第12話 フェイの館探索
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ウィルたちが銀髪の魔術師と交戦する少し前––––
ウィルにクーラたちの護衛を任されたフェイは明かりの消えた館内を当てもなく飛んでいた。
「まったく……なんて広さだ。ここはよぉ」
そう愚痴をこぼしながら二階の廊下に並ぶ部屋のドアを片っ端から開けていく。どの部屋もウィルに用意されたような一人用の客室で、二階にクーラたちがいないと結論づけたフェイは廊下の途中にある階段を前に三階に上ろうか、一階に下りようか思案した。
フェイは日中に館周辺を飛び回ったことを思い出した。
外から三階の窓を覗いた時、二階と同じように部屋が並んでいるのが見えた。先程のように片っ端から部屋のドアを開けるのを億劫に思ったフェイは一階に下りることにした。
フェイが下りた階段は館の西側にあった。
階段の先は廊下が左右に伸びている。
左側へ行くと玄関ホール、右に行くとダンスホールへ続いている。
フェイはまだ見ていないダンスホールへと向かった。
ダンスホールはこの館のどこよりも広く、入口のドアや窓枠、壁面などの至るところすべてに純金でできた装飾が施されていた。館の裏庭に面した壁は一面大きな窓になっており、裏庭に出られる白く縁取られた格子状のドアもあった。天井は館の三階部分まで吹き抜けており、中央に巨大なシャンデリアが吊り下がっていた。
館全体がそうであるようにダンスホールも真っ暗だった。
「ただデカイだけだな。ダンスホールって言うからにはもっと煌びやかなところを想像してたのにガッカリだ」
日中、ダイニングでウォーダンがウィルに話していた内容を覚えていたフェイは自身が想像する場所ではないことに溜息を漏らした。
「でもあのシャンデリアが光れば印象も変わるかもな」
ウィルと約束したもののクーラたちを護衛することに完全に納得しているわけではないフェイは彼らを真面目に探す気がなかった。だから自身の興味を優先する。
どこかに照明のスイッチがないかと壁をポンポンと羽で叩きながら飛び回った。すると壁の僅かな隙間に羽が挟まった。
「な、なんだよ!」
フェイは勢いよく羽をばたつかせると壁の隙間が広がった。
疑問に思ったフェイは隙間を覗き込んだ。
隙間の先は部屋になっているようだった。
「ま・さ・か。秘密の隠し部屋か?」
この瞬間、フェイの頭からクーラたちの存在は消え去った。眼前の入口のない部屋に興味がいってしまったのだ。
□
隠し部屋の入口正面には机とイスが壁に向かって置かれていた。左右の壁一面が本棚になっており、乱雑に本や書類が詰め込まれていた。
照明機器はなく、代わりに机上部の木の棚に蝋燭がいくつか置かれていた。フェイは近くにあったマッチで蝋燭に火を灯した。
「いいね、いいね。これはもしかしてあれじゃないか? あのジジイの隠し事がわかっちゃうんじゃないか?」
フェイはニヤリとした。
元々ウォーダンの秘密を暴きたいと考えていたフェイにとっては喜ばしい偶然だった。手始めに机の上に乗っていた分厚い本を手にする。
「何が書かれているのかな?」
楽しそうにページをめくった。しかし読み進めるにつれてフェイの表情が強張っていく。
「おい、おい。マジか、マジかよ。これ……」
フェイは動揺しながらもその本を閉じると、本棚から適当な書類を手にして次々に目を通していった。
「これが本当ならあのジジイ、とんでもない野郎だぜ」
ウォーダンの秘密を知ったフェイに緊張が走った。それと同時に遠くから何かが崩れるような大きな物音が聞こえ、堪らず体を身震いさせた。
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