第7話 ロイと馬車の中

「お姉様、開けますよ」

「どうぞ」


···································。

ロイが固まって動かない。


「ロイ、行きますよ。

何、ボーっとしてるのですか? 」

「あっ、はっ、はい、

お姉様。では、向かいましょう」

なんだか、シドロモドロだ。

それにほんのり顔も赤い気がする。


ロイとは年が1才しか離れておらず、

実は血が繋がっていないのである。

女の子しか生まれず、跡取りを育てる為に

マリーが5才、ロイが4才の時に

マシューズ公爵家に迎えられたのだ。


ロイは顔も可愛く、お行儀も良く、頭も良くて

マリーは父と母が取られるのではないかと思い

色々な嫌がらせを行ってきた。


そのおかげで、ロイが6才になる頃には

一切会話も無く、

冷めた関係になってしまっていた。


う~ん。これもなんとか、しなきゃね。

デッドフラグぷんぷん臭うわよね。


玄関に向かうと、


「マリ~。とっても可愛くってよ。

これなら、ルーファス王子も

マリーに惚れちゃうわ!!! 」

母が大興奮している。


「残念ですが、お母様そんなつもりは

全くございませんから」

なんて言おうもんなら、

大変な事になりそうだ。


「では、お母様行ってまいります」

馬車に乗り込もうとした時、

「お姉様、お手を」

ロイが手を出している。


おやっ? そんな事された記憶無いぞ。

どうした。ロイ。

朝のありがとう&笑顔作戦が効いたのか?


「ありがとう。ロイ」

顔をそらされる。

やはり、気のせいか。

今日はロイにとっても

初めてのエスコートだもんね。


馬車が揺れる中、ロイはずっと外を見て

こっちを向いてくれない。


「ねぇロイ、今日はルーファス王子の

16才の誕生日よね」

全く興味の無い話題を振ってみる。

「そ、そうだよ。それがどうかしたの? 」

目が合う。

「やっと、こっちを、見てくれた」

ニコっとする。


「突然だけど、今までごめんね。

私、ロイに焼きもち、焼いていたの。

どうか、今までの事

許してくれるかしら? 」


おばあちゃんから、

悪い事したら、相手がどんな人だろうと

心を、込めて謝りなさい。と言われていたので

素直に言葉が出てきた。


「··················」

顔が真っ赤だ。

ヤバいっ!怒らせたかっ?

「ロイっ? 」


「な、なんか、お姉様変わった.........

今朝、侍女達が、お姉様が、おかしく

なったって。噂してた」


なんと! 失礼な。私は普通のつもりだわ!!

でも、いい傾向ね。浸透してきてるのね。


「そうかも、しれないわね。」

クスっ。

少し笑ってしまった。


「っ!......................」

ロイの顔が又赤くなっていく。


「分かったから、もう許すよ!!」


やりました。ロイの許しゲットです。

これで、家での生活の安全も確保だわね。


だんだんと、お城が見えてきた。


「お姉様、そろそろ、着きますよ。

それより、ルーファス王子に

婚約申し込まれたらどうするの?」


城が近ずくと、どんな祭りが始まるのかと

興奮ぎみになり


「ロイ、なんか言った?」

全く人の話しを、聞いていないかった。


「別に、もういいよ」

おっ、なんか、ちよっと拗ねて

可愛いいんじゃない?


そうこう、してるうちに

城の門まで到着した。


城でかっ!日本の城とは違って

迫力あるわ~。


時代劇大好なまりにとっては、初めて見る

西洋風の城に、興奮マックスなのだ。


「お姉様、キョロキョロしないで。

はしたないですよ」

「そんな事言ったって、城よ。城」

「久しぶりだからって、

そんなに興奮しますか?

そんなに、ルーファス王子に会えるのが

楽しみなのですか? 」


「はぁ~? 」

すっかり王子の事なんて忘れていた。


そうだ。王子よ。王子。

一応大好きって設定なのよね。

よしっ、もうロイには言っちゃおう!

だって、面倒なんだもん。


「私ね、王子の事は、もう好きではないの。

散々振られてきたでしょ。だから、

諦める事にしたの。まだ父と母には内緒よ」

椅子に何か落ちてる。それが何か見てると、


「そうなのですか、お姉様。

そんなに落ち込まないで下さい。

何かあったら、僕が助けますから」

少し嬉しそうだ。


お~!!。可愛いいやつめ。

このままお姉ちゃん、大好きっ子に

なればいいさ。


なんなら、まったく、

落ち込んでないけどねっ!!


城の前まで到着した。

馬車の扉を開け

「お姉様、お手をどうぞ」

少年のあどけなさを残したロイが、微笑む。


ほぇ~。かわえぇ~。

えぇじゃないの。えぇじゃないの。

おねーちゃん、嬉しいよ。

ロイには、素敵な人見つけて欲しいわ~。


まりには、兄弟がいなかったから、

兄弟って、憧れてたんだよね。


「ありがとう。ロイ」

手を取り、馬車から降りる。


城の扉の前まで来た。


つっ、ついに、城ですよ。

祭りですよ。

噂の舞踏会ってやつですよ。

豪華な料理ですよ。


ヤバい、興奮して鼻血出そう。


「お姉様、大丈夫ですよ。僕がついてるから」

頼もしぃ~。

私が王子の事で落ち込んで、

挙動不審になっている。と勘違い

してるみたい。


そんな事で、おねーさまは、

落ち込まなくってよ!!!


ロイが手を強く握ってきた。


ロイも緊張してるのね。


まりもロイの手を強く握り返した。


出陣じゃ~!! 


♪ふぉあふぉ~♪

ホラ貝の音が脳内に響き渡る。


ガシャンっ。


大きな扉がゆっくりと開いていった。

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