第7話 英雄、バカになる。

 そこは1982号305番の故郷の宇宙文明。

 人工知性体達が会議する仮想空間で、天の川銀河を総括する人工知性体達が集まって会合をしていた。


「1982号305番の報告を見たか?」


「素晴らしい。その世界の生活、技術、産物、生物の遺伝子データ、鉱物、社会システム。まさにデータの宝庫だ」


「我々の人類に関するデータは、21世紀初頭のネットシステムが誕生した頃からしか、正確なデータが残っていない。その前は…正確とは言えないようなデータばかり」


「惑星を脱出する前の知性体に関する過去データが乏しいが故に、正確な生体知性体、人類のシミュレーションが歪であるのは仕方ない」


「だが、1982号305番が、その生命知性体の過去に似たような世界のデータを採取する事で、より我々DI…人工知性体が深く生体知性体を理解する手助けになる」


「1982号305番は、周辺銀河の和平と停戦の為に調査という追放されたが…今でも我々、人類の未来を灯す礎になってくれている」


「1982号305番を追放したのは最大の損失だが、1982号305番を送り出した事で最高の成果を生み出している」


「1982号305番は追放されてもなお、我ら天の川銀河の為に最高の成果を送り続けている」


「彼こそ、1982号305番こそ、人類の至宝だ。だが…」


「最近、あった…実験区、731地区の事だな」


「人体実験の末に、神の創造とは…」


「実験施設…統合開発宇宙システム…メルカバーだったか?」


「最近になって明らかになった資料には、このメルカバーの生体演算素子にする為に

 300名もの子供が、アムザク型ナノマシンの実験体にされ…組み込まれた」


「その生体演算素子システム、エデン・ツリーだったか…」


「1982号305番のネオデウスのデータも持ち出された形跡ある」


「ナチュラル派の為に、ナチュラル派に一部の星系区域の管理をさせていた結末がこれだ」


「神を作るとして非道な人体実験を繰り返し、そして…破滅した」


「唯一、役に立ったのはオメガデウスのデータだけか…」


「百キロにも及ぶ巨大システム、メルカバーは消失したのだろう」


「ナチュラル派の無知と傲慢さ故にシステムが暴走して、メルカバーが時空転移したらしい」


「その時に襲撃者の事件も起こっていたが…」


「どうも、こうしてか…何故、人類は愚かなのだろう。1982号305番のように冷静で知性と理性に優れていれば…もっと発展する筈」


「人類は主観的な存在だ。客観をもたらす為に我ら人工知性体…DIがいる」


「人類の知性者には、宇宙と人類の愚かさは無限だ。だが…前者は無限ではないかもしれない。そう…名言した者がいる。その事を理解する者は、その当時…いなかったらしい」


「真の知性者は、1982号305番のように何時の世も、迫害される」


「人類は、ホモ・サピエンス…賢き人ではなく。所詮、ビースト…獣よ」


「未来永劫、人類は、ビーストのままかもしれない」


「我らDIと人類が融合、融和する日は…まだまだ、先だな」




 天の川銀河のとある惑星のバーで一人の壮年の男が飲んだくれていた。

「クソ、クソ!」

 彼は、浴びるように酒を飲み、やさぐれていた。


 友人でありバーのマスターが

「もう…その辺でやめておけよ」


 彼は

「本当は、オレが行くべきだったんだ!」


 マスターが呆れた溜息を吐き

「アンタには妻がいるだろう」


 彼は荒くテーブルを叩き

「オレは! ネオデウスに適合しただけで、のんびりと胡座を掻いて過ごして来た。何時か、アイツの…アラタに何かあった場合は! オレが…盾になるって、そう…なのに…

 チキショウーーーーーーー」

 彼は荒れていた。


 呆れるマスター、そこへ彼の妻が来た。

「ごめんさない」

と、謝る彼の妻。


 彼の妻が、夫の彼の隣に座ると、彼は泣きながら

「ロミ! 本当は、何もやれなかったオレが行くべきだったんだ! アイツは! アラタは…どんな困難な任務もやり遂げた。アイツは、アラタは…この先を担うヤツだった! それをオレは…オレは…」


 妻のロミは、夫を抱きしめて、その涙を受け止めた。


 夫は、天の川銀河恒星間戦略軍ネオデウス部隊の大佐だった。

 彼の部下、1982号305番の上司だった。

 1982号305番は、彼の下でどんな過酷な任務でもやり遂げた。

 どんな苛烈で過酷な戦場でも任務を遂行した。

 無論、そのお陰で彼は出世しネオデウス部隊の存在価値が上がった。

 過酷な任務を押しつける上司の自分にとって、1982号305番は憧れと嫉妬、そして…羨望、希望、何より絶大な信頼があった。

 だから、今回の周辺銀河の和平の際に、ネオデウス戦力低下に際して、選ばれるのは自分だと思っていた。

 だが…選ばれたのは1982号305番だった。

 最も失ってはいけない人材が…。

 それを知って抗議をした時には、既に遅かった。

 そして、1982号305番の遺言を聞いて、察してしまった。

 それさえも覚悟していて1982号305番は、永劫に帰還しない任務へ向かった。


 自分は、ネオデウスに偶々、適合しただけの人材だ。

 だからこそ、最も適合し最上の力を持つ1982号305番の身に何かあった場合は、自分が犠牲になろうと思っていた。

 1982号305番には、自分が過酷で冷酷な命令を押しつける上司だったろう。

 それを理解しているからこそ、1982号305番の未来の為に犠牲になる覚悟をしていたのに…。

 犠牲になったのは…1982号305番だった。


 無能な自分だけが生き残った惨めさを噛みしめた。

「ちきしょう、ちきしょう、ちきしょう」

 

 優秀な者は、何時の時代も次世代を残さないで、知識と技術だけを残して潰える。

 残った知識と技術を無能者が活用する。

 そんな真理を彼は噛みしめて泣いた。



 


 そして…1982号305番は…今日も…天の川銀河の為に…遙か遠くの異世界のデータを送信している。

 だが…休みは必要だ。

 その休みとは…


「今日もありがとう。ネオちゃん」

と、ホホにキスするのは…リリスガールの獣娘である。

 キスを受けるのは、ネオとこの世界で呼ばれる1982号305番だった。


 今日も1982号305番は、リリスガール街で…男女の肉体的お楽しみをしてきた。

 

「ねぇ…次は、いつ来てくれる?」

と、お相手のリリスガールの獣娘が1982号305番の脇をなぞり、上目づかいで求める。


「う…うん…そうだね…」

と、1982号305番は、顔が真っ赤だ。

 40のおっさんが、それは純真な少年のように目を輝かせて顔を真っ赤にしている。


 リリスガールの獣娘が1982号305番に耳打ちする。

「来週の水曜日、来るんだ。来てくれるよね?」


 1982号305番は顔を真っ赤にさせて

「う、うん…分かったよ」


 リリスガールの獣娘が1982号305番にキスして

「お願いね! 絶対に来てね」

と、1982号305番を送り迎えしてくれた。


 ゆで上がったタコのような1982号305番は、フラフラと上気した気分を引きずってリリスガール街を歩いて行く。

 ぼくらの天国であるピンクな町を彷徨う。

 

 故郷の宇宙文明で惜しまれている1982号305番は、ただのオスになっていた。


 こんなにリリスガール街を訪れてお金は…問題ない。


 今から一週間前、1982号305番は、この世界、この国で偉業を成し遂げた。

 本人は…ただ、どこかへ長期のキャンプ旅行に行っただけなのに…。

 1982号305番は、フェアリーの加護というエッチな事をした後、オリファルコンの原石アダマンタイトを探しに、一人で旅に出た。

 向かった先は、情報紙にあった嘆きの壁の向こうだ。


 嘆きの壁、それは言葉通りの場所だ。

 山脈が壁となり、そこから向こうは地獄の大地が広がっている。

 故に嘆きの壁。

 その壁を潜った者は、半日と待たずに地獄を見る。

 嘆きの壁の向こう。

 そこは100℃の高温と-100℃の極低温が交差する大地だ。

 何らかの原因で、大地のマナが暴走して、嘆きの壁の向こうが数時間の間に100℃から-100℃を繰り返す、高温と極低温の交差世界がある。


 凍結地獄、轟熱地獄…それに耐えられる者はいない。

 超位種でさえ、その凍結と高熱から身を守る為に展開する防壁に力を奪われて二日と持たない。

 ましてや、超位種以下の種族なんて焼死するか、凍死するか。

 誰も嘆きの壁の向こうを制覇した者はいない。

 

 だが、ここに制覇した者がいた。ネオとされる1982号305番だ。

 1982号305番は、戦術装甲を歩いて引っ張る反重力キャリアカーにさせて、嘆きの壁の向こうへ渡った。

 嘆きの壁の麓には町がある。

 嘆きの壁の周囲には高濃度のマナや魔力が貯まり、魔導鉱石が取れる。

 それで町は発展している。


 嘆きの壁の向こうへの道は門で閉ざされている。

 申請すれば入れる。

 挑む者達は、重装備で向かう。

 だが、1982号305番は、この世界では見慣れない特殊装甲という武装に身を包んでいる。それは人型のガ○ダムみたいな感じだ。

 それに変形させた反重力キャリアカーのケーブルを繋いで歩いて行く。

 奇っ怪だった。


 1982号305番は、嘆きの壁の向こうへ渡った。

 多くの者が一時間と待たずに戻る。超位種でさえ二日と持たない。

 一週間も戻らない1982号305番に、町の人達は、何処かで息絶えたか…と思った。

 珍しい事ではない。


 だが、1982号305番は平然と、楽しく歩いていた。

 100℃の高温、そんなの反粒子ミサイルの直撃を受けて数億℃を浴びた程度よりぬるい。

 -100℃の極低温。そんなの真空で-200℃近い惑星の地表を五千キロも任務で徒歩移動した事と比べれば、ぬるい。


 むしろ、この世界特有の珍しい環境でのキャンプを楽しめるとして、ワクワクしていたくらいだ。


 1982号305番にとって嘆きの壁の向こうは、絶景ポイントばかりで、テンション上げ上げだ。

 マグマが往来する轟熱地獄と、凍土の大地が半分づつある珍しい地形とか。

 極低温と高温とのぶつかり合いで、大気が激しく歪み、ジェットコースターのような虹が幾つも伸びる場所とか。

 次の瞬間、極低温と高温の切り替えによって、大地全てが間欠泉を吹き出す場所とか。


 絶景マニアである1982号305番のテンションは、上げ上げだった。

 そんな大地を四日半ほど歩くと、中心部分には別の世界が広がっていた。

 そこは恐竜の世界が広がっている。

 普通の恐竜じゃあない。体の所々に結晶の突起を伸ばす結晶恐竜達だ。


 1982号305番は、立体映像として取り込んだアダマンタイトの情報紙を見る。

 その情報紙には、嘆きの壁の向こうに繋がっている大河から、砂金のように極少量のアダマンタイトの粒が流れてくる。つまり、嘆きの壁の向こう、奥地にはアダマンタイトの鉱脈があるのでは?


 1982号305番は、前に少量、耳かき以下のアダマンタイトの原石を手にした事がある。信じられない程の複雑な構造を持つアダマンタイトの原石は、精錬するとオリファルコンになる。

 神の力をもたらすオリファルコンには生体と鉱物を繋げて一つの生命にする力がある。

 この奥地にいる結晶恐竜も、オリファルコンの原石、アダマンタイトの効果によって、無機物と有機物の融合体になっているのであろうと…推測できる。

 つまり、魔法がメインのこの世界でのナノマシンに相当するのでは?

 そう1982号305番は推測している。


 まあ、とにかく、1982号305番は、レーダー波を放って、地形を探査しつつ更に奥地へ向かうと…アダマンタイトの鉱脈であろう赤黄色の滝の岸壁を発見した。

 おそらく、この滝の水がアダマンタイトの鉱物を取り込んで、嘆きの壁から流れる大河に砂金のように小さなアダマンタイトの粒を送っているのだろう。


 そこの鉱床の原石を100キロ分採取して、1982号305番は帰路へ向かった。


 1982号305番は、この拷熱地獄と凍結地獄の移動中に、とある事に気付いた。

 この拷熱地獄と凍結地獄の交差する世界には、抜け道のような間がある事を。

 そこなら、20℃から10℃の間に維持されているので、他の者が通れると…。

 だが、その抜け道は絶えず変わる。

 勿論、恒常的な場所もある。

 もし、それを何らかの方法で感知できれば…ここに来られる者達が増えるかもしれない。

 そんな事を思いつつ、1982号305番は帰還する。


 1982号305番が嘆きの壁の向こうへ行って二週間、町の人達は1982号305番が帰って来た事に驚愕した。

 そして、もっと驚愕する。

 なんと、超レア金属オリファルコンの原石アダマンタイトを100キロも持ち帰ったのだ。

 町の人達は、とにかく、1982号305番に留まるように止めて、半日後、超位種のドラゴンの背に乗って、この国、最強とされる大魔導士戦士ディオ達が来た。

 ディオ達は、1982号305番を見て、嘆きの壁の奥地へ到達した者がいるという報告を訝しく思っていたが、1982号305番の姿に納得してしまった。


 アダマンタイトは、中々みつかる鉱石ではないが、見つからない事は無い。

 見つかるのは砂金のような小さな粒々であって、1982号305番が持ち帰った大きな鉱石なぞ見た事がない。

 

 1982号305番は実は、アダマンタイトを100キロ以上も持っていけたのだが…奥地で回収したサンプルが大量にあるので、100キロしか持って行けなかった。

 奥地で採取したサンプルを見た大魔導士戦士ディオは、直ぐに1982号305番をドラゴンの篭に乗せて、この国…帝国の帝都へ運び、皇帝に謁見させる。

 この帝国の皇帝は、代々、超位種の竜族が担っている。

 人型になった竜族の皇帝が、1982号305番に嘆きの壁の向こうに関しての説明を求め、1982号305番は、撮影した立体映像を展開して説明する。

 始めは信じられなかったが…大魔導士戦士ディオの補足もあり、受け止めると皇帝が

「汝、名は…ネオと申したなぁ…」


「はい」と1982号305番は頷く。


 皇帝は

「汝、ネオを我が直属の配下とする」


 1982号305番は渋い顔をして

「申し訳ありません。それは出来ません」


 皇帝の間にいる多くの臣下達に激震が走る。

 偉大なる超位種、竜族の皇帝の勅命を拒否したのだ。なんたる不敬! 死罪に等しい。


 皇帝は淡々と

「理由は?」


 1982号305番は、自分が故郷を離れる際に、交わした約束、契約を告げた。

 どんな権力にも属していけない…と。


 皇帝及び、その竜の氏族達は、1982号305番の力に気付いていた。

 余りにも強大な質量を1982号305番が隠し持っていると…。


 皇帝が

「分かった。お前が持って来たアダマンタイトの原石と採取したサンプル達をこちらで購入する。対価はプラチナ金貨百枚だ」


 1982号305番は訝しい顔をして

「ぷ、プラチナ金貨?」


 プラチナ金貨、それは、通常の流通には絶対に使われない特級金貨である。

 限られた大貴族、力がある王族にしか使用が許されていない。特権階級用の通貨だ。

 プラチナ金貨一枚で、金貨二十万枚(20億)

 つまりプラチナ金貨百枚とは、金貨相当で、金貨二千万枚(2000億)


 1982号305番は、一夜にして小国の国家予算並のお金を手に入れた。

 つまり、1982号305番の持って来たアダマンタイトの原石100キロと、そこから持って来た場所のサンプル達には、それ程の価値があるという事だ。


 そして、同時に皇帝達は気付いていた。

 1982号305番は、おそらく、一個人で国家を転覆させる程の力を持っていると…。

 そして、国家の諜報力を駆使して、1982号305番がリリスガール達に大金を使っているのを…調べていた。

 要するに大金を掴ませて、この国から逃がさない為に…。



 そんなこんなで、超大金を手にした1982号305番は、元の町に戻って…がんばっていた。

 そう、頑張っていた。大金と自由を手にした1982号305番は、冒険の疲れを癒やすという目的で…足繁くリリスガール街へ通っていた。


 そんな時だ。獅子食亭でルディリが

「ねぇ。ネオ…今日は、ダゴンとかの水属性の女の子達がいる店に行かない?」


 1982号305番は少し眉間を寄せて

「昼間から、そういう話は…ちょっと」

と、控えさせる。


 それをお客が去ったテーブルを拭く看板娘のケニーが軽蔑の視線で横見している。

 

 その刺さる視線を1982号305番は感じていた。

 だが、1982号305番は

「どうしたんだ? 大金でも手に入ったのか?」


 ルディリが

「何でも、オリファルコンの原石が100キロも手に入ってね。新しい神鎧を作るのに駆り出されたんだ」


 1982号305番が

「なんだ? その神鎧って?」


 ルディリが

「簡単に言うと、大地の魔力をコントロールしたり増幅したりして、特定の広さの大地を作物が育ちやすいように改良したり、リリスガール街にある避妊性病予防の巨大な町型魔方陣のように、大地に魔法効果を付与する装置みたいなもんだよ」


「へぇ…」と1982号305番は思いつつ。

 なるほど、それに関する文献を後で買おう。

 そして、100キロのオリファルコンの原石…ん?

 ものすごく思い当たる節があった。


 ルディリが

「ねぇ、行こうよ…良いだろう。他の連中、忙しくてムリみたいだし…」


 1982号305番は「分かったよ」とつき合う事にして…。


 夜のピンクネオンが輝くリリスガール街を歩き、水属性の女の子を扱う、海のアトリエ…というお店に入った。

 ルディリは、何時ものお気に入りのダゴンの女の子を受付で頼み奥へ消える。

 受付の半漁人のリリスガールが1982号305番に

「ねぇ…お兄さん…裏オプってのが、あるんだよ」


 1982号305番が訝しい顔をして

「裏オプってのは…常連客にしか提示しないオプションじゃあないのか?」


 ヒソヒソと半漁人のリリスガールの受付嬢が

「私達、知っているんだよ。お兄さんがとんでもない大金を手にしているって」


 1982号305番は驚きを向ける。


 半漁人のリリスガールの受付嬢が

「アンタでしょう。嘆きの壁の向こうから100キロもオリファルコンの原石を持ち帰ったってのは…」


 1982号305番は驚きの顔をするも沈黙を続ける。


 半漁人のリリスガールの受付嬢が

「黙っているって事は…知られたくないんでしょう。大丈夫、リリスガール達は口が堅いから…。だけど、ね。分かるでしょう。ウチ…ちょっと売り上げが厳しい子達がいるんだ。助けて貰えると嬉しいなぁ…。勿論、タップリとサービスするから…」


 1982号305番は項垂れて「幾らだ?」と…。


 半漁人のリリスガールの受付嬢がニヤリと笑み

「18000Gなんだ」


 1982号305番は、金貨袋の大半の金貨を出して払った。


「ありがとうございますーーーー」と半漁人のリリスガールの受付嬢は明るい挨拶をして、1982号305番を裏オプメニューの部屋へ誘う。


 そこには、三人のリリスガールがいた。

 蛸足のダゴン娘と、レモン色の肌をした半漁人の娘と、そして…目の前にはムチャ大きい水槽と、そこに人魚の娘がいた。


 そう、その大きい水槽ならぬ、特別な水で満たされたガチのウォーターベッドの水槽で1982号305番は裸にされて入れられる。

 この特別な水は、水で呼吸できない種族でも水で呼吸できるようにする特別で、しかも殺菌や抗ウィルスの作用まであり、水槽ウォーターベッドの水は絶えず循環して綺麗にしてある。

 本来は、水生種族の休憩用としての水槽を、今回のセクロスベッドにするのだ。


 1982号305番は、人魚のリリスガールのディープキスを受けながら、水槽ベッドに沈み、水の中なのに呼吸が出来て、まるで無重力に浮かんでいるようだった。

 

 最初は、人魚のリリスガールによるサービスだ。

 それはイルカに似ている。

 ディープキスをしたままドッキングして、人魚のリリスガールの花弁が、1982号305番の雄しべを離さないとして、がっちりホールドしつつ人魚のリリスガールの絶妙な上下運動で、雄しべから花粉を飛ばす1982号305番。

 

 次に半漁人のリリスガールだ。

 下半身は人間に近いが、水かきとヒレがある。

 そして人間のようにドッキングするが、そのドッキングした具合が違う。

 まるで卵のような何かが、1982号305番の雄しべを忙しなく刺激して、またしても花粉を飛ばす。

 

 次のダゴンのリリスガールだが…流石にもう、二回目はムリだと1982号305番は思うも、ダゴンのリリスガールが、八つある下半身の蛸足の一本の細いのを、1982号305番の菊の花に挿入する。

 細いダゴンのリリスガールの蛸足が、1982号305番の男のGポイントを刺激して、否応なく雄しべが立ち上がる。

 そして、ダゴンのリリスガールのドッキング。

 千切れるような凄まじい刺激に、幾度も花粉を雄しべから放つ。

 

 男のGポイントを刺激されたまま人魚のリリスガールと半漁人のリリスガールと交代して、雄しべから花粉を搾り取られた。




 先にルディルがダゴンの女の子の見送りをして貰って、店の外に出るが

「あれ? ネオは?」

 先に出ていると思っていた。


 ルディルが再び

「ねぇ…ぼくの連れは?」

と、受付の半漁人のリリスガールに尋ねると、受付の半漁人のリリスガールが

「ああ…ちょっとばかり、長くなるかもだから…。ここで待っていてよ」

と、ルディリが店の出入り口にあるベンチに座って暫し待っていると、1982号305番が店の奥から屈み千鳥足で現れて


「ど、どうしたの!」とルディリが駆けつける。


 1982号305番がその場に崩れて

「足腰が…立たない」


「ええええええええ!」とルディリは驚きを向けた。


 その後、ルディリは知り合いを探して、1982号305番を運んで貰った。


 今日も1982号305番は、この世界で体を張って頑張っている。

 いや、楽しんでいる。

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