第22話 不確かな者①
□
「変わった空間だな」
小屋に足を踏み入れたニーズヘッグは真新しい木材が使用された内部を見回しながら関心した。
「【ノルニル】ってのはこんなこともできるのか。……とすると【ノルニル】を使えるやつがこの中にいる?」
ニーズヘッグは【ノルニル】が使えるほどの手練れの存在に警戒心を高め、如何なる出来事にも対応できるように感覚を研ぎ澄ませた。
しかし緊張や焦燥の類はない。
むしろ【ノルニル】を使える魔術師に会えることに高揚していた。相手への敬意も忘れることなく、ズボンのポケットから手を出し、少し乱れた髪を整えてから室内の奥にある廊下へ向けて歩き出した。
廊下の左手に部屋が二つ並んでいる。その内、手前の部屋のドアが開いていた。
ニーズヘッグはその部屋から微量の魔力を感じ取り、部屋の正面に立つ寸前で立ち止まった。
(ここに【ノルニル】を持つ者がいる? にしては魔力が弱すぎる。それにもう一つ魔力を持つナニカがいるな)
いつでも戦闘態勢に入れる用意をして、部屋の前まで向かった。
室内には十歳くらいの少年と黒い鷹に似た魔獣がいた。
【ノルニル】を手にした者がいると思った手前、拍子抜けした部分があった。
「お前、あの『
ニーズヘッグはいつもの微笑にも嘲笑にも取れる微妙な顔つきの笑顔で少年に訊ねた。その刹那、魔獣に対して違和感を抱いた。
そして––––
「マジかよ、お前……悪魔か」
その違和感の正体を口にした。
「まさか、外にいる『
そう言って声を出して笑い出した。
「うっうるせー!」
魔獣が文句を言った。
「悪い……悪いが……はははっ。そんな悪魔初めてで……ははっ。可笑しくって」
ニーズヘッグは話の続きをしようと必死に笑いを堪えた。
「お前たち悪魔は狡猾で傲慢。人の弱みに漬け込んで契約させて欲しいものを手に入れる。その間、自分は何もせず寝床でグースカってのがお前らだろ? だからお前のようなやつがいるなんて思わなくてよ」
再び思い出したかのように笑い出す。
「そういうお前は何者だ」
二人のやり取りを横目に、少年は厳かな口調でニーズヘッグに訊ねた。
その子供らしからぬ口調と雰囲気に、ニーズヘッグは笑い声をぴたりと止め、少年に鋭い視線を送った。
「なんかお前も変だな。ここにまともなやつはいないのか?」
ニーズヘッグはわざとらしく室内を見回した。
「俺もまともじゃないからな。まあいい。冥土の土産に教えてやるよ」
そして不敵な笑みを作る。
「俺は『
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