第6話 夜会への支度

「何か、あったの?大ピンチって! 」

ジルが慌てて聞いてきた。

「そうなの、大ピンチなの。

ドレスがださいのよ~」

「なんとか、ならない? 」


少し間が空き、

「なりません!!!」

ハッキリと言われる。

「そんな事で呼び出したんじゃ、

ないよね」


「何言ってるのよ。乙女の大ピンチよ! 」

「ジルには貸しがあるのよ。私をこの世界に連れて来たのはジルなんだから」

「それよりも、早くこのドレスなんとか、

もうちょっとシンプルにして。

リリアンが戻って来ちゃう!

どうせ、魔法とか使えるんでしょ」


「はいはい。分かりましたよ。

でも、もうくだらない事で

呼び出さないでよね」


「分かったから、早く!!! 」


ジルがクルリと一回転した。


その途端ドレスはリボンやらレースが

外れて、しっとりとしたシンプルなドレスに

変わった。


「お~!! 初魔法!! 生きてて、

魔法が見れるとは。流石ね!! 」

いや、一回死んだか.........


ジルは誇らしげに、胸を張っている。


猫が胸張ってるよ。

可愛いすぎるんですけども。


「ジル~。ありがとう。ホント凄いわ」

これでジルの攻略も分かったわ。

誉めちぎり作戦ね。


「じゃあ、僕行くよ。

ほんと、忙しいんだから、

あんまり呼び出さないでよね」

と言って消えて行った。


ほどなくして、リリアンがお茶を用意して

戻ってきた。


「お嬢様、お茶の用意が出来ました」

「ありがとう。皆も少し休んで」


ザワザワ。

侍女達がなにやらヒソヒソと話している。


あー、あれね、ありがとう。効果ね。


なるべく早く皆にも慣れて貰いたいわ。

悪役令嬢なんて、いつどこで、恨みを買って

殺されるか、わかったもんじゃないんだから。


「では、マリー様、お着替え初めましょう」


コルセットをこれでもかと、

ぎゅうぎゅうに絞めあげられ、

「うっうっうっ、苦しぃ~~。もう無理!! 」

「何をおっしゃってるのですか。

今日は大切な日なのですよ。他の方より綺麗にしなくてはっ!! 」


私は全くそんなつもりなんて、無いから~。


そしてドレスを持って来る。


「あれっ?こんな形でしたか?もっとこう

ゴテゴテした、ブリブリな.....」


やっぱり、皆そう思ってたんじゃない!!


「何を言ってるの?間違いなくこれよ」

「そ、そうですか......」

首を傾げている。

すっとぼけるしかないわね。

「リリアン、早く着替えさせて。」

シンプルになったドレスに着替える。

「まぁ~。なんて素敵な

ドレスなんでしょう」

「これで、ルーファス王子も、

いちころですね」


全く、仕留める気はございませんから。


「次はお化粧と、髪をセット致しますね」


でたっ。グリクリの縦巻きロール。

これは、なんとしても阻止しなくては。


「リリアン、お願いがあるのですが」

「なんでございますか? 」

「少しいつもと雰囲気を変えたいから、

あの縦巻きロールやめてくれない? 」


「························」

「ねぇ、リリアン、聞こえている? 」

「やはり、お嬢様変わられました....」

マリーは縦巻きロールに

深いこだわりがあったのだ。


「リリアン、人はね、

経験を経て変わるものなのよ。

良くも、悪くもね。」


よし、決まった!


リリアンが今にも泣き出しそうな顔になる。


「そ、そうでございますよね。

マリー様。リリアンは感動いたしました」


ふふふふふ。

これで、縦巻きロールは完全阻止ね。


「ふわっとした

半分ロールアップにしてくれないかしら」

「それと、お化粧もナチュラルにね」


「かしこまりました」


お化粧も髪のセットもオッケー!

これで完璧じゃない!


「お待たせ、致しました。後はジュエリーを

着けて、終了でございます。」

「じゃあ、シンプルなドレスだから

少し大きめなガーネットにでも

しましょうか」

赤色のイヤリングとネックレスを着ける。


リリアンがニコニコと微笑んでいる。


鏡に向かう。


「かっ、可愛~いぃ~!」

思わず口から出てしまった。

もとが良いから、まじ可愛いんですけど。


「お嬢様、大変お美しいです。他の令嬢にも

絶対、負けません! 」


だから、勝負しませんってば。


気が付けば、もう夕方になっていた。


コンコンコン。


「お姉様、用意は出来ましたか?

そろそろ向かう時間ですよ」


ロイが部屋まで迎えにきた。

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