設定集 人名(教国)


★カショウ=シン=ズダ


 バラトリプル教国の座長。高齢により病床に臥せる誇り高き指導者。

 実質的な国家元首であるが、清貧な人物で富や権力への欲はなく、若い頃から只管ひたすらに修行に明け暮れる日々を送っていた。

 温厚で徳の高い人物であるが、人を疑わない性格が災いしてダイバ老師の暗躍を招き、陰謀が暴かれた後は健康上の理由もあって座長を辞任した。

 名称は仏教十大弟子が一人、頭陀ずだ第一、摩訶迦葉まかかしょうより。釈迦しゃかの後継者として結集けつじゅうの初代座長を務めた。



★アナン=シン=タモン


 バラトリプル教国の高僧。実兄であるダイバ老師と次期座長を争う忍耐の徳者。

 何事においても直に見聞し、分析して行動に移すことを信条としており、ミストリアと遭遇した際には即座に天人地姫であることを看破して五体投地した。

 ダイバ老師の行動にも疑念を抱いていたが、現状では情勢を覆すことは出来ないと諦観しており、唯一最後まで自分を支持していたダシャラタに翻意ほんいを促そうとした。

 レイネリアたちによりダイバ老師の悪行が白日の下に晒された後は、辞任したカショウ老師の後を引き継ぐ形で座長代理に就任する。

 名称は仏教十大弟子が一人、多聞たもん第一、阿難陀あなんだより。釈迦の侍者として常に説法を聴いており、宗派によっては仏教の第三祖ともされている。



★シャーリプトラ=シン=チエ


 バラトリプル教国の建国者。五百年前の人物で、神皇を断罪して武装蜂起した説法者。

 その説法は精神操作の域にあったとも伝えられ、皇国からの離反時には自治都市クシナガラのみならず、周辺部も競うように同調したという。分離独立後は帝国及び教国と三国同盟を締結、大戦の勝利者となった。

 終戦後にミストリアから天人に関する真相を聞かされたことにより、シャーキヤの教義の本質が天人支配からの脱却にあったことを悟るが、火の天人アグニへの崇敬から旧皇国時代の遺構の保全に努めた。

 名称は仏教十大弟子が一人、智慧第一、舎利弗しゃりほつ(サンスクリット語でシャーリプトラ)より。二大弟子として釈迦の後継者と目されていたが、重い病に罹り没した。



★シャーキヤ


 ヌーナ大陸で広く信仰される宗教の開祖。菩提樹の下で天啓を受けたとされる覚者かくじゃ

 大戦よりも遥か古の時代の伝説的な人物で、一説にはネビケスト皇国の建国にまで遡るともいわれている。

 教都クシナガラの中央部にはシャーキヤが創建したとされる精舎しょうじゃがあり、今なお重大事項の決定には結集の場として用いられている。

 名称は仏教の開祖ガウタマ・シッダールタの尊称・釈迦牟尼しゃかむにより。シャーキヤは出身部族や領国を指す名称で、シャーキヤ族の聖者の意。



★ラーマ=ギ=イクシュヴァーク


 バラトリプル教国の戦士階級クシャトリヤの青年。単純明快ゆえに何事にも動じぬ強さを持つ褐色の武人。

 鶏冠石けいかんせきの髪と薔薇色の瞳を持ち、相貌には幼さとたくましさを同居させている。軽薄そうな口振りが多いが、決して馬鹿でも不義理でもなく、一度決めたことには迷わず突き進む猪突猛進型。

 戦士として剣の心得があるが、その本領はまさに弓にあり、素人ながらも武芸に目の肥えたレイネリアをして、魔法と区別が付かないとまで称される技量を持つ。

 親が決めた婚約者のシータとは相思相愛の仲だが、次期座長を巡る陰謀により両家が対立したことで駆け落ち同然に教都を逃れてきた。

 ダイバ老師の陰謀が暴かれたことで両家の関係は修復され、無事にシータと婚姻することが出来たが、もっぱら尻に敷かれているという。

 名称はインド神話の英雄ラーマより。インド二大叙事詩の一つ『ラーマーヤナ』の主人公で、誘拐された妻シーターを救うために羅刹らせつの王ラーヴァナに戦いを挑む。



★シータ=ギ=ミティラー


 バラトリプル教国の戦士階級クシャトリヤの少女。冷静な表情に優しさと強さを秘めた敬虔な教徒。

 赤支子あかくちなしの髪と黒色の瞳を持ち、少女と大人の中間にしてどちらにも属しきらない魅力を持つ。普段はしっかり者のように相方のラーマの手綱を引いているが、案外と短気な一面もあり、謂わば似た者同士である。

 戦士階級であることから魔術師としての力量は高く、特に水属性を得手としており、上位攻性魔法の『氷姿雪魄パーマ・フロスト』を操る。

 ラーマのお目付け役を自称しているが、実は心の底から彼のことを愛しており、彼から離れては生きられないとまで考えている。両家の対立による出奔しゅっぽんは彼女から持ち掛けたものである。

 ダイバ老師の陰謀を暴く過程でラーマの実家のイクシュヴァーク家から認められ、後に両家の関係が改善されたことで晴れて結ばれることが出来た。

 名称はインド神話の英雄ラーマの妻シーターより。ミティラーの王ジャナカの娘としてラーマと婚姻するが、ラーヴァナによって誘拐されてしまう。



★ダシャラタ=ギ=イクシュヴァーク


 バラトリプル教国の戦士階級クシャトリヤの重鎮。引き締まった肉体に貯えられた顎髭、そして愚直なまでの義理堅さを持つ壮年の武人。

 ラーマと同じ鶏冠石けいかんせきの髪を持ち、色彩豊かな洒脱な装束に威厳を纏わせたイクシュヴァーク家の当主。

 ダイバ老師の企みを善しとせず、敬愛するアナン老師の支持を続けていたが、それが周囲からの孤立を招き、ミティラー家との確執やラーマたちの出奔を引き起こしてしまう。

 しかし、レイネリアたちとの出会い、そしてアナン老師の説得により、矜持きょうじを捨ててまでダイバ老師に偽りの恭順を示し、やがては陰謀を暴くことに成功する。精舎において偽の天人地姫を捕まえたときの彼の表情は、実に清々しいものであったという。

 名称はインド神話の英雄ラーマの父ダシャラタより。古代インドはコーサラ国のイクシュヴァーク王朝の人物。



★ダイバ


 バラトリプル教国の高僧。実弟であるアナン老師と次期座長を争う反逆の破戒僧。

 教都に現れた天人地姫を擁立し、その威光により民衆から絶大な支持を集めていたが、レイネリアたちによって陰謀を暴かれて失脚、罪人として捕縛された。

 元は戒律に厳しく自制心の強い人物であったが、あることを切っ掛けにして天人と地姫の真実を知り、今まで自分が信奉していたものが「偽物」であったことに気が付いてしまう。

 ヌーナの真なる天人と地姫を奉戴ほうたいし、人々の信仰を正そうと考えた彼は、皮肉にも自身が嫌悪したものと同じ悪事に手を染めてしまう。

 名称は釈迦の弟子の一人、提婆達多だいばだったより。戒律を厳しくしようとするも受け入れられず、教団の分裂や釈迦の暗殺を企てたため、無間地獄に落とされたとされている。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る