第五章 9-3
カエレアの
だが、それは二重に仕掛けられた罠であった。私は迂闊にも彼女の前で幻術を使い、
でも、結果的にはこれで良かったのかも知れない。あの女の庇護を受けることは
せめてレイニーだけでも無事でいてほしいと願う。
それが気休めに過ぎない
しかし、私の思惑は全て外れ、レイニーは導かれるように来てしまった。彼らが空の力に目覚めた彼女を見す見す手放した理由、それは私に最後の仕上げをしろということだろう。
私は彼女にプラナの概念を指南した。元々はアーカーシャと戦うために習得した知識が、自身の手で完成させることになるとは皮肉でしかなかったが、まだ微かな希望が私にはあった。
ひょっとすると、空の天人になってもレイニーの人格は残るのかも知れない。あの泣き虫で、間が抜けていて、でも底抜けに明るくて、お人好しのレイニーであれば、私たちは争うことなく、互いを許し合うことが出来るのではないだろうか。
しかし、その想いは呆気なく打ち砕かれてしまう。ラーマとシータ、そして
もう、あの優しかったレイニーは…いつも私を幸せにしてくれた、私の愛したレイニーは、もうすぐいなくなってしまうのだと、そのとき悟った。
なぜ、あなたは今頃になって現れたのか。なぜ、あなたは着いて来てしまったのか。なぜ、あなたはその力に目覚めてしまったのか。
あなたと出会わなければ、こんなに苦しむことはなかった。あなたが幸せでいてくれたら、独りになっても平気だった。あなたがあなたのままでいてくれたら、もう他に何も要らなかったのに!
アーカーシャよ、お姉ちゃんを、お父様を、私から何もかもを消しただけでは飽き足らず、今度はレイニーまで奪おうというのか。絶対に許さない。絶対に許せない。絶対に許したくない!
どんな相手だろうと構わない。どんなに強大だろうとも構わない。万難を排し、不可能を奇跡で塗り替え、私の全存在を賭して討ち滅ぼすのだ。
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