第6話 堕ちた伝説

 彼は最強である。

 

 彼は伝説である。


 彼は十数年もの間、絶望的な惑星や宇宙空間の戦場で戦い続けた伝説である。


 ネオデウス1982号305番。

 完璧で完成され最強、自己を完全管理できるネオデウス1982号305番は、地球人類を宇宙民まで押し上げた、地球人類史…伝説の男、技術最高峰の原子サイズナノマシンを生み出したMYの後継とさえ言われていた。


 そんな彼は、強すぎるが故に異世界調査という追放の憂き目にあう。


 これは死刑に等しかった。


 宇宙民文明よりレベルが低いであろう文明社会に追放された。


 そんな彼、ネオデウス1982号305番は、現地住民からネオと呼ばれて…


「ありがとうね」

と、エルフのリリスガールからホホにキスされて

「また来てねーーーー ネオちゃーーーーん」

と、エルフのリリスガールの見送りを背中に受ける1982号305番。


「ああ…」と、ぎこちない1982号305番が、見送りしてくれるエルフのリリスガールに手を振った。


 ここに来て一ヶ月半、こうやって夜のリリスガール街に足繁く通っている。


 1982号305番がいた宇宙民の世界では、こんな肉体的男女言語…セクロスさんのようなサービスをしてくれる店なんて存在しない。

 そもそも、宇宙民になると男女比が、3:7で女性が多くなる。

 まだ、これはマシな方で酷い場所では、1:20、1:30なんてザラだ。

 技術文明が進んだ世界では、男女差は、生殖的な差程度でしかない。

 真の男女平等が達成された結果、男性が少なくなるのは必然だ。


 しかし、この異世界は地球史でいう所の中世レベルの社会に近い。

 だが…身の回りにある道具や用品のレベルは、この異世界独特の魔法という技術によって21世紀レベルに達している。

 技術レベルが21世紀なのに、社会レベルは中世のアンバランスな世界。


 そんなアンバランスな世界で1982号305番は、夜な夜なマイサンから白い蜜を飛び出して、思いっきり楽しんでいる。


 因みに、こんな頻度でリリスガール街を通っているのだ。お金の心配は…無用。

 1982号305番は、この城塞都市の警備隊を通じて大きな仕事を四度こなした。


 まずは、暴れる超位種の捕縛だ。

 彼女にフラれたとか、嫁さんに冷たくされたとか、娘に嫌われたとか。

 そんなこんなで、自暴自棄になった超位種である竜族の男達三名が、暴れていたのを1982号305番は、ルディリ達四人に協力して貰って捕縛した。


 全長が50メートル越えの超位種の竜族が暴れると、相当な被害を周辺にもたらす。

 かといって、抹殺せよ!ではない。

 滅ぼせ!なら1982号305番、単騎でも問題ないが…捕縛しろ、では手が必要だ。


 まあ、女にフラれた竜族の男は自棄になって、周囲に三千度のブレスを吐きまくって泣いていた。

 そのブレスを浴びる1982号305番。

 三千度の熱線を浴びれば跡形も無く消えるのだが、最強の恒星間戦術兵器ネオデウスである1982号305番は、前に恒星を突き抜けた事がある。

 その時の中心温度三千万度に比べれば、ぬるい。

 だが、そんな事はどうでもいい、ルディル達四人に被害が出ないように暴発するブレスを防いで貰いつつ説得。

 他の二件も似たようなモノで、ものすごく面倒な案件だった。

 色んな意味で1982号305番は疲れた。

 その甲斐あって…かなりの額の報酬、金貨数万枚だった。


 そして、四件目の案件が一番楽だった。

 復活した古代の巨大機兵の破壊。


 警備隊から通したのは、この国で最も最強とされる魔導戦士の一団だった。

 老齢の大魔導戦士ディオの一族達と共に全長70メートルの機兵を倒した。

 1982号305番は、こんなにも倒す任務が楽だったのか!と思った。


 1982号305番に倒すのを任せた大魔導士戦士ディオ達。

 どうやら、1982号305番の戦闘力を測る当て馬に、この案件を使ったようだ。


 機兵を倒して帰還する1982号305番に、髭を蓄えた大魔導士戦士ディオが息子のディオンとその長男ディルスを伴って

「お主…本当は、追放されたのではないかね?」

と、告げた大魔導士戦士ディオ。


 スッと1982号305番は、鋭い視線の振り返りを向けてしまった。

 

 それを見た大魔導士戦士ディオは、フッと笑み

「気分を害したのなら謝る。今日は本当にありがとう。後に報酬が送られるだろう。また、何かあった場合はよろしく頼むよ」

と、好々爺の顔を見せた。


 1982号305番は無言で手を振って帰った。


 見送った大魔導士戦士ディオと息子ディオンにその長男ディルス、大魔導士戦士ディオが

「やれやれ、どうやら、妻を友人に寝取られた、までは合っているが…それで国を出たのはウソらしい」


 息子ディオンが

「でしょうね。足取り、身のこなし、雰囲気、そして思考。どれをとっても最上級の戦士として完成されている」


 息子の長男ディルスが

「あんな凄い人材を手放すなんて…」


 大魔導士戦士ディオが

「いいや、凄まじいから追放せざる得なかった。恐怖したのだろうなぁ…アレを従えていた上の者達は…」


 強すぎて、孤独にも強かった。故に恐怖された。

 何と言えないディオンとディルス。


 大魔導士戦士ディオは

「ワシ等は、感謝せねば。ワシは孤独ではなかった。お前達や妻達…家族、そして友人、多くの仲間に恵まれて…今、ここに居させて貰っておる。それがなかったら、あのようになってしまう…そういう合わせ鏡がアレなのじゃなぁ…」


 それを息子ディンと、その長男ディルスは頷いた。



 そんなこんなで、トータル的に貰った報酬は、軽く金貨十五万枚(15億)になった。

 古代の復活した巨大機兵は、国家防衛の装置になるそうなので…冷静に考えれば、戦闘機を作ったと考えれば…高額な報酬にはなるのは当然だろう。


 お金が出来た。遊べる自由がある。

 1982号305番が宇宙文明世界に居たら、どこか風光明媚な場所巡りをするとか、色んな設備があるスポーツジムへ行くとか、本が好きだから巨大図書館の近くにあるホテルでロングステイして、図書館を楽しむとか…して楽しんだ。


 だが、この異世界では…夜になるのを待って、リリスガール街へ向かう。

 そう、女を抱くために足繁く通っていた。


 リリスガール街から帰る道ながら1982号305番は頭を抱える。

 止めようと思えば出来るのに…止まらない。

 最近の今週は毎日のように通っている。

 金もある時間もある、前なら風光明媚巡りとか、ジムとか、図書館だったのが、今や風俗巡りをしている。


「堕ちたもんだなぁ…」と呟く1982号305番。


 次の日、獅子食亭はギルドの掲示板も兼ねている。

 なので、昼食を取りながら1982号305番は、掲示板のコピーを何枚か貰って、食事をしているテーブルに広げていた。

 そこへ、看板娘の一人、金髪の有翼人のメイドのケニーが来て

「ネオさんって、珍しい情報を手にするんですね」


「ああ…」とネオである1982号305番は首を傾げ「そうなのか?」


 ケニーが

「だって、冒険者ってだいたい、お金になりそうな依頼や情報を欲しがりますからね。ネオさんが見ているのは、珍しい植物がここにあったとか、珍しい鉱物があったとか、珍しい先史文明遺跡があったとか」


 1982号305番は、テーブルにある飲み物を口にして

「まあねぇ…こういうのは好きだから…」


 ケニーが

「ネオさんって本当に実直ですよね。かっこいいです」


 1982号305番は微笑み

「ありがとう」

 まるで、もう会えない娘と話している気分だった。

と、飲み物を口にしていると


「よー ネオ、昨日のエルフのお店はどうだった?」

と、大声で話しかけるドリン。


 ぶーーーーと1982号305番は、口にしていた飲み物を吹いた。


 ドリンが近づき

「いやーーー 昨日、リリスガール街で見たぜ! エルフの店から出た所を!」


 ケニーの目が冷たくなり「ごゆっくり…」と告げて離れて行く。


 1982号305番が

「いや、ケニーくん…」

とんでもない事になっているのは間違いない。


 共に来たエルフのレリスが

「聞きましたよ。古代の巨大機兵を倒したと…」


 1982号305番は額を抱える。

 話の順序が逆じゃあない?と思いつつ

「ああ…まあ、本丸の倒す連中の付き添い程度だったが…」


 ドリンとレリスが嫌な顔をして

「オレ達も前に遭遇したが…。もう、会いたくないぜ」

と、ドリンは肩をすくめ

「ええ…本当に厄介でしたよ。300年生きていますが…あんなに命の危機を感じたのは、超位種に遭遇した時、以来ですね」


 1982号305番は頷き

「まあ、確かに…超位種と同等の戦闘力はあるか…」


 ドリンが、1982号305番がテーブルに広げている情報や依頼書を見て

「何か素材でも探しているのか?」


 レリスが

「何を探しているのですか?」


 1982号305番が、とある情報紙を上げて

「これだ」


 ドリンとレリスが見つめて、ドリンが

「ああ…オリファルコンの原石アダマンタイトか…」

 レリスが腕を組み

「確かに…これは中々、見つからないですよ」


 1982号305番は

「これを探しに、情報紙の場所に行ってみようと思う」


 ドリンとレリスは視線を合わせて

「じゃあ、アレだな」

「ええ、アレですね」


 1982号305番は二人を見つめて

「なんだ?」


 ドリンが

「見つかるように運を上げに行こうぜ?」


 1982号305番は首を傾げ

「何かの願掛けでもするのか?」


 レリスが笑み

「ええ…幸運のおまじないをね」

と、二人はとある種族が別のテーブルの飲み食いしているのを見る。

 それは見目麗しい妖精達の姿だ。




 1982号305番は、レリスとドリンに連れられてリリスガール街へ行く。

 そして、妖精族のお店、フェアリーの泉に入った。

 そう、貴重なアイテムの得られる運を上げる為にフェアリーを抱いて置くと良い、という願掛けがあるらしい。

 本当にそれが合っているのか?と訝しくなる1982号305番だが…。


 妖精族、フェアリーの身長は、だいたい70センチ程度、大きなフェアリーは、身長が80センチくらいになるらしい。

 妖精と聞いてファンタジーの親指や手に乗るような小さなサイズを想像すると思うが、この世界の妖精は、ガチで生体基本なので大きい。 

 だけど、80センチになっても浮遊できるので…その辺りの物理法則は、やはり1982号305番がいた世界とは違うのを思い知らされる。

 だが、1982号305番の最大の疑問は、どうして妖精族のリリスガールを抱くと運が良くなるのか? その因果関係に最大の疑問を抱えている。


 そうしている間に

「ちわーーー」

と、ドリンが店の玄関を潜る。

「こんにちは」

とレリスも入る。

「どうも…」

と1982号305番も入る。


「ふ…いらっしゃい」

と、80センチサイズの妖精族の女の受付がいた。

 その体格は、一言で言うと巨乳でボンキュッボン。峰不二子体型で、けだるそうな感じに何故か、花を象形文字にした入れ墨が入っている体をビキニだけで覆っている。

 もう、なんか…かわいいを通り過ごして、経験豊富ですよ感がヒシヒシと伝わる。

 

 フェアリーの泉、総括、受付のデリナは、1982号305番を見ると浮遊して近づき

「へぇ…アンタがあの有名なマキナ族っていうヤツ?」

 

 1982号305番は少し訝しい顔で

「どうして分かる?」


 デリナはキセルのたばこを吹かし怪しい笑みで

「アンタ…ここいらのお店で相当に楽しんでいるから、そのお店の子達から色々とね。それに特徴もある。マナ感知でマナや魔力とは違う何かを纏って、超位種に匹敵する密度の雰囲気もある」


 フンと1982号305番は鼻息を荒げ

「姿や外見では判断しないという事か」


 デリナが「そういう事」と頷き

「さて、アンタは…ウチが初めてだ。まずは登録料の500Gを貰うよ」


 1982号305番は、500Gを払い

「で、次は?」


 デリナがスッとテーブルにある物差しを取り出し

「さあ、勃起させな」


「はぁ?」と1982号305番は訝しい顔をする。


 デリナは物差しで肩を叩きながら

「ウチは、体格差がある種族だ。ブツのサイズを測らないと相手を出来る女の子を紹介できないんだよ」


 1982号305番は、ええ…と無言のドン引きをする。


 デリナは

「因みにあの二人は、計ってある」

と、ドリンとレリスを物差しで示す。


 1982号305番は、ドリンとレリスを見ると、二人は苦笑いした後、ドリンが

「まあ、見ているとやりにくいから、後ろを向いているよ」


 1982号305番は「ああ…んん…」と渋々、デニムのズボンを下ろしてご子息様を出すも、勃起する訳がない。


「はぁ…全く」とデリナが、ビキニを脱いで裸になると「よいしょ、よいしょ」と1982号305番のご子息様を80センチの裸体でマッサージする。

 

 1982号305番は、思いのほか気持ちよくて、ご子息様がご立派に顔を上げた。


 それを計ったデリナが

「ああ…これはマズい。アンタのブツじゃあ、ウチで相手が出来る女の子がいないや」


 それを聞いたドリンとレリスは、背中を震わせた。驚きだ。


 デリナが

「はははは! 悪いね。長さも太さもNGだわ」


 ドリンとレリスは、息を殺して、そっと振り向いたが…そこには振り向くであろうと予測した1982号305番が、直ぐにズボンのデニムを上げてご子息をしまった姿と、ドリンとレリスを凝視する視線があった。


 ドリンとレリスは、気まずいながらも、ドリンが

「どうする? その妖精の願掛けが…」


 1982号305番は

「できないなら、止めて置くから、いい…」


 デリナが

「まあ、アンタは他の種族の女の子達から紳士的だって聞いているから、どうだい? 裏オプってのが、あるんだが…」


 ドリンとレリスが驚きを向け、レリスが

「そんなのがこの店に!」


 デリナが怪しく笑みながら

「フェアリーの泉の裏オプには条件があってね。アタシ等のやり方に従って貰う事、もし、途中で暴走した場合は、永遠にこの店や他の繋がりもある店達も出禁になる。更に、料金は最高額の五倍だ」


 1982号305番は考える。

 要するに、サイズが合わない客を断る理由だ。

 最高額の五倍、30000G(30万)

 そして、自由はない。全てお店に妖精の女の子任せ。

 分が悪い…と思う…も。


 ドリンとレリスがもの凄く期待している視線を向ける。


 1982号305番は項垂れ

「お金は問題ない」

と、今持っている全額の金貨30000Gの袋を置いた。


「おおおおおおおおお!」とドリンとレリスが憧れの驚愕を放った。


 デリナが

「アンタも男だね…」

と、怪しげに微笑んだ。


 その後、店の入り口には一時営業休止として幕が下りて、ドリンとレリスは対応する妖精族のリリスガールへ。


 1982号305番は、最後にデリナが

「さあ、裏オプメニューへようこそ」

 なんと、お相手は、デリナと同じ体格の妖精族のリリスガールが四名も出て、計五名の妖精族のリリスガール達による肉林の宴が始まった。


 デリナを合わせた五人の妖精族のリリスガール達がシャワーで隈無く1982号305番を綺麗にする。

 仲間の妖精族のリリスガール達と共に裸体マッサージをするデリナが

「いい体だね。筋肉質でしっかりしていて、脂肪もほどよく付いている。良い戦士の体だ。そして、アンタの背中、胸、肘から足の裏まで蜘蛛の巣のように覆っている銀の模様はなんだい?」


 1982号305番は綺麗にされながら

「それは、自分と融合している装備達が出てくる場所だ」

 まあ、正確にはナノマシンの表層端子ネットワーク回路なのだが…。


 綺麗にされた1982号305番は、ベッドに寝かされて妖精達が群がる花にされた。

 1982号305番のご子息様が、ご立派になり、それにデリナ達、妖精がしゃぶったり撫でたり、ご子息様の白い花蜜を噴出させるのを促す。

 多くの妖精達に群がられて、1982号305番はご子息から白い蜜を発射する。

 一回で終わりではない。

 何度も妖精達の戯れで、白い蜜を発射するご子息様。


 そして、デリナがとある薬を取り出し、それをご子息様に掛けて

「これは、久しぶりに裏オプを使ってくれたお礼」

と、デリナしか出来ない特別プレイを受けた。


 先に終わったドリンとレリスが受付で待っていると、完全に腰砕けした1982号305番が、デリナを含む妖精達によって運ばれて出て行った。


 またしてもドリンとレリスに肩を抱えられて帰宅する1982号305番。

 その移動の最中、ドリンとレリスが、裏オプの内容を聞いて来たので、少しだけ話した。



 翌日、1982号305番は、昼食に獅子食亭を訪れると、姿を見せた1982号305番に客達が視線を向ける。

 各種族の男女、いや、男女で視線の反応が違う。

 男達は、驚きと羨望の視線。

 女達は、ホホを赤らめ顔を隠したりする者、艶やかな視線で舌なめずりをする者。


 1982号305番は、顔を引き攣らせる。

 おそらくだが…ドリンとレリスの話が伝わっているのだろう。


 1982号305番は渋い顔をして席に着くと、ケニーに

「ケニーくん」


「はい!」とケニーが背筋を伸ばし振り向いた顔は真っ赤で、お盆で口元を隠している。


 1982号305番は、ガックと項垂れた。


 周囲は、ヒソヒソと1982号305番のご子息について小声で隠すように話していた。

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