淫靡な房事


 目出度くコンパニオンになったオーギュスティーヌですが、アリアンロッドに抱かれた以上は、体が求めて仕方がない状態、そこで次なる目標実現のために、再びオーギュスティーヌはテロワーニュに相談です。


「この体の渇きをなんとかしなければ……アリアンロッド様の周りには愛人の方々が……どうすれば……」

 オーギュスティーヌが困惑したようにいいますと、テロワーニュが

「アリアンロッド様は好色なのよ、そこを攻めるしかないのよ」


 ……たしかにアリアンロッド様は好色……なにかアブノーマルなことをすれば……

 

 オーギュスティーヌは未亡人、久しく夜のご無沙汰の切なさは知り尽くしています。


 テロワーニュはサブシャペロンになって以来、若返った肉体に、凛とした気品を漂わせていましたが、アリアンロッドのベッドに侍ってから激変したのは確かです。


 アリアンロッドの前では、テロワーニュの雰囲気は気品の中に官能が混じっているのです。


「オーギュスティーヌ、私、アリアンロッド様のお側に侍るだけで逝ってしまうのよ」

「ジョージアナがいっていたわ、『頭が真っ白になって、何にも考えられなくなる」


「アリアンロッド様にお言葉をかけていただくだけで、体がはしたないことになる、女奴隷の意味が分かるわ』って」

「私は変態に仕込まれたけど、心底幸せなのよ」


 そんなことを言うテロワーニュ、首には誇らしげに夫人待遇側女のチョーカーが輝いています。

 テロワーニュがいうには、アリアンロッドの好色はサドっけがある、というのです。


 どうやらテロワーニュは、マルキ・ド・サドの三部作の主人公、ジュスティーヌに自らをなぞらえて、サドの世界感、被虐に涙する美貌の女性を演じて、アリアンロッドに迫ったようです。

 

 オーギュスティーヌは想像しました。


 アリアンロッド様に……


 オーギュスティーヌは、テロワーニュの考えで、ジュスティーヌになりきり、考えうる限りの淫靡なことを実行した。

 そう、プレイでありプレイでないが、最後の一線は越えない行為……


 ……そうよ、私の幸せは快楽に狂う事、アリアンロッド様に弄(もてあそ)ばれ、恥ずかしい事をさせられる娼婦以下の女……

 そしてこの体は、淫乱なのだと確信もした。


 いまの私は唇さえアリアンロッド様に触られると感じる、口づけなどされると……


「オーギュスティーヌ、何ていやらしい女なの!」

「オーギュスティーヌははしたない女になりましたから……」


 すると焼けるような激痛が……

 アリアンロッドがロウを垂らしたのだ。

 悲鳴を上げ身を捩るオーギュスティーヌ……


 しかしオーギュスティーヌは、アリアンロッドの奴隷を実感し、幸せに酔いしれた……


「アリアンロッド様……オーギュスティーヌは幸せです……」

「まぁご褒美に愛してあげましょうか……」


 言葉の響きに、何とも言えない安心感を感じた。


 もう全てアリアンロッド様に任せよう、そしてアリアンロッド様に喜んでいただき、ご褒美に愛されたい……

 そうだわ、やはり私は愛されたい……


 ジュスティーヌ、被虐に涙する女としても、私、オーギュスティーヌは、アリアンロッド様に愛されるからと思いたい……

 その為なら何でも出来る、私の体はアリアンロッド様の御命令に何でも従う……


 ……ジュスティーヌも最後は、幸せにたどり着くのね……

 愛撫されながら、オーギュスティーヌは心の底で思っていた。


 その後オーギュスティーヌに、アリアンロッドはチョーカーをつけてくれた。


 セパレイティスト・クラブに、一つのコロニーが新設された。

 ベネルクスコロニー、オーギュスティーヌの夜の努力の賜と云われています。


 FIN


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