第五章 3-2
私たちが泣き止むのを待って、天人アプは多くの
人の営みから隔絶されたこの地において、生き延びる頼りは魔法だけだった。私たちは
お腹が空けば、
この祭壇は元は天然の地下空洞を利用したもので、世界を循環するマイナが地表に吹き出す場所であった。中でも水のマイナの純度が極めて高く、私たちがアプの声を知覚できるのもそのためらしい。
なぜ、特定の属性のマイナが関係してくるのか。それはマイナが天人自身であるからだ。いや、正確にはマイナの先駆物質に付着し、そう成らしめている因子…この無数の粒子を統括する集合意識こそが、天人の正体なのだという。
遥か遥か古の時代、世界がまだ一つの超大陸であった頃、中央に座する霊峰タカチホより未知の粒子が散布された。それはアグニ、アプ、ヴァーユ、プリティヴィーの四種、全て後世に天人の御名として語り継がれているものである。
その目的は魔力という、何処にでも在りながら
そして、気の遠くなるほどの悠久の時を経て、マイナは世界の隅々にまで浸透していった。大気中はおろか深海や地底、そして生物の体内にまで、事実上、マイナの存在しない場所はなくなった。なお、聖合国には『神は細部に宿る』という格言があるが、その発言者は伝わっていない。
また、粒子の集合意識の形成に際し、異なる属性が互いに干渉し合うことを避けるため、世界が地殻変動により四つの大陸に分裂するのに合わせ、主要となる領域を棲み分けた。そして、東方大陸パノティアに顕現したのが水の天人アプであった。
かつては、私たちのように天人と交信できる人間が世界中におり、その殆どが女性であったことから
聖合国の大きな特徴は、地姫自身が直接的な権力を有さず、君臨すれども統治はしなかったことであろう。
本来、天人との交信に性差はなく、血統や魔法の素質が色濃く影響するものとされている。そして、野心に溢れた
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