第一章 1-2
「でも、あの魔法があれば食べ物には困らないわね」
渡された
一方、隣を歩くミストリアも演習時と同様に漆黒のローブを羽織っていた。二人の外見は対照的だが、ともに特殊な仕立てにより
「ふぅん、やっぱり口に合わなかったのかしら」
ミストリアの不機嫌さを帯びた声色に、慌てて彼女は首を振ると、美味しくない筈がないと力説した。枯飯は今回に備えて、ミストリアが自身の手で
ミストリアによると、
マイナとは魔法の源であり、最新の魔法基礎理論によれば、世界中に
また、四属性のマイナは均一に分布している訳ではなく、周辺環境によって偏りがあることが知られていた。例えば、先の演習地のような乾燥地帯では水属性のマイナが少なく、逆に河川や湖沼などでは多くなるといった具合である。
その他にも、燃え盛る炎の
魔力を放出したマイナは非活性の状態となり、一定時間が経過することで再び活性化すると考えられている。理論上はマイナが活性状態にある限り、無限に魔法を行使できるのだが、実際にはその活性状態を調整し、放出される魔力の出力を制御する必要があった。
この調整にあたっては、マイナに術者自身の魔力を注ぐ必要があり、これはプラナと呼ばれている。プラナの総量には個人差があり、一般的に優れた魔術師ほど大量のプラナを有するとされていた。
なお、魔法研究者の中には、人もまたマイナの集合体であり、マイナとプラナの間には本質的な差はないと唱える者もいるが、主流な学派からは異端視されている。
効率的に魔法を行使するためには、マイナの活性状態を調整する技術の他に、術者との親和性、即ち相性が重要であり、これにより自ずと各属性に対する
ミストリアは四属性全てに対して高い親和性を持ち、その極限までに洗練された技術とも相まって、魔法の行使におけるプラナの消費は限りなく零に等しいのだという。
また、各属性ともに
一方、レイネリアはというと、四属性全てに対して親和性が著しく低い…いや、正確を
元来ホーリーデイ家の一族は、極一部の例外を除きマイナに対する親和性が低く、魔法を不得手とする者が多い。とはいえ、これほどまでに極端な例も珍しいのだが、彼女も今では仕方のないことだと割り切っていた。
「でも、
ミストリアは手で
だが、確かにそこには隊列を組んだ商人の荷馬車があり、
『
遥か遠方を望むことを可能とする水属性の魔法である。軍関係者の間では、
道具よりも優れている点は、それが一方向からの視界しか望めないのに対し、この魔法は空気中の水分濃度を変化させ、途上に複数の鏡を創り出すことにより、任意の角度から観測できる点にあった。加えて、視認距離も遥かに長く、ミストリアはこの魔法を駆使して、絶えず周囲を索敵していたのである。
彼女には秘密にしていたが、ミストリアはホーリーデイ家の邸宅にいた頃から、日常的にこの魔法で周囲を観察…もとい、監視していた。天人地姫は王国のみならず、大陸中から
ミストリアだけであれば、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます