど、話せず。また次の日も、そのまた次の日も…。
気付けば一年生もあと数日になっていた。
「あの、地下鉄ずっと同じですよね!」
やっと話せた時、武志はすごい大きな声で返事をしてきた。
「はいっ!!!!」
自分でもびっくりするくらい大きい声が出たらしく、すぐ黙って照れていた。車内はガラガラ。武志の声で寝ていた赤ちゃんも起きてしまった。
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