第10話 フェイは声を上げる
□
「私が何者かは理解しただろう」
グラムの言葉に頷くウィル。
同時にフェイは大きく息を吐いて勢いよく飛び上がった。そしてウィルの頭の上に乗った。
「息苦しいったら仕方ないぜ!」
フェイは初めてグラムの前で人語を発した。
「俺は悪魔だからよ。人間の世界を創った神関連は苦手なわけだ」
緊張しっぱなしだったフェイの表情には疲れが見えた。しかしそれでも相手に舐められないよう目つきを鋭くして続けた。
「けどよ、ダンマリは俺っぽくない。これ以上黙ったままだとストレスで羽が全部抜けちまう! だから、あんたが何者だろうと俺は普通にさせてもらうぜ」
「かまわん。私がお前を認めていなければ小屋から追い出している」
「何ぃ?」
フェイはさらに目を吊り上げて疑問を投げかけた。
「この小屋の内部は私が創った空間。出入りを許可する権限は私にある。お前たちを招き入れたのは入室するスレールが平静だったからだ。仮に危機を抱いていれば、お前たちの入室を拒否した。今だってそれはできる」
グラムは不適な笑みを浮かべた。
全ての主導権を握られているようで、フェイは不機嫌に舌打ちした。
「話を続けていいか?」
フェイの気分を把握しているはずのグラムはそのことを全く意に介さず淡々とした口調で言った。
「いいぜ! 要はあんたは人の形をした【ノルニル】ってわけだろ。武器にヘコヘコしてられないぜ!」
「いい加減にしろ」
ウィルはフェイの態度を見かねて口を挟んだ。
「別に良いって言ってんだから問題ないだろ!」
「……お前、本当に神苦手?」
ウィルは偉そうに言うフェイのことが少し分からなくなった。
□
「ちなみにあんたを助ける方法ってのはまだ教えてくれないのか?」
フェイはいつも通りの偉そうな態度でそう訊ねた。
しかしグラムは気にしない様子で、淡々とした口調で返答した。
「さっき言ったはずだ。お前たちがその器たりうるかを見るとな」
フェイはグラムの偉そうな態度にふてぶてしい顔つきをした。
「長くなりそうなら俺は座らせてもらうぜ」
フェイは先ほどまでグラムが寝ていたであろうベッドに三十センチほどの体をちょこんと乗せて、ふてぶてしく座った。
その態度にウィルは大きな溜息を吐いた。
「よし続けてくれ」
フェイは決め顔をして言った。
グラムは自身の過去を振り返るために目を閉じ、そしてゆっくりと口を開いた。
「二ヶ月前のことだ」
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